退職後に扶養に入りながら雇用保険(失業保険)をもらえるの?

2024.04.05 更新
退職後に失業保険(基本手当)をもらうか扶養に入るか迷っている方は多いと思います。この記事では退職後に失業保険を受け取る場合と社会保険の扶養に入る場合について説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶失業保険を受給したら扶養を外れる?
たとえば妻が仕事をやめて失業保険を受ける場合、支給される日額が3,612円以上(60歳以上または障害を持つ方は5,000円以上)なら健康保険の扶養の対象外になる。
※ただし、給付制限等で支給を受ける前なら扶養対象になります。くわしくは下記で説明しています。


▶扶養外れる手続きをしないとどうなる?
社会保険の扶養から外れていることが発覚した場合、その事実が発生した日までさかのぼって、その期間の医療費(保険を使って診療したときのお金など)を返還することになる。
※くわしくは下記で説明しています。


▶扶養に入った場合と入らなかった場合でどっちが得?
お金が欲しければ扶養に入らないほうがいい
※くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次
動画でザッと内容を把握したいひと

扶養に入りながら失業保険をもらうことはできる?
給付制限中なら扶養に入れる

失業保険(基本手当)をもらう場合、条件を満たさなければ扶養を外れてしまいます。

失業保険が支給されれば、社会保険(健康保険等)の扶養から外れることがほとんどなので覚悟しておきましょう。
※社会保険の扶養については社会保険の扶養とは?を参照。

扶養を外れる?外れない?

失業保険(基本手当)が日額3,612円以上支給される場合、社会保険の扶養を外れることになります。
※年間130万以上になる見込みに該当するため。
※60歳以上の場合は日額5,000円以上で扶養対象外になります(年間180万以上になる見込みに該当するため)。


ちなみに、ほかに継続的な収入(遺族年金など)がある場合、その金額を含めて年間130万以上になる見込みなら社会保険の扶養の対象外となります。
※60歳以上または障害を持つ方なら180万。

たとえば失業手当が3,200円でも、遺族年金が年間108万ある場合は「108万÷360日 = 3,000円(遺族年金の日額)」となるので、これらを合計すると「失業手当3,200円 + 遺族年金3,000円 = 6,200円(一日あたり)」となります。この場合、日額3,612円以上なので扶養対象外となります。

※60歳以上の場合は日額5,000円以上で扶養対象外になります。
※現在、扶養に入っている場合は「扶養から外れる手続き」をしましょう。くわしくはページ下記で説明しています。
※失業保険の支給額についてはもらえる金額はいくら?月収20~50万円のときを参照。

扶養に入れる場合もある?
失業保険(基本手当)の支給が始まる前の期間であれば社会保険の扶養に入ることができます。
※年間収入が180万未満になる場合などの条件を満たした場合。くわしい条件は社会保険の扶養とはを参照。

つまり、7日間の待期期間および給付制限期間中は、健康保険等の被扶養者となることができます。

たとえば給付制限が2ヶ月あるなら、給付制限が終わるまで被扶養者の対象になります。

※支給が開始する日(給付制限期間の終了日の翌日)に扶養対象外になります。給付制限期間がない場合は7日間の待期期間満了日の翌日に対象外になります。
※おすすめ記事→社会保険の扶養とは?収入などの条件は?
※参照:日本年金機構従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
失業保険(基本手当)は非課税所得なので、ほかに収入等がなければ扶養親族の対象になります。

ただし、今年1月~12月末までの合計所得が48万を超えれば扶養親族の対象外になります。

※つまり、今年の給与収入が103万を超えているなら扶養親族の対象外になります。
※配偶者の場合は合計所得が133万以下なら配偶者特別控除の対象になります。

では次に、扶養を外れるのに手続きをしなかった場合について下記で説明していきます。

扶養を外れる手続きをしなかった場合どうなる?
お金を返さないといけないこともある

社会保険の扶養の対象外であることがわかったときは、扶養を外れる届出を提出しなければいけません。

被保険者の勤務先に被扶養者の異動届を提出することになります。
※届出書は加入している保険組合に請求するまたはダウンロードして手に入れることも出来ます。
※雇用保険受給資格者証のコピーを添付して勤務先(社会保険担当)に提出しましょう。



しかし、扶養から外れることに気づかなくて扶養に入ったままにしている方も多くいると思います。
※発覚したときまたはお知らせが保険組合から送られてきたら届出を提出しましょう。
※バレるバレないにかかわらず、扶養条件のルールは守りましょう。


手続きをしないままだとどうなる?

社会保険の扶養から外れていることがあとになって発覚した場合、その事実が発生した日までさかのぼって、その期間の医療費(保険を使って診療したときのお金など)を返還することになります。
※保険料を返すわけではありません。
※発覚したときまたはお知らせが保険組合から送られてきたら届出を提出しましょう。


そして、その事実が発生した日(被扶養者の資格喪失日)から国民健康保険に加入することになります。

※国保の保険料については下記でシミュレーションしています。


配偶者(夫または妻)の場合、社会保険の扶養から外れている期間の国民年金の保険料が未納になってしまいます(後日、国民年金の保険料を納付しましょう)。

ただし、2年以上未納のままにしておくと、あとから保険料を納めることが出来なくなってしまうので注意しましょう。

※年金を未納にしておくとデメリットがあります。

※参照:日本年金機構第3号被保険者(専業主婦・主夫)からの手続きが遅れた方へ

では次に、扶養に入らなかった場合の税金や保険料について下記で説明していきます。

扶養に入らなかった場合の税金や保険料は?
退職後の保険料は高い

退職して失業保険を受給し、扶養に入らなかった場合に気になるのが税金や保険料についてです。

収入が0円になったとしても保険料などの支払いも0円になるわけではないので覚悟しておきましょう。

税金はかかる?

収入が基本手当のみである場合、税金はかかりません。
※基本手当は非課税所得のため。

ただし、今年度(6月から翌年5月)の住民税については去年(1月~12月末まで)の所得で決まるため、退職後1年目は無職で収入が0円だとしても高額な住民税がかかることがほとんどです。

※退職後の住民税については下記の記事で解説。
退職後、住民税はいくら?無職でも高い?安くなるのは2年目から?

保険料はどうなる?

国民健康保険料は前年1月~12月の所得などをもとに今年度の保険料(今年4月~翌年3月まで)が計算されます。

3月末に退職した場合の国民健康保険料をシミュレーションしてみましょう。

以下に退職した初年度の保険料、退職した翌年度の保険料、退職した翌々年度の保険料をシミュレーションしました。
※下記のシミュレーションを見てわかるように、国民健康保険は前年1月~12月までの所得をもとに計算されるので、会社を退職して収入が0円になったとしても最初の年は保険料が安くありません。
※4月に国民健康保険に加入手続きをした場合は6月中旬に納付書が送付されます(4月から翌年3月までの1年分)。
※市区町村によっては送付される時期が異なります。

退職した初年度の保険料
今年3月31日に退職した場合、国保の加入資格は4月1日からとなるので今年4月~翌年3月までの国民健康保険料を支払うことになります。
※1年分(4月から翌年3月までの1年間)の保険料は送られてきた納付書を用いて数回~10回に分けて支払うことになります。

たとえば去年1月~12月までの給与収入が500万円だったとすると、今年4月~翌年3月までの国民健康保険料は約44.8万円となります。今年4月から加入したとすると、保険料は約44.8万円となります。

44.8万円1年間の保険料 ÷ 12 × 12カ月分 = 約448,000円支払う保険料
※世田谷区・独身・40歳以上の会社員として計算。
※国民健康保険料のシミュレーションはこちらで行えます。保険料率はお住まいの地域によって異なります。

※再就職して社会保険に加入した場合、社保に加入した月の前月まで国民健康保険料を支払うことになります。
※再就職までかかる税金などは退職後のお金シミュレーションで計算できます。
※オススメ記事→無職になったら毎月かかるお金は?

退職した翌年度の保険料
今年3月31日に退職した場合、翌年4月~翌々年3月までの国民健康保険料は今年1月~12月までの所得をもとに決定されます。

今年3月31日に退職しており、4月からは収入0円なので、今年1月~12月までの給与収入が130万円だったとすると、翌年4月~翌々年3月までの国民健康保険料は約11.4万円となります(2割減額※1された場合は年間約99,000円)。

※1 減額については下記で説明しています。
※世田谷区・独身・40歳以上の会社員として計算。
※国民健康保険料のシミュレーションはこちらで行えます。保険料率はお住まいの地域によって異なります。

退職した翌々年度の保険料
今年3月31日に退職した場合、翌々年4月~翌々々年3月までの国民健康保険料は翌年1月~12月までの所得をもとに決定されます。

今年3月31日に退職しており、翌年1月~12月までの収入が無職で0円だったとすると、翌々年4月~翌々々年3月までの国民健康保険料は約76,000円(7割減額※1された場合は年間約23,000円)となります。

※1 減額については下記で説明しています。
※世田谷区・独身・40歳以上として計算。

※くわしくは下記の記事で解説しています。
退職後の国民健康保険料はいくら?1年目は高い?20万超える?


所得が少ないひとは国保の保険料が安くなる?

所得が少ないひとは保険料(均等割)が減額されます。去年(1月~12月まで)の所得に応じて7割~2割減額されます。

たとえば無職で今年度の収入が0円(所得が無い)場合、翌年の年間保険料は7割減額されることになります。

したがって、退職して最初の年は収入が0円でも保険料はそれなりの金額になる場合があるので覚悟しておきましょう。

保険料の減額例
国保の保険料は前年(1月~12月まで)の所得に応じて7割~2割減額されます。たとえば1年間の保険料(均等割)が48,000円なら14,400円~38,400円になるということです。
ただし、前年の所得がたくさんあったり、世帯主がお金を稼いでいたりする場合は保険料が減額されません。くわしくは下記の記事で説明しています。

無職の場合の国民健康保険料はどれくらい?所得が少ないと安くなる?

健康保険の任意継続のほうが安い?

本人が希望すれば退職等をした後も勤務先の健康保険に加入することができます。これを健康保険の任意継続といいます。

健康保険の任意継続をすると、全額負担になるので保険料が高くなる傾向があります。ただし、ひとによっては任意継続にしたほうが保険料が安くなったりするメリットがあります。

たとえば退職前の給料が高かったひとは任意継続にしたほうが安くなる場合が多いです。

退職する前にどっちが安くなるか比較して任意継続にするか国民健康保険に加入するか選択しましょう。下記の記事で保険料をシミュレーションしているので気になる方はチェックしておきましょう。


扶養に入った場合と入らなかった場合でどっちが得?
失業保険が欲しければ扶養に入らないほうがいい

扶養に入った場合と入らなかった場合のメリット・デメリットについて下記にまとめました。

失業保険を受け取るつもりの方は扶養のことは気にしないで手当の支給を受けましょう。

扶養内でいる場合

▶メリット
健康保険料等の支払いが0円になる
※60歳未満の配偶者なら国民年金の支払いも0円になる。

▶デメリット
失業保険が受け取れない
※金額が3,611円以下なら扶養に入りながら失業保険を受け取れる(ほかに収入が無い場合)。くわしくは上記を参照。
※失業保険の支給額についてはもらえる金額はいくら?月収20~50万円のときを参照。

扶養に入らなかった場合

▶メリット
失業保険が受け取れる

▶デメリット
健康保険料等がかかる
※金額については上記でシミュレーションしています。

つまり、どっちが得なの?
▶たとえば退職前の年収が360万の会社員が、扶養に入らないで失業保険を受け取る場合

失業保険の支給額→月額約17万円(日額約6,000円)
※60歳~64歳なら約14万円。
住民税の支払い→月額約1.2万(年間約15万円)
国民健康保険料の支払い→月額約2.1万(年間約25.3万円)
※40歳~64歳の場合は月額約2.6万(年間約31.5万円)
※世田谷区の場合

国民年金の支払い→月額約1.7万(年間約20万円)
※60歳以上なら国民年金は0円。

つまり、ひと月に手に入るお金は下記のとおりになります。

17万 – 1.2万 – 2.1万 – 1.7万 = 月額約12万円(手に入るお金)
※40歳~59歳の場合は11.5万円
※60歳~64歳なら約10.2万円。
※保険料は退職後の国民健康保険料はいくら?を参照。
※退職後にかかるお金は退職後シミュレーションで計算。
▶扶養に入って失業保険を受け取らない場合

失業保険の支給額→0円
住民税の支払い→月額約1.2万(年間約15万円)
国民健康保険料の支払い→0円
国民年金の支払い→月額約1.7万(年間約20万円)
※配偶者の場合は国民年金の支払いも0円になります。
※60歳以上なら国民年金はかかりません。


上記の結果から、現在失業中であり、再就職するまでにお金が欲しければ失業保険を受け取ったほうがいいでしょう。

※お金が欲しいだけのために再就職するつもりもないのにズルして受給するのはルール違反です。


注意点
老齢厚生年金が支給停止する

失業保険(基本手当)と老齢厚生年金は65歳になるまで併給できません。

したがって、失業保険をもらう予定であり、老後の年金を早くもらうつもりの人は注意しないといけません。

年金が支給停止する?

たとえば、年金の受給年齢を60歳に繰上げして年金を受給している場合、ハローワークで求職の申し込みをした月の翌月から老齢厚生年金が支給停止されます。

たとえば5月10日にハローワークで求職の申し込みをしたら、6月分からの老齢厚生年金は支給停止されます。
※基本手当の受給期間が終わるまで(65歳になれば老齢厚生年金は支給されます)。
※上記の場合、4月分と5月分の年金については6月に振り込まれます。


ちなみに、老齢基礎年金については支給されます。65歳未満のひとが失業保険を受給することで支給停止するのは老齢厚生年金だけです。

退職後に失業保険(基本手当)をもらうつもりの方は社会保険(健康保険など)の扶養に入ることは多くの場合無理でしょう。

ただし、上記で説明したように「給付制限中」などで支給を受けていない期間は扶養に入れることを覚えておきましょう。
※こんなページもみられています↓
無職の場合の国民健康保険料はいくら?
退職後の国民健康保険料はいくら?1年目は高い?20万超える?