高年齢求職者給付金とは?64歳退職後に失業保険をもらう方が得?

2024.04.12 更新
定年退職後も働くひとが増えた現在、65歳を超えて失業してしまう場合もあるでしょう。そんなリスクに対応してくれるものが高年齢求職者給付金です。この記事では高年齢求職者給付金についてわかりやすく説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶高年齢求職者給付金はいくらもらえる?
支給される金額は基本手当の50日分または30日分。したがって、40万や50万など高額になることはない。
※くわしくは下記で説明しています。


▶年金は一緒にもらえるの?
高年齢求職者給付金を受け取っても老齢年金は支給停止されない。
※ただし、65歳未満で基本手当をもらう場合は厚生年金が支給停止する。くわしくは下記で説明しています。


▶65才になる前にやめて失業保険をもらったほうが得する?
高年齢求職者給付金よりも失業保険(基本手当)のほうがもらえる金額は多くなるが、注意点もある。
※くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次
高年齢求職者給付金とは?
65歳以上で失業等をしたひとにお金を支給してくれる

高年齢求職者給付金とは、65歳以上の方が退職・失業した場合、失業の認定を受けたときに支給されるお金です。

支給額はそれほどたくさんあるわけではないですが、再就職するまでにお金が欲しい場合は申請しましょう。

支給を受けるには下記の条件にあてはまらなければいけません。

支給条件がある?
以下の条件をすべて満たす場合に支給されます。

  • 離職により資格の確認を受けたこと。
  • 労働の意志及び能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあること。
  • 算定対象期間(原則は離職前1年間)に被保険者期間※が通算して6か月以上あること。
    ※雇用保険の被保険者であった期間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上ある月のこと(または賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上ある月を1か月として計算)。

※参照:ハローワークインターネットサービス基本手当について:高年齢求職者給付金について

支給額は?いくらもらえる?

高年齢求職者給付金の支給額は、雇用保険の被保険者であった期間によって下記のように金額が変わります。


▶被保険者であった期間が1年以上
基本手当の50日分
※たとえば退職前の月収が約30万であり、基本手当日額が約6,000円になる場合、6,000円×50日分 = 約30万円となります。


▶被保険者であった期間が1年未満
基本手当の30日分

※たとえば退職前の月収が約30万であり、基本手当日額が約6,000円になる場合、6,000円×30日分 = 約18万円となります。

基本手当の支給額はこちら↓
もらえる金額はいくら?月収20~50万円のとき
税金や保険料はかかる?

高年齢求職者給付金は非課税所得です。したがって、給付金を受けても税金が加算されたり、国民健康保険料が増えたりすることはありません。
※雇用保険法第12条。
※したがって、年末調整や確定申告をするときに収入として申告しないように気をつけましょう。給付金を受け取ったとしてもその金額は年収に含めないようにしましょう。


支給スケジュールは?
期限は1年

高年齢求職者給付金の支給を受けることができる期限は離職日の翌日から1年です。
※1年が過ぎると受け取れなくなります。

給付金は待期期間が終わって失業の認定を受けたら支給されます。
※給付制限があるひとは、給付制限がおわったあとに失業の認定を受けたら支給されます。

支給される日程
高年齢求職者給付金の受給期間
高年齢求職者給付金の受給期間

※受給期間の1年が過ぎると給付金は受け取れなくなります。


▶振込日
失業の認定を受けた後、指定した預金口座に振り込まれます。
※預金口座に振り込まれるのは、失業の認定日の翌日から約1週間後になります。

注意点

受給できる期間は1年間なので、求職の申込みが遅くなったひとは全額受け取れなくなってしまいます。
たとえば給付金が満額で50日ぶんもらえる人の場合、求職の申込日が遅れてしまうと30日ぶん受け取れなくなってしまいます

※受給期間(1年間)が終了する20日前に失業の認定を受けた場合。

受給期間を過ぎたら受け取れない
受給期間を過ぎたら受け取れない


年金はもらえる?
年金と一緒にもらえる

高年齢求職者給付金を受給しても老齢年金はもらえるので安心してください。
※老齢基礎年金や老齢厚生年金は支給されます。

ただし、65歳より前に退職し、失業保険(基本手当)をもらう場合は、65歳になるまで老齢厚生年金が支給停止されるので注意しましょう。
※老齢基礎年金は支給停止されません。
※参照:日本年金機構年金と雇用保険の失業給付との調整

なんで64歳11ヶ月で退職する?
もらえる金額に差が出る

65歳定年で退職せずに、あえて64歳11ヶ月で退職する人がいます。

なぜかというと、失業保険(基本手当)をもらって、たくさんお金をもらおうとする人がいるからです。

どういうこと?得するの?

雇用保険の給付である基本手当(失業保険)は65歳以上のひとは支給対象外です。

したがって、基本手当を欲しい人は65歳になるまえに退職する、ということです。

▶注意点
しかし注意しなければいないことは、65歳未満で基本手当の支給を受けると、65歳になるまで老齢厚生年金の支給が停止してしまいます。
※老齢基礎年金は支給停止されません。
※参照:日本年金機構年金と雇用保険の失業給付との調整

したがって、65歳になる直前である64歳11ヶ月で退職し、65歳になる前にハローワークで基本手当の受給資格を得れば、基本手当の支給を受け、65歳になれば老齢年金が全額支給されることになります。


▶65歳で退職した場合は?

65歳で退職した場合は基本手当の対象外なので、ハローワークで失業の認定を受ければ高年齢求職者給付金が支給されます。
どれくらい受給額に差が出るの?
▶64歳11ヶ月で退職し、基本手当を受ける場合
たとえば退職前の月収が30万円、雇用保険に20年以上加入していた場合、基本手当の支給額は日額約5,000円、給付日数は150日になります。
※10年以上20年未満の場合は120日。くわしくはもらえる期間は?(所定給付日数)を参照。

このとき、64歳11カ月で退職すると、基本手当が150日分支給されるので、75万円受け取ることができます。


▶65歳で退職し、高年齢求職者給付金を受ける場合
上記と同じ条件で65歳で退職した場合、高年齢求職者給付金は50日分となり、25万円受け取ることができます。

▶いくら差が出る?
上記の場合、もらえる金額は50万円の差が出ます。

■注意点

▶注意点①
自己都合退職の場合、2ヶ月の給付制限がつくため、基本手当を受けるまでタイムラグが発生します。

▶注意点②
退職月によってはボーナスを受け取れない。

▶注意点③
退職金が減額される場合がある。


失業保険とどちらが得?
失業保険のほうがもらえる金額は多いが、ルール違反はダメ

「どっちのほうがお金をもらえるか」だけの損得だけで考えれば、もしかしたら65歳になる1か月前にやめたほうがいいかもしれません。
※失業保険がもらえるため。

ですが気をつけてほしいのは、65歳もしくは64歳11か月に退職後、働くつもりもないのに給付金や失業保険をもらうのはルール違反です。

ルール違反?

高年齢求職者給付金および基本手当をもらうには、就職しようとする意思があるにもかかわらず失業の状態にあることが条件です。

数十万円のお金を手に入れて、少し得するだけのために、毎月ハローワークに行って、職業相談などの求職活動の実績をこなし、失業の認定をもらい、認定日にお金をもらうような行為はよくありません。

だまってテキトーに実績をこなしていればお金をもらえるかもしれませんが、そんなセコいことをするのは面倒ですし、後ろめたい気持ちで受給するのは精神衛生上よくないです。

それに、ハローワークの職員さんの時間が取られたり、本当に求職している方が困ってしまいます。

退職後に求職するつもりがないにもかかわらず、お金を手に入れるためにそんな面倒なことをするよりも自分の時間をもっと大切に使った方がお得です。ルール違反はやめましょう。

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