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年金・保険関連
更新日:2018年6月14日
ベーシックインカムとは?
ベーシックインカムは、国民一人一人に対して、無条件に、定期的に、少額の現金を配る制度のこと。世界各国で関心を集めている制度であり、スイスやカナダなどで導入実験が行われています。

この制度は「複雑な資力調査を行ったうえで、所得が一定金額に満たない人を対象に給付するものではない。また、所得が増えても給付が打ち切られることはない」とされています
※参考文献:「ベーシックインカムへの道」ガイ・スタンディング著
無条件に給付されるとは?
ベーシックインカムという考え方の柱を成す要素である「無条件」という言葉には3つの意味があります。

無条件とは?
  1. 所得制限を設けないということ。
  2. ずさんな資力調査をなくしたり、調査のためのコストを無くすため。また、あえて所得制限内に抑えるような行動を助長させないためなど。

  3. お金の使い方に制約を設けないということ。
  4. 用途をあらかじめ決めず、自らの判断で用途を決める。

  5. 受給者の行動に制約を設けないということ。
  6. 職に就こうと努めることなどを給付の条件にしない。条件の困難さは人によって異なるので不公正が生じるため。

ベーシックインカムの目的
ベーシックインカムの目的は一人ひとりの暮らしを経済面で基礎的に保障することであり、全面的な保障や裕福な暮らしを保障することを目的としていません。また、すべての社会保障制度や福祉サービスを廃止することを目的とした制度でもありません。

ベーシックインカムの給付水準は「貧困ライン以上を目指すべきという意見もあるし、導入時は小額からはじめて徐々に増額していけばいいという意見もあるが、具体的な金額は予算の規模とその時点での国民所得の水準によって決めればいいし、どの程度の給付をするにせよ、今ある社会保障制度をすべて解体する必要はないし、ベーシックインカムをそのための手段と位置付けるべきでもない」と考えられています
※参考文献:「ベーシックインカムへの道」ガイ・スタンディング著
※社会保障制度については、こちらを参照。
ベーシックインカムによる効果
ベーシックインカムを導入することで以下のような効果が期待できます

期待できるメリット
  • 嫌な仕事・薄給な仕事に無理して就かない選択ができる
  • お金がない状況では選べないような仕事に就く選択ができる
  • 芸術関係など。

  • 賃金が減ったとしても現状の仕事を続ける選択ができる
  • リスクをともなう起業に前向きになる
  • 何かの技術を身に着けるために時間を費やす選択がしやすくなる
  • 家族や友人、ボランティア活動に時間を割く選択がしやすくなる
  • DVや虐待されたりする相手との関係を終わらす選択がしやすくなる
  • 子供を持つ選択がしやすくなる
  • ときどき怠惰に過ごす選択ができる
  • 貧困を緩和させる(受給者の尊厳を損なうことなく)
  • すべての方に給付されるので、受給者を物乞いのような立場に置かずにすむ。

  • 本来取りたい行動を取らず、あえて生活保護を受けるような選択を減らせる
  • 所得の不平等を緩和させる
  • 所得が少ない人ほどお金の重みが大きいから。

  • 子供や病人の健康、また、精神的な健康を促す
  • 医療や社会的支援にかかる費用などの公的支出を減らす
  • 低所得層の消費が高まり、総需要が拡大する
  • 支出が高まり、景気後退期には自動安定化装置としての役割を果たす
  • 自動安定化装置とは経済を安定させる仕組み。こちらの経済安定化を参照。
    など。

※ただし、これを見てベーシックインカムが万能であると主張するのには注意して下さい。これらを実現するには財源が必要で、新たに財源を確保するか、無駄な制度を削減してその財源を充てるか、また、その場合の影響などを考えなければなりません。
※参考文献:「ベーシックインカムへの道」ガイ・スタンディング著
よくあげられる反対論
ベーシックインカムの反対論として以下のようなことがよく挙げられます。特に財源の問題と雇用と仕事への影響について強く批判されています

よくある反対論
  • 現実離れしている
  • 予算面で実現不可能
  • 福祉国家の解体につながる
  • 完全雇用など、ほかの進歩的政策の実現がおろそかになる
  • お金を配れば問題が解決するという発想は単純すぎる
  • 金持ちにも金を配るのはばかげている
  • ただで何かを与えることになる
  • 浪費を助長する
  • 人々が働かなくなる
  • 賃金の下落を招く
  • インフレを起こす
  • 移民の流入が加速する
  • 政府が選挙の人気取りに利用しかねない
  • など。

※参考文献:「ベーシックインカムへの道」ガイ・スタンディング著
※この本では反対論に対しての見解(説得力のある批判なのかどうか)が述べられており、特に財源の問題と雇用・仕事への影響については、「どうすれば財源が確保できるか」「本当に働く意欲や仕事量は減るのか」についてくわしく述べられています。
そのほかの政策との比較
貧困や不平等などの問題に対処するために提案または実践されている政策はいろいろあります。
それらの政策とベーシックインカムを同じ基準で比較した評価を以下に示します。

ベーシックインカムと比較した場合の評価
  • 社会保険との比較
  • 社会保険の対象とされるリスクは失業、病気、事故、障害、妊娠などの偶発的リスク。製造業の安定したフルタイムの雇用に就く人が多かった時代にはよく機能していた(人々に重大な影響を与えるリスクが保険の対象だった)。しかし、経済のあり方が大きく変わった時代では機能しなくなってきた。特に、雇用の不安定が原因で経済的な安全が脅かされる人々にとっては社会保険はあまり適していない

  • 資力調査に基づく社会的扶助との比較
  • 資力調査は行政コストが大きくなる。申請者にも大きなコスト(長大な書類に記入したり、待たされたり)を強いられる。また資力調査は、プライバシーを侵し、申請者にとって屈辱的なものになってしまう。それゆえに、本当に必要でも受給していない方が大勢いる。逆に、本来取りたい行動(就きたい職に就くなど)を取らず、あえて給付を受ける方も出てくる。何よりも、受給者以外の人たちが制度を守りたいと思わないことが問題

  • 雇用保証との比較
  • 職を持つことは所得だけでない価値があり、アイデンティティの意識・規則正しい生活・社会への貢献など、人々を幸せにする効果があり、ベーシックインカムよりも雇用保証が好ましいという主張がある。職に就きたいと希望するすべての人(障害をもつ方を含む)に雇用が保証される「雇用保証」が本当に実現できるのなら生活の安全は満たせるかもしれない。しかし、実際に保証されるのは、その人の能力に適していて、十分な賃金が支払われる雇用ではなく、給料が安く、期間が限られ、無理やり用意したような仕事や生産性の低い仕事にならざるをえないため、適しているとはいえない

※その政策は社会正義を促進するか、共和主義的自由を向上させるか、不平等を縮小するか、社会的・経済的な安全の保障を強化できるか、貧困を大幅に縮小させるか、という点を考え、ベーシックインカムと比較しています
※参考文献:「ベーシックインカムへの道」ガイ・スタンディング著
※この本では、ほかにも最低賃金や現物給付(食料などへの補助金)、ワークフェア、給付型税額控除、負の所得税、慈善活動、ユニバーサルクレジットと比較した場合の評価も述べられています。