健康保険に加入していた方が退職等をしたときは健康保険から脱退することになります。
ですが、本人が希望すれば退職等をした後も勤務先の健康保険に一定期間加入することができます。これを健康保険の任意継続といいます。
※任意継続は保険料を期限までに納付することによって個人の希望で加入期間を継続する制度です。
たとえば勤務先の保険組合が「ほかの公的保険よりも病院代が安くなる」などの給付をしている場合、任意継続をすれば退職後も勤務先の保険組合の給付を受けることができます。
※任意継続をしなければ退職後に勤務先の保険組合を抜けなければいけないので、保険組合の給付を受けることはできません。
※加入している保険組合によっては一部受けられない給付もあります。
また、場合によっては退職後に任意継続を選択したほうが国民健康保険料よりも安くなるときがあるので、これから退職する方などはチェックしておきましょう。
では最初に、任意継続に加入するための条件について下記で説明していきます。退職後に任意継続を考えている方はチェックしておきましょう。
任意継続をするには以下の2つを満たさなければいけません。
任意継続をするつもりの方は早めに準備しましょう。
では次に、任意継続の加入期間とやめる条件について下記で説明していきます。ずっと任意継続をすることはできません。
任意継続の加入期間は2年間(退職日の翌日に資格を取得してから2年間)です。
ただし、以下の1~6のいずれかにあてはまる方は2年の加入期間中であっても任意継続の資格を喪失することになります。
※2022年1月の改正により、自己都合で任意継続をやめる(資格を喪失する)ことができるようになりました。
※3~5の理由で資格を喪失するときは資格喪失申出書を提出することになります。
※くわしくは加入している保険組合で確認することをオススメします。
※参照:全国健康保険協会任意継続とは
以上の条件のどれかを満たしたときに任意継続の資格を喪失することになるので覚えておきましょう。
任意継続の加入期間中に「期限までに保険料を支払わなかった」場合は任意継続の資格を喪失(脱退)することになります。
※任意継続は保険料を期限までに納付することによって個人の希望で加入期間を継続する制度です。
※資格喪失の条件にあてはまるので任意継続の資格を喪失することになります。
では次に、国民健康保険との違いについて下記で説明していきます。任意継続にするか迷っている方はチェックしておきましょう。
病院代が3割負担になるなどの給付については国民健康保険との違いはありません。
※ただし、加入している保険組合によっては独自給付がある場合があるので、自分が加入している保険の給付内容を確認しておきましょう。
保険料については計算方法が異なるので、大きく差が出る場合もあります。任意継続の保険料は加入期間中に変わりませんが、国民健康保険は前年の世帯所得が少なければ減額されたりします。
また、扶養については国民健康保険には「親族を扶養に入れられるシステム」はありません。扶養に入れることができる親族がたくさんいる場合は気をつけましょう。
では次に、任意継続と国民健康保険の保険料の比較について下記で説明していきます。具体的に金額をあてはめて比較シミュレーションしているのでチェックしておきましょう。
健康保険の保険料は会社と折半しているので、会社に勤めていたときの保険料は半分の負担で済んでいます。
しかし、任意継続になると保険料は全額負担になります。なので、保険料は以前より高くなる傾向があります。
※ただし、退職前の給料が高額だったひとは任意継続にしたほうが安くなる場合もあります。くわしくは下記の項目(任意継続には上限がある?)で説明しています。
任意継続をする前に国民健康保険の保険料としっかり比べましょう。
以下は月収が30万円(年収360万円)だった場合の保険料シミュレーションです。退職予定の会社員やアルバイトなどの方はチェックしておきましょう。
※任意継続の保険料はこちらのシミュレーションで計算できます。
上記の場合、任意継続よりも国民健康保険のほうが保険料が安くなります。
退職予定の会社員やアルバイトなどの方はよく考えてから加入する保険を選択しましょう。
では次に、任意継続の保険料の上限について下記で説明していきます。勤務先の保険組合によって上限が変わるのでしっかりチェックしておきましょう。
上記でも説明したように、任意継続になると保険料は全額負担になります。なので、保険料は以前より高くなる傾向があります。
ただし、場合によっては保険料が安くなることもあります。なぜかというと、任意継続の保険料には上限が設定されている場合があるからです。
高額な給料をもらっていたひとはそれだけ保険料も高くなりますが、退職後に任意継続にすることで以前より安くなる場合があるんです(保険料に上限ができるため)。
わかりやすく説明するために以下でシミュレーションしていきます。
となります。
任意継続の保険料については、標準報酬月額に上限が設定されています。上限を30万円とすると、退職前の月収が80万円だとしても保険料は以下のようになります。
以上のように、退職前に高額な給料をもらっているひとは任意継続のほうが保険料が安くなる場合があります。ただし、加入している保険組合によって標準報酬月額の上限は異なるので保険料がもっと高額になることがあります。自分の保険組合についてしっかりチェックしておきましょう。
※注意:2022年1月の改正から、加入している保険組合によっては上限が無い場合があります(協会けんぽは今まで通り上限が設けられています)。くわしくは加入している保険組合でご確認ください。
※参照:厚生労働省全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律pdf
では次に、比較する場合の注意点について下記で説明していきます。扶養する親族がいる方は注意しましょう。
任意継続と国民健康保険の保険料を比較しましたが、ほかにも注意することがあります。
注意点は「国保の保険料が減額されること」、「国保には扶養のシステムがないこと」です。
とくに扶養する家族がいる方はチェックしておきましょう。
では次に、届出を提出する場合について下記で説明していきます。扶養に入れる親族を変更するときなどに届出を提出することになります。
任意継続を選択して親族を扶養に入れる場合は届出を提出して申請しなければいけません。何もしないと親族は扶養に入れることができないので注意しましょう。
また、再就職などで任意継続の資格を喪失するときには申請書を提出して保険証も返却しましょう。そのままにしていると保険料が請求されてしまうので早めに手続きをしましょう。
※申請書は加入している保険組合HPにてダウンロードしましょう。
任意継続は退職前とは違い、保険料が全額負担になるので料金が高くなる傾向があります。この場合は任意継続にあまりメリットはありません。
ただし、上記の項目でも説明したように、場合によっては保険料が安くなることもあります。この場合、任意継続にしたほうがメリットがあるといえるでしょう。
また、扶養する家族がたくさんいる方は国民健康保険よりも保険料が安くなることもあります。この場合、任意継続にしたほうがメリットがあるといえるでしょう。
※上記のほかにも注意することは?で説明しています。
保険料だけでなく、加入している保険組合によっては国民健康保険よりも「病院代の負担が少なくて済む」等の給付を受けられる場合があります。したがって、保険組合の独自給付を利用するつもりのかたはメリットがあるといえるでしょう。
※任意継続をする前に加入している保険組合の給付や保険料についてしっかり調べておくことをオススメします。