親を社会保険の扶養に入れる5つの条件は?年金収入があるときは?

2024.09.08 更新

自分の両親も「被扶養者」として社会保険の扶養に入れられます。たとえば「定年退職後に収入が少なくなった親」や「年金生活をする親」を子供の健康保険の扶養に入れることもできます。この記事では親が子供の社会保険の扶養に入る条件(子供の社会保険に入るにはどうすればいいか)などについて説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶年金をもらっていても扶養家族になれますか?
親が年金をもらっていても子供の扶養になれる。ただし、社会保険の扶養と税法上の扶養で条件が違うので注意しなければいけない。
※社会保険の扶養は下記で説明しています。
※税法上の扶養は下記で説明しています。


▶親が子供の扶養に入るには年収いくらまでならOK?
親が子供の社会保険(健康保険)の扶養に入るには、親の年齢が60歳以上なら年収180万円未満になる見込みが条件。別居している場合は定期的な仕送りが必要になる。
※60歳未満(50代など)なら130万未満。
※くわしい条件は下記で説明しています。退職後などに娘や息子の扶養に入るにはどうすればいいかわからない方はチェックしておきましょう。


▶親を扶養に入れることができるのは何歳まで?
親を健康保険の扶養にできるのは親が75歳になるまで。75歳になると後期高齢者医療制度に移行する。したがって、親でも社会保険(健康保険)の扶養に入ることはできない。
※親が支払う介護保険料については65歳になるまで。
※介護保険の年齢については下記で説明しています。
※社会保険の年齢については下記で説明しています。


▶親は両親じゃないとダメ?

親を健康保険の扶養に入れるには、父親母親の両方が条件を満たしていないとダメな場合がある。
※くわしい条件は下記で説明しています。


▶子供の扶養に入ると年金はどうなる?

子供の扶養に入っても老後の年金は減らない。
※親が60歳未満なら国民年金の支払いを親自身でしなければいけない(60歳になるまで)。

親を扶養したときの税金についてはこちら↓
親を扶養に入れるといくら節税できる?扶養控除で5万安くなる?

では、子供が親を社会保険の扶養にいれるときの条件やメリットなどについてくわしくみていきましょう。

この記事の目次
自分の両親も社会保険の扶養に入れられる?

社会保険の扶養といえば、自分の妻や夫・子供を想像するひとが多いと思いますが、自分の母親・父親も社会保険(健康保険)の扶養対象になります。
厚生年金の扶養は配偶者だけが対象です。

ただし、社会保険の扶養の対象になるにはいくつか条件があります。

条件や介護保険料、何歳まで扶養に入れられるか等について下記で説明していきます。
※息子の扶養に入ったり、離れて暮らす年金暮らしの両親を扶養に入れようと考えている方はチェックしておくことをオススメします。

親を社会保険の扶養に入れるポイント

▶親が子供の扶養になる条件は?
親を健康保険の扶養に入れる条件は収入が180万未満、税法上の扶養(扶養親族)にする条件は合計所得48万以下であること。
※社会保険の扶養は下記で説明しています。
※税法上の扶養は下記で説明しています。


▶親の介護保険料は?
親が65歳未満なら介護保険料を支払わなくてよくなる場合があります。
※くわしくは下記で説明しています。


▶社会保険の扶養は何歳まで?
親が75歳になると強制的に社会保険の扶養(健康保険の被扶養者)から外れてしまいます。
※くわしくは下記で説明しています。

親を扶養したときの税金についてはこちら↓
親を扶養に入れるといくら節税できる?扶養控除で5万安くなる?

では次に、親を社会保険の扶養に入れる5つの条件について下記で説明していきます。とくに重要なポイントは親の収入です。


親を扶養に入れる5つの条件は?年金収入いくらまで対象?
60歳以上で社会保険の扶養に入るなら年収180万円未満が条件

親を社会保険(健康保険など)の扶養にいれるにはいくつか条件があります。かんたんに説明すると、自分の親が60歳以上なら収入180万未満までは扶養対象になります。

つまり、親が年金収入を得ている場合、1年間の年金収入が180万未満までは社会保険の扶養対象になるんです。


ただし、親が60歳未満(50代)の場合は、1年間の収入が130万円未満でないと社会保険の対象にならないので気をつけましょう。

子供の社会保険の扶養に入ろうと考えている方は下記の条件をチェックしておきましょう。
※ややこしいかもしれませんが、1年間の収入条件など覚えておきましょう。

社会保険の扶養に入る5つの条件

  • 社会保険に加入している人の親族であること

  • 扶養されるひと本人が、アルバイトなどで勤務先の社会保険に加入していないこと
    ※加入する条件については社会保険に加入する条件は?を参照。

  • 被保険者の収入によって生活をしている(生計を維持している)こと
    ※別居の場合は定期的な送金(仕送り)により生活していること。

  • 収入が同居している扶養者(扶養している方)の収入の半分未満であること
    ※たとえば会社員の子供の収入が300万で父親が170万だと対象外になる場合があります。
    ※別居の場合は収入が扶養者からの仕送り額未満であること
    世帯分離をしている場合は保険組合の条件をしっかり確認しておきましょう(別居扱いになる場合があります)。

  • 1年間の収入130万円未満になる見込みであること。
    ※60歳以上または障害厚生年金がもらえる程度の障害をもつ場合は年間収入180万円未満であること。
    ※一時的な理由で130万または180万以上になっても扶養でいられる場合があります。くわしくはこちらのお知らせを参照。
    ※給与収入には交通費等を含みます。
    失業手当の受給者は日額3,611円以下(60歳以上の場合は日額4,999円以下)であること。くわしくは失業保険と扶養を参照。
    1年間の収入とは、過去における収入のことではなく、扶養に入ろうとする時点以降の年間の見込み収入額のことをいいます。


たとえば、あなたが60歳以上で収入が年金だけの場合、月額15万以上受け取っているなら年間180万以上になると見込まれて扶養に入れなくなる場合があります。

▶アルバイトもしている場合は?
あなたが60歳以上でアルバイトもしており、年金収入とアルバイトなどで月額15万円以上稼いでいると、年間180万円以上になると見込まれて扶養に入れなくなる場合があります。

※保険組合によっては直近3ヶ月の収入で判定する場合もあります。

扶養されている方の収入には「雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金」も含まれます(加入している保険組合によっては労災保険の給付も含まれる場合があります)。くわしくは加入している健康保険・共済組合にてご確認ください。
※参照:日本年金機構従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
社会保険の扶養の判定チェック
社会保険の扶養に親を入れるときの判定フローチャート
社会保険の扶養に親を入れるときの判定フローチャート
※年収130万または180万を少し超えても、一時的な理由であれば社会保険の扶養でいられるようにする施策が始まりました。くわしくはこちらのお知らせを参照。

とくに親と別居しており、仕送りで親が生活している場合は上記の条件をチェックしておきましょう。
※定期的な送金(仕送り)が必要になる等を覚えておきましょう。仕送りの金額にルールがあったりするので、別居している親を扶養するつもりの方は下記の記事もチェックしておきましょう。
別居している親や子供などを扶養するには仕送りが必要?



親が支払う介護保険料はどうなる?
扶養に入れば介護保険料も0円になる

親が支払う介護保険料については健康保険側が負担してくれるため、社会保険の扶養に入れば0円になります。

したがって、親が子供の社会保険の扶養に入れば、親の介護保険料が0円になるメリットを受けられます。
※たとえば実家暮らしの社会人の子供がおり、その扶養に両親が入れば、親の健康保険料と介護保険料が0円になります。

ただし、親が65歳未満までの間です。社会保険の扶養に入っていても65歳を超えると介護保険料は親自身で支払わなければなりません。
※親が支払う健康保険料については社会保険の扶養に入っていれば0円のままです。


また、あなたが40歳未満で介護保険に加入していない場合でも、あなたが支払う社会保険料に介護保険料が上乗せされることはありません。

注意ポイント:介護保険料が上乗せされる?
加入している保険組合によっては、あなたが40歳未満でも社会保険料に親の介護保険料が上乗せされる場合があります。
※40歳~64歳の親を扶養している場合(特定被保険者制度)。
親を扶養に入れようと考えている方は自分が加入している保険組合についてしっかり調べておきましょう。

※参照:日本年金機構

65歳以上の介護保険料についてはこちら
65歳以上の介護保険料はどれくらい?世帯の収入によって変わる?

では次に、親が何歳になるまで社会保険の扶養に入れられるのか下記で説明していきます。社会保険の扶養は年齢制限があるのでチェックしておきましょう。



親が何歳になるまで扶養に入れられる?

社会保険の扶養対象になるための条件に年齢はありませんが、親が75歳になると強制的に後期高齢者医療制度に加入することになります。


したがって、75歳になると社会保険(健康保険)の扶養から外れて親自身で後期高齢者医療制度の保険料を支払うことになります。
※つまり、社会保険の扶養でいられるのは75歳まで。
後期高齢者医療制度とは、健康保険などと同じ医療保険のひとつ。75歳になると加入することになります。



ただし、親の収入がそれほど多くなければ後期高齢者医療制度の保険料は高額にはならないので安心してください。
※ちなみに、親の年金収入が230万円のときの保険料は1年間で約11万円になります。
※お住まいの地域によって保険料は異なります。

後期高齢者医療制度とは?保険料などわかりやすく解説


75歳をむかえた方の保険料については上記の記事でシミュレーションして説明しています。


片方の親だけ社会保険の扶養に入れるのはダメ?
父親または母親だけ社会保険の扶養に入れることができない場合がある

加入している保険組合によっては、社会保険(健康保険)の扶養に父親だけまたは母親だけを入れることができない場合があります。
※両親のどちらも亡くなっていない場合。

たとえば父親の年収が200万円、母親が100万円の場合、母親だけ加入条件を満たしていても、母親を社会保険の扶養に入れられない場合があります。
※保険組合によっては、親を扶養する場合は「両親ともに社会保険の扶養に入らないといけない」等のルールがあります。


ほかにも、退職後の収入が0円の父親を扶養に入れようとしても、母親の貯蓄等で父親の生計を維持している場合、父親だけを社会保険の扶養に入れることができない場合があります。
※保険組合によっては、上記のように両親の生活実態を勘案される場合があります。

以上のように、加入している保険組合によっては片方の親だけを社会保険の扶養にいれることができない場合があるので気をつけましょう。
※自分が加入している保険組合HPでご確認することをオススメします。


75歳未満の親を社会保険(健康保険)の扶養に入れると0円になる?
親が扶養に入れば健康保険料が0円になる

親を扶養に入れるとどうなるかというと、親が支払う健康保険料が0円になります。

ただし、社会保険の扶養に入れるには親の年齢が75歳未満である必要があります。
※75歳になると強制的に後期高齢者医療制度に加入することになります。

あなたが親を社会保険(健康保険)の扶養に入れる場合、親は国民健康保険に加入せずに済むので、親が支払う保険料は0円になります。
※親には健康保険証(被扶養者用)が配布されます。
※子供の扶養に入る場合、国民年金の支払いは0円にはなりません(親が60歳未満の場合)。


親が扶養に入らなければ、親自身で国民健康保険料を支払うことになります。この場合に支払う保険料については下記で説明していきます。

親が自分で国保の保険料は支払う場合はいくら?

親自身で国保の保険料を支払う場合、親が65歳以上で年金収入が180万とすると、1年間で約96,500円になります。
※65才未満の場合は約17.1万円になります。
※世田谷区・加入者1人として計算。金額は市区町村で異なります。

60歳以上の国民健康保険料についてはこちら↓
60歳~65歳以上の年金受給者の国民健康保険料はいくら?

では次に、親を社会保険の扶養に入れるときの手続き方法について下記で説明していきます。申請しないと不要になれません。


手続きは必要?提出する書類は?

親族を社会保険の扶養に入れるときは、勤務先(事業主)に伝えて手続きをしてもらう必要があります。

その際に収入証明などを提出する必要があるので、下記の書類を用意しておきましょう。
※手続き後に親のぶんの保険証が配布されます。

社会保険の扶養に入るとき必要な書類

1.続柄確認のための書類(コピー不可)
被扶養者の戸籍謄(抄)本など
※被保険者との続柄が確認できるもの。くわしくは加入している保険組合のHPをご確認ください。



2.収入要件確認のための書類
▶年金受給中の場合は「年金額の改定通知書などの写し」
▶そのほかの収入がある、または収入がない場合は「課税(非課税)証明書」
▶退職したことにより収入要件を満たす場合は「退職証明書または雇用保険被保険者離職票の写し」
▶自営(農業等含む)による収入、不動産収入等がある場合「直近の確定申告書の写し」
▶障害年金や失業給付等の非課税所得がある場合は「受取金額のわかる通知書等のコピー」



【必要な場合】仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類
▶振込の場合「預金通帳等の写し」
▶送金の場合「現金書留の控え(写し)」

では次に、親を扶養したときに税金が安くなる扶養控除について下記で説明していきます。扶養控除にも条件があります。


親を扶養に入れると税金が安くなる?

扶養といえば社会保険のほかにも「扶養控除」があります。
※扶養控除とは「税法上の扶養」のことで、社会保険の扶養とは異なります。
※参照:国税庁扶養控除


扶養控除とは、16歳以上の扶養親族がいる場合に税金が安くなる特典を受けられる制度です。
※したがって、年金生活をする母親や60歳で定年退職して収入が少なくなった親を扶養に入れることもできます。


自分の両親が扶養親族の対象であり、節税しようと考えている方は知っておきましょう。

※扶養親族にする条件は合計所得が48万以下(65歳以上で年金収入だけなら158万以下)であること。

くわしくは下記の記事で説明しています。親を扶養に入れる条件などチェックしておきましょう。

安くなる金額はどれくらい?親の年齢などによっても変わる?
親の年齢などによって5万~16万くらい安くなる

親を扶養すると年間約5万円~16万円税金が安くなります。
高齢の親を扶養に入れる場合、税金が安くなる金額が年齢によって変わります。また、同居しているかどうかでも変わるので気になる方は下記の記事をチェックしておきましょう。

親を扶養に入れるといくら節税できる?扶養控除で5万安くなる?


ここまでのまとめ(扶養に入れるデメリットは?)

介護保険料が上がったりする場合がある

親を扶養するときはデメリットがあることも知っておきましょう。
親が介護に無縁なら問題はありませんが、介護サービスのお世話になっている場合は親を扶養すると、介護サービスの利用料などが値上がりする場合があります。
※数万円くらい増える場合があります。
頻繁に介護サービスを利用している方は料金の値上がりに気をつけなければいけません。気になる方は下記の記事をチェックしておきましょう。

親を扶養に入れるとデメリットがある?介護費用が?税金は安くなるけど…

ちなみに、親がたくさんお金を稼いでいるなら扶養は関係ありません。元気に働いてもらいガンガンお金を稼いでもらいましょう。