国民健康保険とは?保険料や減免などわかりやすく解説

2024.02.29 更新
国民健康保険とは何なのか、どんなひとが持つのか。「親から保険証を渡されたけど、国民健康保険ってなに?」という方もいると思います。この記事では国民健康保険について、保険料や加入条件など説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶国民健康保険って扶養は無いの?
親族を扶養に入れるシステムがない。したがって、子供でも保険料がかかる。子供でも1人あたり年間約4万円~6万円かかる場合が多い。
※くわしくは下記で説明しています。


▶国保の保険料って安くなるの?
1年間の所得が少なければ保険料が減額される。ただし、世帯の所得の合計が多ければ安くならない。
※くわしくは下記で説明しています。


▶健康保険と国民保険の違いは?
病院代が3割負担になるなどの給付の違いは無い。ただし、保険料の計算方法や加入条件、扶養の有無が大きく違う。
※くわしくは下記で説明しています。


▶国民健康保険を払わないとどうなる?

保険料を払わないでいると、いろいろなリスク(病院代が安くならない、過去の分まで保険料が請求される、延滞金が加算されるなど)に見舞われる。
※くわしくは退職して国民健康保険に未加入だとどうなる?で説明しています。


この記事の目次

国民健康保険ってなに?加入条件は?

すべての人はどれかの医療保険に加入する

国民健康保険とは、公的保険(医療保険)のうちのひとつです。自営業の方などが加入することになります。
※フリーランス・アーティスト・タレント・無業者(無職)・個人事業主など。
※公的保険は、保険料や国等の負担金を財源に運営されています。

医療保険は大きく分けると下記の4種類あり、国民はどれかに加入することになっています。

加入条件は、会社員等・公務員または75歳以上に当てはまらなければ国民健康保険に加入することになっています。
※加入したくないからといって保険料を支払わないでいると延滞金などのデメリットがあるので気をつけましょう。

医療保険はこのように分けられています
※大人も子供も関係なく、すべてのひとはかならず以下の医療保険のどれかに加入することになります(生活保護を受けている方は除きます)。


健康保険
会社員や長時間働くアルバイトの方などが加入する
※退職後も2年間まで任意継続できる。
※家族を扶養する場合、被扶養者とすることもできる。
※厚生労働大臣の認可を得て運営している健康保険組合も含みます。

共済組合
公務員が加入する

後期高齢者医療制度
75歳以上の方が加入する

国民健康保険
フリーランス・スポーツ選手・アーティスト・タレント・無業者(無職)・個人事業主など上記3つ以外の方が加入する
※※都道府県知事の認可を得て運営している国民健康保険組合も含みます。


国民健康保険に加入するための手続きは?

お住まいの地域で加入手続きをしましょう

国民健康保険はお住まいの市区町村が運営しています。


会社を退職したひとなど、これから国保に加入する方はお住まいの地域の役所で申請の手続きを行いましょう。


手続きを忘れて未加入のままにしているとデメリットがあるので、退職したひとなどは早めに手続きをするようにしましょう。

くわしい手続きは?社会保険から国保に?
国保に加入するときに必要なものなどくわしい手続きについては国民健康保険に加入する手続きは?で説明しています。社会保険(健康保険)から国保に変更する場合など説明しています。
未加入のままにしておくとどうなる?
会社を退職して社会保険から切り替えるのを忘れたままにしておくと、いろいろなリスク(病院代が安くならない、過去の分まで保険料が請求される、延滞金が加算されるなど)に見舞われることになります。くわしくは退職して国民健康保険に未加入だとどうなる?で説明しています。

では次に、国民健康保険がわたしたちに何をしてくれるのかについて下記で説明していきます。病院代が安くなるだけではありません。

国民健康保険はどんなことをしてくれる?

病院代が安くなるだけじゃない

医療保険(国民健康保険)はケガや病気の治療費を安くしてくれたりさまざまな給付をしてくれます。


また、4種類の医療保険(健康保険や共済組合など)の給付の内容はほとんど変わらないので安心してください。
※つまり、国民健康保険でも健保でも共済組合でもほとんど同じということ。加入している保険組合によっては付加給付(会社独自の給付)がある場合があります。


病院代を安くしてくれる以外にも、医療保険がわたしたちにどんなことをしてくれるのか大まかに知っておきましょう。
※医療保険があるおかげで安い値段でだれでも良質な医療を受けられる仕組みになっているんです。

病院代を安くしてくれる以外にどんなことをしてくれるの?

医療保険は病院代を安くしてくれる以外にも下記のようなことをしてくれます。


病気やケガの治療費を安くしてくれる
ケガや病気の治療は3割負担!…を参照。



赤ちゃんを産むための費用(約50万円)を負担してくれる
これついては赤ちゃんができる前に知っておくことは?出産っていくらかかる?を参照。



100万円などの高額な治療費を負担してくれる
これについては医療費が高額になっても大丈夫を参照。

など。くわしくは下記の表を参照。

くわしい給付の内容
※参照:厚生労働省我が国の医療保険について

以上のように、国民健康保険は病院代を安くしてくれるほかにも、出産の費用約50万円を支給してくれたり、高額な治療費の負担をしてくれるなどの対応をしてくれます。
※国民健康保険などの「医療保険」には必ず関わることになるので、保険の内容を大まかにでも知っておきましょう。


保険料はいくら?シミュレーション

国民健康保険の保険料は以下のようになっています。
※市区町村によっては国民健康保険税とよばれています(計算式は同じです)。

「所得割」「均等割」「平等割」「資産割」の合計で1年間の保険料が決定されます。
※保険料は同世帯の加入者の合計額となります。くわしい計算過程はページ下記で説明しています。

1年間の国民健康保険料はどうやって決まるのか、計算方法をザッと把握しておきましょう。

1年間の保険料の計算式は以下のとおり

国民健康保険料は去年の所得で決まるのが特徴です。
※つまり、現在収入が0円でも去年1年間(1月~12月まで)に所得がたくさんあれば保険料が高くなります。

国民健康保険の保険料計算式
国民健康保険の保険料計算式

※所得割・均等割などについてはこちらを参照。
※1年間の保険料は今年4月から翌年3月までの金額です。したがって、今年1年間(1月~12月まで)に支払った保険料とは異なります(昨年度の保険料の一部も含まれているため)。

※注意国民健康保険組合の場合は、加入している保険組合のルールによって保険料が変わります(定額の場合もあれば、所得が増えれば保険料も増額する場合もあります。加入している保険組合HPで確認することをオススメします)。
例)年間の所得300万円の場合の保険料は?


たとえば下記の条件のとき、1年間の保険料は約30万円となります。

▶前年1年間(1月~12月まで)の所得が300万円
※所得300万は給与収入だけなら430万円(こちらで計算)。
※所得300万は年金収入だけなら約430万円(こちらで計算)。

▶加入者数1人
▶年齢20~39歳

※所得割率9.44%、均等割額55,300円、平等割と資産割は0円として計算。

以下で計算のやり方をわかりやすく説明していきます。

計算過程STEP①
まず、あなたの去年1年間(1月~12月まで)の事業収入が350万(経費50万)とすると、あなたの事業所得は300万になります。

350万円事業収入50万円経費 = 300万円事業所得
青色申告特別控除を適用した場合、控除込みの金額が事業所得になります。

上記のほかに収入がなければ、あなたの去年の所得は300万となります。

計算過程STEP② 所得割の計算
去年の所得を300万円、所得割率を9.44%とすると所得割は以下のようになります。

(300万円所得 – 43万円) × 9.44%所得割率 = 242,608円所得割
※43万円は所得割を計算する上で必ず差し引かれる金額。
※所得300万は給与収入だけなら430万円(こちらで計算)。
※所得300万は年金収入だけなら約430万円(こちらで計算)。
※所得とは前年(1月~12月まで)の所得のこと。くわしくは所得割を参照。

計算過程STEP③ 均等割の計算
次に均等割を計算します。加入者数は世帯で一人なので均等割は以下のようになります。

55,300円均等割額 × 1人加入者数 = 55,300円均等割
※くわしくは均等割を参照。

計算過程STEP④ 最後に保険料の計算
次に所得割と均等割を合計して保険料を計算します。保険料は以下のようになります。

242,608円所得割 + 55,300円均等割 = 297,908円1年間の保険料
※平等割と資産割は0円として計算。
※国民健康保険料のシミュレーションはこちらで行えます。
※参照:年収100万~600万の国民健康保険料はいくら?
※退職後は→退職後の国民健康保険料はいくら?
所得割や均等割などの金額はお住まいの地域によって変わります。くわしくはお住まいの地域のホームページを参照。
※労災保険の給付・失業手当(基本手当)・障害年金などの非課税所得は所得割の所得に合計されません。

こんなページもみられています
フリーターや会社員で国民健康保険のとき税金や手取りはいくら?


では次に、4人家族の場合の保険料を下記でシミュレーションしていきます。計算方法を把握しておきましょう。



例)4人家族の場合は?
家族それぞれの所得を計算する


たとえば下記の条件のとき、1年間の保険料は約46万円となります。

▶4人家族。
▶あなたの前年1年間(1月~12月まで)の給与収入が430万円(40歳未満)。
▶配偶者のパート収入150万円(40歳未満)。
▶高校生の子供1人のアルバイト収入103万円。
▶小学生の子供1人(所得0円)。

※所得割率9.44%、均等割額55,300円、40歳未満、平等割と資産割は0円として計算。

以下で計算のやり方をわかりやすく説明していきます。

計算過程STEP① 4人の所得を計算する
まず、あなたの去年1年間(1月~12月まで)の給与収入は430万なので、あなたの給与所得は300万になります。

▶1人目(本人)

430万円給与収入130万円給与所得控除 = 300万円給与所得
※給与所得控除については給与所得控除とはを参照。
※給与所得は給与所得シミュレーションで計算できます。
※所得300万は年金収入だけなら約430万円(こちらで計算)。


つづいて、あなたの配偶者(妻)のパート収入は150万なので、給与所得は95万になります。

▶2人目(配偶者)

150万円給与収入55万円給与所得控除 = 95万円給与所得
※給与所得控除については給与所得控除とはを参照。
※給与所得は給与所得シミュレーションで計算できます。


つづいて、あなたの子供(高校生)のアルバイト収入は103万なので、給与所得は48万になります。

▶3人目(子供)

103万円給与収入55万円給与所得控除 = 48万円給与所得
※給与所得控除については給与所得控除とはを参照。
※給与所得は給与所得シミュレーションで計算できます。


つづいて、あなたの子供(小学生)の収入は0円なので、所得は0円になります。

▶4人目(子供)

0円収入 = 0円所得

計算過程STEP② 所得割の計算
4人の所得が計算できたので、所得割を計算します。

下記のように、4人それぞれの所得基準額を合計して、所得割率をかけます。

(300万円1人目の前年所得 – 43万円) = 257万円所得基準額
※43万円は所得割を計算する上で必ず差し引かれる金額。

(95万円2人目の前年所得 – 43万円) = 52万円所得基準額

(48万円3人目の前年所得 – 43万円) = 5万円所得基準額

(0円4人目の前年所得 – 43万円) = 0円所得基準額

加入者4人の基準額を合計して所得割率をかける

(257万 + 52万 + 5万 + 0円) × 9.44%所得割率 = 296,416円所得割
※所得割の計算式については所得割を参照。

計算過程STEP③ 均等割の計算
次に均等割を計算します。加入者数は世帯で4人なので均等割は以下のようになります。

55,300円均等割額 × 4人加入者数 = 221,200円均等割
※くわしくは均等割を参照。

計算過程STEP④ 最後に保険料の計算
次に所得割と均等割を合計して保険料を計算します。保険料は以下のようになります。

296,416円所得割 + 221,200円均等割 = 517,616円1年間の保険料
※平等割と資産割は0円として計算。
※国民健康保険料のシミュレーションはこちらで行えます。
所得割や均等割などの金額はお住まいの地域によって変わります。くわしくはお住まいの地域のホームページを参照。
※労災保険の給付・失業手当(基本手当)・障害年金などの非課税所得は所得割の所得に合計されません。

※参照:年収100万~600万の国民健康保険料はいくら?

では次に、保険料の減額について下記で説明していきます。世帯の所得が少なければ保険料が最大7割減額される場合があります。


所得が少ないと保険料が減額される?

保険料が最大7割安くなる

1年間の所得が少ない世帯は保険料(均等割)が減額されます。前年1月~12月末までの所得に応じて7割~2割減額されます。
※平等割もある地域の場合は平等割も安くなります。

減額の対象になっている場合は何もしなくても保険料が減額されるので安心してください。減額の申請をする必要はありません。


たとえば無職の1人暮らしで、今年1月~12月末までの収入が0円の場合、翌年の年間保険料は7割減額されて約18,000円になります。
※40歳未満、独身、世田谷区在住として計算。


ただし、同じ世帯の加入者や世帯主がお金をたくさん稼いでいる場合は保険料が減額されないので注意してください。

保険料の減額例
前年の所得に応じて7割~2割減額されると、1年間の保険料(均等割)が48,000円なら14,400円~38,400円になるということです。
ちなみに、保険料はお住まいの市区町村によって異なることを覚えておきましょう。

※減額についてくわしくは国保の保険料の減額条件を参照。


国保には扶養のシステムがない?

大人も子供も保険料がかかる

国民健康保険は社会保険(健康保険など)のような扶養のシステムがなく、保険に加入していれば子供だとしても保険料がかかります。


国民健康保険は加入者ごとに保険料がかかるので、お金を稼いでいない子供でも国保に加入すれば保険料が加算されるシステムになっています。


ただし、お金を稼いでいない加入者についての保険料は均等割のみになります。均等割は市区町村によって異なりますが、1人あたり約4万円~6万円の場合が多いです。

子供にも保険料がかかるってこと?
加入者には保険料がかかります。つまり、子供が3人いれば保険料が約12万円~18万円加算されることになります。ただし、保険料が上限額を超えることはありません。くわしくは国民健康保険料シミュレーションで計算できます。

※「子供だから国保の保険料は0円でしょ?」と勘違いしないように気をつけましょう。
※退職後は任意継続のほうが保険料がお得な場合があります。
※2022年4月から未就学児の均等割が5割軽減されます。くわしくはこちらのお知らせを参照。

国保と社保(健康保険)の違いは?まとめ
保険料や加入条件などは国民健康保険と健康保険(社会保険)で違いがいくつかあるので、しっかり覚えておきましょう。それぞれの違いは下記表にまとめています。


国民健康保険 健康保険
加入条件は? ほかの医療保険の加入条件に該当しない方はすべて国民健康保険に加入。

※アーティスト・フリーランス・スポーツ選手・タレント・無業者・個人事業主など

会社に雇われている方で定められた時間以上の勤務をする方は加入。
くわしい加入条件についてはこちらを参照。

退職後も2年間まで任意継続できる。
扶養は? 国保には扶養というシステムはない。

世帯の加入者数などで保険料が決まる。
※くわしくは上記で説明しています。

年収が130万円未満かつ健康保険に加入していない親族は扶養として加入できる。

扶養の方は保険料はかからない。

保険料は? 所得や世帯の加入者数などで保険料が増減する。支払いは家庭の世帯主に請求される。 年収によって保険料が増減する。

健康保険の扶養に入っている家族などは保険料はかからない。くわしくは健康保険とは?を参照。

どこから配布される? お住まいの市区町村 協会けんぽまたは勤務先の保険組合
ここまで説明したように、国民健康保険と社保(健康保険)がわたしたちにしてくれることに大きな違いはないので安心してください。
※出産費用がもらえる・病院代が安くなるなど。