退職後、住民税はいくら?無職でも高い?安くなるのは2年目から?

2024.12.09 更新
アルバイトの方や会社員などが会社を退職して無職になったとき、住民税(市民税や県民税など)はどうなるの?と不安に思うひとは多くいるでしょう。この記事では退職後の住民税について説明していきます。

この記事のまとめ(ポイント)


▶なんで仕事をやめたのに住民税が高くなるの?
住民税は去年の所得で決まるため、退職後も高くなることが多い。退職して収入が0円でも、退職1年目は住民税がそれなりの金額になる。10万円以上になることが多い。
※年収400万ならひと月あたり約1.5万円かかる。
※したがって、安くなるのは無職になって2年目からのことが多い。
※くわしくは下記で説明しています。退職後1年目無職のときの住民税をシミュレーションしています。


▶退職後の住民税はいくら?
無職だとしても退職前の年収が500万で3月末に退職したなら、今年度の住民税はひと月あたり約2.0万円かかる。
※くわしくは下記で説明しています。


▶ずっと無職の人は住民税はいくらになる?
無職だと住民税がどうなるのかというと、去年の所得が少なければ住民税は0円になる。合計所得45万以下なら住民税が0円になる(市区町村によって42万以下などの場合があります)。つまり、以前から無職で収入が0円なら住民税も0円。
※くわしくは下記で説明しています。


▶無職でも保険料って高いの?

退職後の保険料も最初の年はそれなりの金額になる。国民健康保険は住民税と同じで「前年の所得」で決定するため。
※くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次
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退職後、収入が無くても最初の年の住民税は高い?
住民税は去年の所得で決まる

会社員やアルバイトをしている方などが退職して収入が無くなり、今年1月~12月までの収入が0円だとすると、今年の所得税は0円になります。
※また、所得税は給料から源泉徴収されているので、多くの方は退職後の所得税は0円になります。


ですが、住民税については退職後に収入が0円だとしても最初の年は課税されます。


なぜかというと、住民税は前年1月~12月までの所得によって決定するためです。したがって、現在働いてない人でも退職して最初の年の住民税は安くないことが多いです。
※住民税とは市民税や県民税のこと(東京都23区では区民税や都民税)。

無職でも最初の年の住民税は10万円超え?


会社員やアルバイトなどの方は、去年1月~12月にお金を稼いでいれば今年の住民税はそれなりの金額になります。

※ずっと無職で収入がない場合は下記で説明しています。

たとえば40歳未満・独身・東京都世田谷区に住んでいる方が2024年3月に退職した場合、去年(2023年1月~12月まで)の給料が400万円だとすると、今年度(6月~翌年5月まで)の住民税は約178,000円になります。
※年収300万なら住民税は約11万~12万円になります。
※たとえば定年退職後に収入が0円になっても、去年1月~12月にお金を稼いでいれば住民税はかかります。※したがって、住民税が安くなるのは無職になって2年目から。
※住民税が高くて払えない…とならないように、ある程度のお金を退職後に用意しておきましょう。

では次に、退職した初年度~翌々年の住民税がどれくらいになるか説明していきます。
※退職1年目、2年目、3年目の住民税を計算しています。自分の年収をあてはめてシミュレーションできるようにしておきましょう。

3月末に退職したときの住民税シミュレーション

住民税は前年1月~12月の所得をもとに今年度の税額が計算されます。


以下に退職した初年度の住民税、退職した翌年度の住民税、退職した翌々年度の住民税をシミュレーションしました。

3月末に退職したときの住民税
退職前の年収が500万円(月収約42万円)とした場合のシミュレーションです。
※住民税は6月から翌年5月までの合計が1年分となります。


初年度の住民税
1年間で約245,000円
※計算過程は下記で説明しています。

翌年度の住民税
1年間で5,000円
※計算過程は下記で説明しています。

翌々年度の住民税
1年間で0円
※計算過程は下記で説明しています。

※計算過程は以下で説明しています。

それぞれの住民税の計算過程は下記で説明していきます。退職予定のサラリーマンなどはチェックしておきましょう。





退職した初年度の住民税(1年目)

たとえば2024年3月31日に退職し、4月1日から収入が0円になった場合。

①まず去年の給与所得を計算
前年(2023年)1月~12月までの給与収入が500万円だったとすると、給与所得は以下のようになります。
※住民税は去年の所得で決まるため。

500万円給与収入144万円給与所得控除 = 356万円給与所得
※給与所得控除についてはこちらを参照
こちらのシミュレーションで給与所得の計算ができます。

給与所得のほかに所得がないので、これが総所得金額となります。


②次に課税所得の計算
総所得金額(356万円)が計算できたので次に課税所得を計算します。課税所得は、

356万円総所得金額所得控除しょとくこうじょ = 課税所得

総所得金額とは:各所得の合計(一部所得は除く)。
所得控除とは:税の負担を軽くするもの。

となります。所得控除を116万円とすると、

356万円総所得金額116万円所得控除 = 240万円課税所得

課税所得については課税所得とは?を参照。
所得控除についてはこちらを参照。

となります。

③住民税を計算
課税所得がわかったので、住民税を計算します。住民税の計算式は、

所得割 + 均等割 = 住民税

なので、まず所得割を求めます。

所得割は、

所得割 = 課税所得 × 10%

なので、課税所得の240万円をあてはめると、所得割は、

240万円 × 10% = 240,000円所得割
住民税率は全国一律10%です。

となります。

均等割は定額で5000円なので、今年度(2024年6月~翌年5月まで)の住民税は、

240,000円所得割 + 5,000円均等割 = 245,000円住民税
※世田谷区・独身・40歳未満の会社員として計算。
※あくまでおおよその金額です。
※厳密には調整控除が引かれて上記より少し安くなります。
※3月末退職の場合、前年度の住民税の残り(5月分まで)は最後の給料から一括徴収されます。

※年末調整をしておらず、確定申告をする方はこちらの記事で申告のやり方などチェックしておきましょう。

となります。

以下のページで税金や保険料がいくらになるかシミュレーションすることができます。

手取りと税金をパッと計算!かんたんシミュレーション
※再就職までかかる税金などは退職後のお金シミュレーションで計算できます。

では次に、退職して2年目の住民税について下記で説明していきます。




退職した翌年度の住民税(2年目)

たとえば年収500万円(月収約42万円)のサラリーマンが2024年3月31日に退職し、4月1日から収入が0円になった場合。

翌年度(2025年度)の住民税は今年(2024年)1月~12月までの所得をもとに決定されます。

今年3月31日に退職しており、4月からは収入0円なので、今年1月~12月までの給与収入が126万円(月収42万円 × 3)だったとすると、翌年度(2025年6月~2026年5月まで)の住民税は5,000円となります。

※今年3月までの社会保険料が約19万円、今年4月から国民年金と国民健康保険に加入し、12月までの国民年金と国民健康保険の保険料が合計約42万円とすると、社会保険料控除が合計約61万円(19万円 + 42万円)となります。したがって、給与収入126万円(給与所得71万円)から所得控除(基礎控除48万円 + 社会保険料控除61万円)を差し引くと、課税所得は0円になります。したがって、所得割は0円なので、均等割の5,000円だけ課税されることになります。
※世田谷区・独身・40歳未満のサラリーマンとして計算。住民税の計算方法は住民税とは?を参照。

退職した翌々年度の住民税(3年目)

たとえば年収500万円(月収約42万円)のサラリーマンが2024年3月31日に退職し、4月1日から収入が0円になった場合。

翌々年度(2026年度)の住民税は2025年1月~12月までの所得をもとに決定されます。

2024年3月31日に退職しており、それからは収入0円なので、2025年の収入は0円となります。したがって、翌々年度の住民税は0円となります。
つまり、収入が0円なら、退職してから3年目の住民税は0円になります。



所得が少ないひとは住民税が0円?
所得が少ないひとは住民税の均等割が課税されません。たとえば無職で今年度の収入が0円(所得が無い)場合、翌年の住民税は0円となります。
※1年間の合計所得が45万円以下の方(お住まいの地域によっては42万円以下などの場合があります)。

くわしくは下記の記事で説明しています。
住民税がかからない?いくらからかかる?住民税が0円になるとき

では次に、年度の途中で退職したときの住民税について下記で説明していきます。具体的に金額をあてはめてシミュレーションしているので退職予定の方は住民税がいくらになるかチェックしておきましょう。



年度の途中で退職したときの住民税シミュレーション

住民税は前年1月~12月の所得をもとに今年度の税額が計算されます。


以下に年度の途中(10月末)で退職したときの住民税をシミュレーションしました。


退職した初年度の住民税、退職した翌年度の住民税、退職した翌々年度の住民税をそれぞれシミュレーションしています。

10月末で退職したときの住民税
退職前の年収が500万円(月収約42万円)とした場合のシミュレーションです。
※住民税は6月から翌年5月までの合計が1年分となります。


初年度の住民税
1年間で約143,000円
※10月に退職後、今年11月~翌年5月までの住民税。

翌年度の住民税
1年間で約190,000円
※退職後、翌年6月から翌々年5月までの住民税。

翌々年度の住民税
1年間で0円

※計算過程は以下で説明しています。

それぞれの住民税の計算過程は下記で説明していきます。退職予定のサラリーマンなどはチェックしておきましょう。





退職した初年度の住民税(1年目)

たとえば年収500万円(月収約42万円)のサラリーマンが2023年10月末に退職し、11月から収入が0円になった場合。

今年度(6月から翌年5月まで)の住民税は前年1月~12月までの所得によって決まります。

前年1月~12月までの収入が500万円の場合、今年度の住民税は約245,000円となります。
※去年の収入が500万で住民税が約245,000円になる計算過程は3月末に退職した初年度(1年目)の住民税で説明しています。

したがって10月末に退職後の住民税は、2023年11月~翌年5月までの7カ月分の約14万円を支払うことになります。

※住民税は6月から翌年5月までの合計が1年分となります。

245,000円1年間の住民税 ÷ 12 × 7カ月分 = 約143,000円11月~翌年5月の住民税
※世田谷区・独身・40歳未満のサラリーマンとして計算。
※あくまでおおよその金額です。
※厳密には調整控除が引かれて上記より少し安くなります。

※年末調整をしておらず、確定申告をする方はこちらの記事で申告のやり方などチェックしておきましょう。
※再就職までかかる税金などは退職後のお金シミュレーションで計算できます。

では次に、退職して2年目の住民税について下記で説明していきます。




退職した翌年度の住民税(2年目)

たとえば年収500万円(月収約42万円)のサラリーマンが2023年10月末に退職し、11月から収入が0円になった場合。

翌年度(2024年度)の住民税は今年(2023年)1月~12月までの所得をもとに決定されます。

今年(2023年)10月末に退職しており、11月からは収入0円なので、今年1月~12月までの給与収入が420万円(月収42万円 × 10)だったとすると、翌年度(2024年6月~2025年5月まで)の住民税は約190,000円となります。

※世田谷区・独身・40歳未満のサラリーマンとして計算。
※厳密には調整控除が引かれて上記より少し安くなります。

退職した翌々年度の住民税(3年目)
たとえば年収500万円(月収約42万円)のサラリーマンが2023年10月末に退職し、11月から収入が0円になった場合。

翌々年度(2025年度)の住民税は2024年1月~12月までの所得をもとに決定されます。

2023年10月末に退職しており、それからは収入0円なので、2024年1月~12月までの収入は0円となります。したがって、翌々年度の住民税は0円となります。


※所得が少ないひとは住民税の均等割が課税されません。たとえば無職で今年度の収入が0円(所得が無い)場合、翌年の住民税は0円となります。くわしくは住民税がかからない?住民税が0円になるときで説明しています。

退職後の1年目の住民税まとめ
去年の所得で決まるので、退職1年目の住民税は安くないことが多い

今まで働いていた方が退職したあとの住民税がいくらになるかシミュレーションしました。


退職前にお金を稼いでいた場合、退職1年目の住民税は下記のようにそれなりの金額になることを覚えておきましょう。
※今年度(6月~翌年5月までの1年間)の住民税は去年1年間の所得によって決まるため。
※退職2年目・3年目については上記でシミュレーションしています。
仕事辞めた後、再就職するまで3ヶ月や半年休む場合の税金や保険料がいくらになるか気になる方は退職後のお金シミュレーションで計算できます。


退職して1年目の年収ごとの住民税
※1年間(6月から翌年5月まで)の住民税です。
※1年間の住民税は納付書を用いて一括または4回に分けて納付することになります。
去年1月~12月までの年収 1年間の住民税
※3月末で退職した場合
300万円 約118,000円
※ひと月あたり約10,000円。
350万円 約146,000円
※ひと月あたり約12,000円。
400万円 約178,000円
※ひと月あたり約15,000円。
450万円 約211,000円
※ひと月あたり約18,000円。
500万円 約245,000円
※ひと月あたり約20,000円。
600万円 約310,000円
※ひと月あたり約26,000円。
700万円 約378,000円
※ひと月あたり約31,000円。
800万円 約455,000円
※ひと月あたり約38,000円。

※退職1年目・40歳未満・独身・扶養無しとして計算。
※住民税はこちらのシミュレーションで計算。

※退職2年目・3年目については上記でシミュレーションしています。
※退職後に毎月かかるお金は無職になったら毎月かかるお金は?を参照。


以前から収入が少ない場合は住民税はかからない?

以前からずっと収入が少ないまたは0円の場合は住民税も所得税も0円になります。

したがって、収入が0円で働いてない人は税金が0円になります。
※住民税がかかるときは市区町村から納付書が届きます(普通徴収)。

住民税は前年の所得で決定するため、ずっと収入が0円だとすると1年間の住民税は0円になります。

ちなみに、アルバイトやパートなどをして収入があっても今年1年間(1月~12月まで)の合計所得が45万円以下なら翌年の住民税は0円になります。

※市区町村によっては42万円や38万円を超えると住民税がかかります。
住民税が0円になる条件は下記の記事で説明しています。
住民税がかからない?住民税が0円になるとき



失業したときは失業保険がもらえる?

失業などで職を失ったときは、雇用保険から「基本手当(失業保険)」としてお金が支給されます。

ただし、お金が支給されるのは失業してから1年までです。


また、基本手当を支給してもらうにはハローワークで手続きをし、再就職の活動をしていることが条件となります。

就職活動をしているあいだのお金を確保したい場合はかならず手続きをしましょう。

くわしくは下記の記事で説明しています。
基本手当とは?仕事(派遣等)をやめたら失業保険はいくら?
退職後1年目の国民健康保険料も高い?
退職1年目は数十万円になることが多いので覚悟しておく

退職後に収入が無くなったとしても、国民健康保険に加入しなければいけないので保険料を支払わなければいけません。
※親族の扶養に入る場合は除きます。


また、国保の保険料は「前年の所得」によって決定されるので、現在収入が0円だとしても退職1年目は保険料がそれなりの金額になることを覚悟しておきましょう。

※退職後の保険料についてはこちら↓
退職後の国民健康保険料はいくら?退職して1年目は高い?

退職後の住民税まとめ

▶仕事をやめたあとの住民税はどれくらい?
退職後、収入が0円でも初年度の住民税はそれなりの金額になる
※くわしくは上記で説明しています。


▶退職して1年目以降の住民税はいくら?
退職した初年度、翌年度、翌々年度で住民税が変わる
※くわしくは上記で説明しています。


▶現在収入が無くても住民税は安くならないの?
1年間の所得が少ないと住民税が0円になる。たとえば、今年1月~12月まで所得が少なければ住民税は課税されない。
※くわしくは上記で説明しています。

ここまで説明したように、退職してすぐの住民税はそれなりの金額になります。住民税が安くなるのは収入が無くなって2年目または3年目からです。
退職後に収入が0円だからといって初年度の住民税も安くなると思っているひとは しっかりお金を準備しておきましょう。

※退職後の保険料についてはこちら↓
退職後の国民健康保険料はいくら?退職して1年目は高い?