高年齢雇用継続給付とは?支給額は?年金が止まってしまうので注意

2025.04.21 更新
60歳以降も働く人は賃金が低下することが多いですが、そんなひとに支給される給付金があります。この記事では定年後も働く人のための給付金(高年齢雇用継続給付)についてわかりやすく説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶どんなひとが高年齢雇用継続給付をもらえる?
60歳以上65歳未満で雇用保険に加入しているひと。加入期間が5年以上必要。
※くわしくは下記で説明しています。


▶高年齢雇用継続給付はいくらもらえる?
たとえば60歳到達時の賃金月額が40万円のひとで、1ヶ月の賃金が24万円のとき、支給額は2.4万円
※60歳到達の日が2025年3月31日以前のひとは支給額は3.6万円。
※くわしい計算式などは下記で説明しています。


▶老後の年金が減る?
65歳になる前に老齢厚生年金をもらっている場合、年金額の一部が支給停止する。
※くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次
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高年齢雇用継続給付とは

高年齢雇用継続給付とは、定年後の再雇用などで60歳以降も働くひとで賃金が低下したひとに支給されるお金です。
※高年齢雇用継続給付には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2つがあります。この記事では「基本給付金」のほうについて解説しています。

ただし、60歳以降も働くひとのすべてがもらえるわけではありません。

受給資格は?

  • 60歳以上65歳未満であること
  • 雇用保険の一般被保険者であること。
    ※正社員やアルバイトなど雇用形態は関係ありません。
  • 被保険者であった期間※1が5年以上あること。
    ※1 離職して雇用保険から抜けても、1年以内にふたたび雇用保険に加入すれば「被保険者であった期間」として通算されます(再就職までの空白期間に求職者給付(基本手当など)および就業促進手当を受けていないこと)。

※支給対象月の全期間にわたって、育児休業給付または介護休業給付の支給対象となっているひとは対象外。

※参照:厚生労働省Q&A~高年齢雇用継続給付~
※参照:ハローワーク高年齢雇用継続給付について

支給条件は?
60歳以降の賃金が60歳到達時の賃金月額※3にくらべて、75%未満に低下したひとに支給されます。
※3 60歳到達時の賃金月額は、60歳に到達する前6か月間の総支給額(賞与を除く)を÷180した賃金日額の30日分の額。
※60歳以降に受給資格を満たした場合は受給資格が発生した時点の賃金月額と比較。
※60歳前に退職し、1年以内に再就職して受給資格が発生した場合、退職時点の賃金月額と比較。

▶賃金には通勤手当も含まれる?

賃金には通勤手当も含まれます(ボーナスは除きます)。
※下記の理由で賃金の減額があった場合には、その減額された額が支払われたものとして、賃金の低下率を判断することとなります(これをみなし賃金額といいます)。
▶みなし賃金額に該当する理由↓
・被保険者の懲戒(非行など)
・本人の都合による欠勤、疾病または負傷
・事業所の休業
・育児、介護

※参照:ハローワーク高年齢雇用継続給付について


高年齢雇用継続給付はいくらもらえる?

高年齢雇用継続給付の支給額は下記の計算式で決定されます。

ちなみに、低下率が75%以上になるひとは支給されません。

支給額の計算式

▶1ヶ月の賃金が60歳到達時とくらべて61%以下の場合

支給額 = 1ヶ月の賃金 × 15%相当額
※支給対象月のこと(支給対象月とは、その月の初日から末日まで継続して被保険者であった月)。

▶61%超75%未満の場合

支給額 = 1ヶ月の賃金 × A%(賃金の低下率に応じて支給率Aが変化します)
※支給率Aは以下の早見表をチェック。
※支給率Aは15%未満になります。

▶1ヶ月の賃金が60歳到達時とくらべて64%以下の場合

支給額 = 1ヶ月の賃金 × 10%相当額
※支給対象月のこと(支給対象月とは、その月の初日から末日まで継続して被保険者であった月)。

▶64%超75%未満の場合

支給額 = 1ヶ月の賃金 × A%(賃金の低下率に応じて支給率Aが変化します)
※支給率Aは以下の早見表をチェック。
※支給率Aは10%未満になります。

▶支給率Aの早見表

賃金の低下率 支給率
※受給資格発生日が2025年3月31日以前
賃金の低下率 支給率
※受給資格発生日が2025年4月1日以降
75% 0% 75% 0%
74% 0.88% 74% 0.79%
73% 1.79% 73% 1.59%
72% 2.72% 72% 2.42%
71% 3.68% 71% 3.28%
70% 4.67% 70% 4.16%
69% 5.68% 69% 5.06%
68% 6.73% 68% 5.99%
67% 7.8% 67% 6.95%
66% 8.91% 66% 7.93%
65% 10.05% 65% 8.95%
64% 11.23% 64%以下 10%
63% 12.45% 10%
62% 13.7% 10%
61%以下 15% 10%

※参照:厚生労働省令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
※参照:ハローワーク高年齢雇用継続給付について

※具体的な計算式は以下のとおり。
▶受給資格発生日が2025年3月31日以前
支給額 = -183/280 × 1ヶ月の賃金 + 137.25/280 × 賃金月額

▶受給資格発生日が2025年4月1日以降
支給額 = -64/110 × 1ヶ月の賃金 + 48/110 × 賃金月額

※参照:厚生労働省令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
※参照:ハローワーク高年齢雇用継続給付について

結局いくらもらえるの?

60歳到達時の賃金月額が40万円のひとが60歳以降に支払われた賃金が32万円のとき

この場合、低下率が80%なので給付金は支給されません。



60歳到達時の賃金月額が40万円のひとが60歳以降に支払われた賃金が28万円のとき

この場合、低下率が70%なので上記の早見表と照らし合わせると、支給率は4.16%(2025年3月31日以前は4.67%)になるので支給額は以下のようになります。

支給額 = 280,000円1ヶ月の賃金 × 4.16%支給率 = 11,648円支給額/月
※受給資格発生日が2025年4月1日以降の場合。


60歳到達時の賃金月額が40万円のひとが60歳以降に支払われた賃金が24万円のとき

この場合、低下率が60%なので支給率は10%(上限)になります。したがって支給額は以下のようになります。

支給額 = 240,000円1ヶ月の賃金 × 10%支給率 = 24,000円支給額/月
※受給資格発生日が2025年4月1日以降の場合。

※給付金は非課税なので税金や保険料はかかりません(年収に含めません)。

▶注意点
※1ヶ月※1(60歳以降)に支払われた賃金が、60歳到達時の賃金月額※2の75%未満に低下しているひとに対して支給されます。
※1 支給対象月のこと(支給対象月とは、その月の初日から末日まで継続して被保険者であった月)。
※2 60歳到達時の賃金月額は、60歳に到達する前6か月間の総支給額(賞与を除く)を÷180した賃金日額の30日分の額。
※60歳以降に受給資格を満たした場合は受給資格が発生した時点の賃金月額と比較。
※60歳前に退職し、1年以内に再就職して受給資格が発生した場合、退職時点の賃金月額と比較。

※60歳以降の1ヶ月の賃金が376,750円を超える場合は支給されません。
※支給額が2,295円以下になるときは支給されません。
※60歳到達時の賃金月額が494,700円を超えるときは 賃金月額 = 494,700円となります(下限は86,070円)。


支給期間は?いつまでもらえる?

「高年齢雇用継続基本給付金」の支給期間は、60歳に到達した月から65歳に達する月までです。
※60歳時点で受給資格を満たしていない場合は、受給資格を満たした月から65歳に到達する月まで。
※60歳時点で雇用保険に加入していなかった場合は、新たに雇用保険に加入した月から65歳に到達する月まで。
※各暦月の初日から末日まで雇用保険の被保険者であることが必要です。

申請手続きをしないとダメ?

高年齢雇用継続給付は自動的に支給されるわけではありません。

下記の必要書類をハローワークに提出する必要があります。

申請手続きは本人がするの?
高年齢雇用継続給付の申請手続は事業主が行うことになります。
※本人(従業員)は給付を受けることを勤務先の事務さんに伝えましょう。
※ただし、本人が希望する場合は本人が申請手続きを行うことも可能です。
初回の申請に必要な書類

  • 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
  • 高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
  • ※個人番号欄にマイナンバー(個人番号)を記載ください。

  • 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿又はタイムカード等被保険者が雇用されていることの事実、賃金の支払状況、賃金の額を証明することのできる書類
  • 被保険者の運転免許証(コピーも可)など被保険者の年齢が確認できる官公署から発行・発給された身分証明書などの書類
2回目以降の申請に必要な書類

  • 高年齢雇用継続給付支給申請書
    ※受給資格確認や前回の支給申請手続後にハローワークから交付されます。
  • 賃金台帳、出勤簿またはタイムカード(上記の申請書に記載した支給対象月に支払われた賃金の額、賃金の支払い状況等を確認できる書類)

※参照:ハローワーク高年齢雇用継続給付について


60歳以降に受給資格が発生してもいい?

高年齢雇用継続給付は、継続勤務や再雇用などで60歳以降も継続して勤務するひとが対象になりますが、そのほかにも下記のようなひとも支給対象です。

60歳時点では受給資格を満たしていないが、60歳以降に条件を満たした場合


※60歳以降に条件を満たした場合は受給資格が発生した時点の賃金月額と比較することになります。


60歳時点では雇用保険の被保険者じゃなかったひとが、60歳以降に再就職して条件を満たした場合


※60歳前に退職し、1年以内に再就職して受給資格が発生した場合は退職時点の賃金月額と比較することになります。

▶再就職までの期間が1年を超えるとダメ?
雇用保険(基本手当等)を受給しないまま再就職していたとしても、勤務先Aの離職日と勤務先Bの就職日の空白期間が1年を超える場合は支給対象外となります。


年金が減ってしまう?

65歳になる前から老齢厚生年金をもらっている場合(特別支給の老齢厚生年金など)、高年齢雇用継続給付を支給されると年金が一部停止されます。

停止額は以下のように計算されます。

停止額の計算式

▶1ヶ月の賃金が60歳到達時とくらべて61%以下の場合

老齢厚生年金の停止額 = 標準報酬月額 × 6%相当額
※支給対象月のこと(支給対象月とは、その月の初日から末日まで継続して被保険者であった月)。

▶61%超75%未満の場合

老齢厚生年金の停止額 = 標準報酬月額 × A%(賃金の低下率に応じて停止率Aが変化します)
※停止率Aは以下の早見表をチェック。
※停止率Aは6%未満になります。

▶1ヶ月の賃金が60歳到達時とくらべて64%以下の場合

老齢厚生年金の停止額 = 標準報酬月額 × 4%相当額
※支給対象月のこと(支給対象月とは、その月の初日から末日まで継続して被保険者であった月)。

▶64%超75%未満の場合

老齢厚生年金の停止額 = 標準報酬月額 × A%(賃金の低下率に応じて停止率Aが変化します)
※停止率Aは以下の早見表をチェック。
※停止率Aは4%未満になります。

▶停止率Aの早見表

標準報酬月額/賃金月額 停止率
※2025年3月31日以前
標準報酬月額/賃金月額 停止率
※2025年4月1日以降
75% 0% 75% 0%
74% 0.35% 74% 0.31%
73% 0.72% 73% 0.64%
72% 1.09% 72% 0.97%
71% 1.47% 71% 1.31%
70% 1.87% 70% 1.66%
69% 2.27% 69% 2.02%
68% 2.69% 68% 2.4%
67% 3.12% 67% 2.78%
66% 3.56% 66% 3.17%
65% 4.02% 65% 3.58%
64% 4.49% 64%以下 4%
63% 4.98% 4%
62% 5.48% 4%
61%以下 6% 4%

※参照:厚生労働省令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
※参照:ハローワーク高年齢雇用継続給付について

※停止率の計算式は以下のとおり。
▶受給資格発生日が2025年3月31日以前
停止率 = {A – (B + C)} ÷ B × 6/15
A = 60歳到達時の賃金月額 × 75%
B = 標準報酬月額
C = (A – B) × 485/1400

▶受給資格発生日が2025年4月1日以降
停止率 = {A – (B + C)} ÷ B × 4/10
A = 60歳到達時の賃金月額 × 75%
B = 標準報酬月額
C = (A – B) × 46/110

※参照:厚生労働省令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
※参照:ハローワーク高年齢雇用継続給付について

いくら停止するの?

60歳到達時の賃金月額が40万円のひとが60歳以降に支払われた賃金が32万円のとき

標準報酬月額は32万円とすると、低下率が80%なので年金は停止されません。



60歳到達時の賃金月額が40万円のひとが60歳以降に支払われた賃金が28万円のとき

標準報酬月額は28万円とすると、低下率が70%なので上記の早見表と照らし合わせると、停止率は1.66%(資格発生日が2025年3月31日以前の場合は1.87%)になるので支給額は以下のようになります。

停止額 = 280,000円標準報酬月額 × 1.66%停止率 = 4,648円停止額/月
※受給資格発生日が2025年4月1日以降の場合。


60歳到達時の賃金月額が40万円のひとが60歳以降に支払われた賃金が24万円のとき

この場合、低下率が60%なので停止率は4%(上限)になります。したがって停止額は以下のようになります。

停止額 = 240,000円標準報酬月額 × 4%停止率 = 9,600円停止額/月
※受給資格発生日が2025年4月1日以降の場合。

ただし、支給額のほうが多いので損することはありません。支給額については上記で説明しています。

高年齢雇用継続給付は申請しないともらえません。条件にあてはまっているひとはなるべく早めに申請することをオススメします(時効は2年)。