労災保険の遺族補償給付とは?遺族年金は税金0円?

2024.04.26 更新
仕事中の死亡はだれもが抱えるリスクです。そんなときには労災保険から年金が支給されます。この記事では労災保険の給付のひとつである遺族補償年金について説明していきます。
この記事のポイント(要点まとめ)


▶遺族補償年金はだれが受け取るの?
受け取れる遺族が決まっており、配偶者が1番優先される。
※くわしくは下記で説明しています。


▶遺族年補償金って金額はいくらぐらい?
労災保険の遺族補償年金の金額は給料や遺族の数などによって決まる。遺族が2人いる場合は200万以上になることが多い。
※遺族補償年金や一時金は非課税所得なので税金がかからない。くわしくは下記で説明しています。


▶遺族補償年金が受け取れない場合は?
受け取れる遺族がいないときは一時金が支給される。
※くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次

遺族補償年金いぞくほしょうねんきんとは?

遺族補償年金とは、仕事が原因で家族が亡くなったときに労災保険から遺族に支給されるものです。

ただし、遺族補償年金を受けとることができる遺族は決まっています。

万が一の時のために受け取れる遺族などについてしっかりチェックしておきましょう。

労災保険はみんな加入?
賃金をもらって働く従業員は労災保険に加入することになります。保険料については事業主(雇用主)が全額負担することになっているので安心してください。
※労災保険はケガや病気が業務災害(および複数業務要因災害)または通勤災害と認められなければ給付が行われないので注意してください。

では次に、遺族補償年金を受け取ることができる遺族について下記で説明していきます。受け取るひとは誰でもいいわけではありません。


誰が受けとれるの?

遺族のなかで遺族補償年金を受けとることができる方は誰なのか。

遺族補償年金を受けとることができる遺族は、亡くなった方の収入によって生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。
※受給資格者のうち最先順位者(受給権者)に対して支給されます。
※「生計を維持されていた」とは、被災労働者の収入によって生計を維持されていた場合や生計の一部を維持されていた(いわゆる共働き)場合のことをいいます。

※参照:厚生労働省遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続

受けとれる資格のある遺族

※参照:厚生労働省遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続

どのくらいの金額がもらえるの?

遺族補償年金の金額は以下のようになっており、遺族補償年金、遺族特別支給金、遺族特別年金が支給されます。

支給される金額は以下のとおり

※給付基礎日額等については給付基礎日額・算定基礎日額を参照

※参照:厚生労働省遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続

もらえる金額はいくら?
たとえば亡くなった方の給料が月収30万円でボーナスを年間70万円もらっているとすると、事故が10月に発生した場合、給付基礎日額と算定基礎日額は以下のように計算されます。

30万円収入 × 3ヶ月 ÷ 92日※1 = 9,782円給付基礎日額


70万円ボーナス ÷ 365日 = 1,917円算定基礎日額
※1 七月は31日間、八月は31日間、九月は30日間、賃金締切日が月末として計算
※給付基礎日額とは直前3ヶ月間に支払われた賃金総額のこと。くわしくは給付基礎日額・算定基礎日額を参照。

給付基礎日額と算定基礎日額がわかったので、次に年金額を計算します。

遺族が2人いる場合、遺族に給付される年金額は以下のようになります。

9,782円給付基礎日額 × 201日分 = 約197万円遺族補償年金


1,917円算定基礎日額 × 201日分 = 約39万円遺族特別年金


約197万円遺族補償年金 + 約39万円遺族特別年金 = 約236万円合計の年金

以上の年金額が遺族に毎年給付されます(受給権者が複数の場合は等分されて給付)。さらに、遺族特別支給金の300万円が一時金として遺族に支給されます。
※遺族(補償)年金は、被災労働者が亡くなった日の翌日から5年を経過すると時効により請求権が消滅します。
※労災保険から支給されるお金は非課税所得なので税金がかかりません。また、社会保険料が増えたりすることもありません。

※出典:国税庁労働基準法の休業手当等の課税関係

このように、仕事が原因で家族が亡くなったときには労災保険から年金が支給されるのです。

「でも、うちには受けとることができる(受給資格を満たす)家族がいない…」という方もいると思います。

そんな方に支給されるものが遺族補償一時金です。くわしくは下記で説明しているのでチェックしておきましょう。


受けとることができる遺族がいないときは?

受けとることができる遺族がいないために遺族補償年金を受けとれないという方には遺族補償一時金が支給されます。

支給される条件は以下のとおりです。

どういうときに支給される?

つぎの❶または❷にあてはまるときに支給されます。

❶被災労働者の死亡当時、遺族補償年金を受ける遺族がいないとき

❷遺族(補償)年金の受給権者が最後順位者まですべて失権したとき、受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額および遺族(補償)年金前払一時金の額の合計額が、給付基礎日額の1000日分に満たない場合

※参照:厚生労働省遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続
遺族補償一時金はどれくらいもらえるの?

遺族補償一時金の支給金額と受けとることができる遺族は以下のようになっています。

支給される金額(一時金)



どれくらいの金額がもらえるの?
たとえば亡くなった方の給料が月収30万円でボーナスを年間70万円もらっているとすると、事故が10月に発生した場合、給付基礎日額と算定基礎日額は以下のように計算されます。

30万円収入 × 3ヶ月 ÷ 92日※1 = 9,782円給付基礎日額


70万円ボーナス ÷ 365日 = 1,917円算定基礎日額
※1 七月は31日間、八月は31日間、九月は30日間、賃金締切日が月末として計算
※給付基礎日額とは直前3ヶ月間に支払われた賃金総額のこと。くわしくは給付基礎日額・算定基礎日額を参照。

したがって、遺族に支給される一時金の合計は、

9,782円給付基礎日額 × 1000日 = 約980万円遺族補償一時金


1,917円算定基礎日額 × 1000日 = 約190万円遺族特別一時金


約980万円遺族補償一時金 + 約190万円遺族特別一時金 + 300万円遺族特別支給金 = 約1470万円一時金の合計

となります(受給権者が複数の場合は等分されて給付)。
※上記の一時金は「年金」のように毎年もらえるわけではありません。
※遺族(補償)一時金は、被災労働者が亡くなった日の翌日から5年を経過すると時効により請求権が消滅します。
※労災保険から支給されるお金は非課税所得なので税金がかかりません。

※出典:国税庁労働基準法の休業手当等の課税関係

受けとることができる遺族

以上のように、遺族補償年金が受け取る家族がいない場合には年金の代わりに遺族補償一時金が支給されることになっています。

5年以内に申請しないと受け取れなくなってしまうので気をつけましょう。

また、会社員やアルバイトのすべての方は労災保険に加入していますが、労災保険の保険料はすべて事業主が負担することになっているので従業員が支払う必要はないので安心してください。