育児休業給付金とは?手取りはいくら?育休前の80%になる?

2025.04.14 更新
育休中にお金がもらえる制度を知っておきましょう。この記事では育休中にもらえるお金、育児休業給付金(育休手当)の手取りや注意点などについてわかりやすく説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶育休手当は最高でいくらもらえるの?
育児休業給付金のもらえる金額の上限は約31万円。
※くわしくは下記で説明しています。


▶育児休業給付金の手取りはいくら?
育児休業給付金(育休手当)の月額は月収の約67%の金額(6か月以降は50%)。ただし、育児休業給付金には税金や保険料がかからないので手取りが育休前の約80%になる。
※くわしくは下記で説明しています。育休手当から引かれるものなどまとめています。


▶育児休業給付金はいつから80%になる?
通常は給付率が67%ですが、2025年4月からは80%(手取りがおおよそ10割)に引き上げられる(最大で28日間だけ)。
※給付金の計算式は下記で説明しています。


▶育休手当(育児休業給付金)は誰でももらえる?
給付金は雇用保険に加入しているひとがもらえる。初めて働き始める等の場合(パートやアルバイト含む)、すぐに育児休業給付金をもらうことはできない。
※くわしくは下記で説明しています。


▶育休中は給料はもらえる?

育休中も働いて給料(賃金)をもらうことは可能だが、賃金を受け取る場合は支給される育休手当が減額または全額停止される。
※くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次
育児休業給付金とは?

育休を取得した場合にもらえるお金を「育児休業給付金」といいます。雇用保険に入っている方が育休を取ったときに支給されるものです。

ただし、育休を取得しても申請をしなければお金は支給されません。
※育休を取得するつもりの方は育児休業給付金がもらえる条件や支給額はいくらなのか等についてザッと把握しておくことをオススメします。

もらえる金額の計算式は?上限はいくら?
育児休業給付金には上限がある

育児休業給付金(育休手当)がどれくらい支給されるのかくわしく見ていきましょう。

ひと月あたりの支給額はおおよそ(月給 ÷ 30) × 支給日数 × 67%です。
※育児休業の開始から181日目(6ヶ月)以降は50%になります。
※支給日数は原則として30日です。くわしい計算式は下記のとおりです。



ちなみに、給付金には上限があるので、育休前にたくさん給料をもらっていたとしても給付金は上限額までしか支給されません。
※2024年8月1日からの育児休業給付金の上限額は月315,369円(育休開始から6ヶ月経過後は235,350円 )です。

支給額の計算式は以下のとおり
※参照:厚生労働省Q&A~育児休業給付~

育児休業給付金の支給計算式
育児休業給付金の支給計算式

※休業開始時賃金日額とは:休業開始前6ヶ月間の賃金を180で割った金額
※育児休業を開始してから支給単位期間(1ヶ月)ごとに支給されます。180日目までは休業開始前賃金の67%が、181日目以降は50%が支給されます。

※支給単位期間の支給日数は原則として30日です。ただし、育児休業終了日を含む支給単位期間については、育児休業終了日までの日数となります。
※支給単位期間とは、育児休業を開始した日から起算した1ヶ月ごとの期間のこと。

ちなみに夫婦で育休を6か月ごとに分けて取得すれば67%の給付率で育休手当を1歳2か月になるまで受けられます
パパママ育休プラスによって育休できる期間が1歳2か月まで伸びます。
▶給付率が80%になる?
子供が生まれてから一定期間以内に父母の両方が14日以上の育児休業を取得すれば、休業開始前賃金の13%相当額が給付されます(出生後休業支援給付金)。つまり、育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へと引き上げられます(ただし、期間は最大28日間だけ)。
※男性は出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内。
※配偶者が専業主婦だったり、ひとり親家庭の場合などには、配偶者の育児休業の取得を求めずに給付率が引き上げられます。

※出典:厚生労働省育児休業給付について
どれくらいの金額がもらえる?支給額の例

育休前の月収が約15万円の場合は? 支給額は月額約10万円となります。
※10ヶ月取得したら約90万円になります。
※6ヶ月経過後は約8万円になるため
※出生後休業支援給付金を加えたときは10ヶ月で約92万円
育休前の月収が約20万円の場合は? 支給額は月額約13万円となります。
※10ヶ月取得したら約120万円になります。
※6ヶ月経過後は約10万円になるため
※出生後休業支援給付金を加えたときは10ヶ月で約123万円
育休前の月収が約25万円の場合は? 支給額は月額約16.8万円となります。
※10ヶ月取得したら約150万円になります。
※6ヶ月経過後は約12.5万円になるため
※出生後休業支援給付金を加えたときは10ヶ月で約154万円
育休前の月収が約30万円の場合は? 支給額は月額約20万円となります。
※10ヶ月取得したら約180万円になります。
※6ヶ月経過後は約15万円になるため
※出生後休業支援給付金を加えたときは10ヶ月で約184万円
育休前の月収が約40万円の場合は? 支給額は月額約26.8万円となります。
※10ヶ月取得したら約240.8万円になります。
※6ヶ月経過後は約20万円になるため
※出生後休業支援給付金を加えたときは10ヶ月で約246万円

育児休業給付金の上限額は?
育児休業給付金の上限額は月315,369円(育休開始から6ヶ月経過後は235,350円)です。

育児休業給付金はいつ振り込まれる?
すぐには振り込まれない

育児休業給付金が支給されるのは、ハローワークの審査が終わって、支給決定の通知が届いてから約1週間後です。

ハローワークの審査状況によるので、給付金が口座に振り込まれるのは1~3か月以内と考えておきましょう。また、振り込まれる際は毎月振り込まれるわけではなく、原則2か月に一度、2か月分が振り込まれます。

※参照:厚生労働省Q&A~育児休業給付~

では次に、育児休業給付金(育休手当)の手取りがどれくらいになるかについて下記で説明していきます。金額をあてはめてシミュレーションしています。

育児休業給付金を受けると手取りはいくら?育休前後でシミュレーション
育児休業給付金の手取りは約80%になる

上記でも説明したように、育児休業給付金(育休手当)は月収の約67%の金額になります(育休開始から6か月以降は50%)。
※ちなみに夫婦で育休を6か月ごとに分けて取得すれば、ずっと67%の給付率で育休手当を受けられます(パパママ育休プラスによって育休できる期間が1歳2か月まで伸びます)。


ただし、下記のシミュレーションを見てわかるように、育児休業給付金には税金や保険料がかかりません。


したがって、手取りがそれなりの金額(育休前の約80%)になります。手取りがいくらになるか下記のシミュレーションをチェックしておきましょう。
※育休前の月収が25万だと育休手当の手取りが約16万になります(下記のシミュレーション)。

育休前の月収が25万円(年収300万円)だったときの手取りシミュレーション

育休前(給付金をもらう前)
▶月収25万円のとき(年収300万)

  • 所得税:ひと月約4,600円
  • 住民税:ひと月約10,000円
  • 年金保険料:ひと月約24,000円
  • 健康保険料:ひと月約13,000円
  • 雇用保険料:ひと月約1,500円
  • 手取り:ひと月約200,000円
    ※計算はこちらのシミュレーションで行っています。



育休中(給付金が支給中)
▶月収16.8万円のとき
※上記の16.8万円は、育休で休業する前の月収が25万円だったときの育児休業給付金の額(1か月間30日支給された場合の金額)。
※くわしい計算式は上記を参照。

  • 所得税:ひと月0円
  • 住民税:ひと月約10,000円
    ※今年度(6月~翌年5月)の住民税は去年(1月~12月まで)の所得で決まるので、今年(1月~12月まで)の所得における住民税については翌年度に反映されます。育休手当は非課税所得なので、住民税はかかりません。
  • 年金保険料:ひと月0円
  • 健康保険料:ひと月0円
  • 雇用保険料:ひと月0円
    ※賃金をもらっていなければ雇用保険料は0円になります。
  • 手取り:ひと月約158,000円(6か月以降は約115,000円)

以上のように、育児休業給付金には税金や保険料がかからないので、手取りが育休前の約80%になるんです。
※育児休業給付金が引き上げられる施策が2025年4月から始まりました。産後パパ育休を取得したときや育休を取得したときの給付金に、さらに給付金が上乗せされます(出生後休業支援給付金)。期間は最大で28日間だけですが、合計額はおおよそ賃金の80%(手取りは100%相当)になります(上記でも解説)。

育休中にお金を稼ぐと減額される?
育休中に働くつもりの方は注意しましょう

育休中に給付金をもらいながら勤務先で働いて賃金を受けることもできます。ですが、給付される金額が減ってしまうことがあります。

さらに、長時間働くひとは給付金が支給停止されてしまうので気をつけましょう。
※妊娠中もそれほど辛くなくてアルバイトなどをして働きたいと思っているひとは気をつけてください。

くわしくは下記の記事で説明しています
育休中にいくらまで仕事OK?80時間?副業やアルバイトも?


育休中は税金や社会保険料が0円になる?

育休中は社会保険料を免除することができます。


申請をすれば事業主と従業員両方の社会保険料が0円になります。従業員と事業主のどちらも0円になるので必ず申請するようにしましょう。

※免除の対象になるには条件があります。くわしくは育休中の社会保険料は免除される?を参照。


免除の申請は事業主がおこなうことになります。
※事業主が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構へ提出することになります。

育児休業給付金は収入になる?
収入に含まれないので、控除の対象になることがある

育児休業給付金(育休手当)は非課税所得のため収入や所得には含まれません。つまり、給付金について課税されることはないので、給付金にかかる税金は0円になります。

したがって、共働きで産休や育休を取得した方は配偶者控除の対象になる場合があります。くわしくは下記の記事で説明しています。

産休育休を取ったとき配偶者控除を受けれる?

※出典:雇用保険法12条。
※出典:国税庁所得税法


年末調整のときに配偶者控除の対象になる?

共働きで夫婦ともにたくさん稼いでいる場合(年収201万を超えるなど)、配偶者控除は利用できません。
※所得が133万円を超える方は配偶者(特別)控除の対象外になります。

しかし、育休をしばらく取っているひとは賃金がもらえなくなるので1年間の所得が少なくなります。
※出産手当金や育休手当は非課税所得のため所得に含みません。

したがって、共働きの夫婦で産休や育休を取得した方は配偶者控除の対象になる場合があります。

税金が安くなるメリットを受けられるかもしれないのでチェックしておきましょう。くわしくは下記の記事で説明しています。


育児休業給付金がもらえる条件は?
育児休業給付金は、雇用保険に加入していなければ支給されない

簡単に説明すると、雇用保険に加入しており、1歳未満の子を養育している方は給付金が支給されます。

したがって、雇用保険に加入していない方は育児休業給付金が支給されません。
産後パパ育休でもらえる給付金については下記の記事を参照。
産後パパ育休とは?もらえるお金は育休と同じ?


支給される条件は以下のとおり
  • 雇用保険被保険者であること
  • 1歳に満たない子を養育していること(保育園に入所できない等、一定要件を満たす場合最長2歳)
  • 育児休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数(賃金や報酬の支払い対象となっている日数のこと)が11日以上ある月が通算して12カ月以上あること

※原則、日給者の場合は各月の出勤日数、月給者の場合は各月の暦日数。
※雇用保険の被保険者期間において産前休業開始日等を起算点として、その日前2年間に賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上※1ある完全月が12カ月以上ある場合でも要件を満たすものとされます。
※1 11日以上の月が12カ月ない場合、完全月で賃金支払基礎となった時間数が80時間以上の月を1カ月として算定します。



パートや派遣など期間を定めて雇用されてるひとは?
有期雇用労働者(パートや派遣など期間を定めて雇用される者)の場合は、上記に加えて、下記の条件を満たさなければいけません。

  • 子が1歳6カ月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこと

※参照:厚生労働省Q&A~育児休業給付~

会社によっては育休が断られる場合もある?
会社のルールによっては取れないときもある

次のような労働者について「育児休業をすることができないこととする労使協定(会社との契約)」があるときは、事業主は育児休業の申出を拒むことができ、拒まれた労働者は育児休業を取得できません。

  • 雇用された期間が1年未満の労働者
  • 1年以内に雇用関係が終了する労働者(1歳6か月までの育児休業の場合は、6か月以内)
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

※出典:厚生労働省育児・介護休業法のあらまし

では次に、入社してすぐには給付金がもらえない場合について下記で説明していきます。
※新入社員がすぐに育休を取ることはできません。くわしくは下記で説明していきます。

入社してすぐにはもらえない?
育児休業給付金は入社してすぐにはもらえない

たとえば新入社員として働き始めた方(パートやアルバイト含む)が、入社してすぐに育児休業を取得したとしても育児休業給付金はもらうことができません。


上記の条件を見てわかるように、育児休業開始前の2年間に一定の条件を満たした月が12ヶ月以上なければ育児休業給付金はもらえません。

※入社以前にほかの会社等で勤務していた場合、その期間(被保険者であった期間)も通算することができます。通算した期間が上記の条件を満たせば、育児休業給付金の対象となります。
※ただし、離職後に基本手当の受給資格の決定を受けている場合は、以前の勤務期間(被保険者であった期間)は通算されません。

※出典:厚生労働省育児休業給付について
※出典:厚生労働省育児・介護休業法のあらまし



もらえる期間は?

育児休業給付金がもらえるのは子どもが1才になるまでです。

ただし、保育所に入れたいけど入れないなどの場合、最長2歳になるまで育休を延長することができます。
※延長するには申請をする必要があります。
※父母ともに取得する場合、1歳2か月まで期間が伸びます(パパママ育休プラス)。

※ちなみに夫婦で育休を6か月ごとに分けて取得すれば、ずっと67%の給付率で育休手当を受けられます。

延長できる場合
次のいずれかにあてはまる場合、1歳6か月または2歳まで育児休業期間を延長することができます。
※参照:厚生労働省育児・介護休業法のあらまし

  • 保育所に入所を希望しているが、入所できない場合で、1歳を超えても当面その実施が行われない場合

  • 1歳以降、子の養育をする予定であった配偶者が死亡・負傷等の事情によって、子を養育することが困難になった場合
  • 産前・産後休業、産後パパ育休または新たな育児休業の開始により育児休業期間が終了した場合で、産前・産後休業、産後パパ育休または新たな育児休業の対象となった子が死亡したときまたは他人の養子になったこと等の理由により労働者と同居しなくなったとき。

  • 介護休業の開始により育児休業期間が終了した場合で、介護休業の対象となった対象家族が死亡したときまたは離婚、婚姻の取消、離縁等により対象家族と労働者との親族関係が消滅したとき。
育休手当まとめ


▶育休手当はみんなもらえるの?
給付金は雇用保険に加入しているひとがもらえる。
※くわしくは上記で説明しています。


▶金額はどれくらいもらえるの?
育休中の手取りは約80%になる。
※くわしくは上記で説明しています。


▶育休中にもらったお金に税金はかかる?
育休中にもらう給付金は非課税所得なので税金が0円になる。
※くわしくは上記で説明しています。

ここまで説明したように、雇用保険に加入している場合に育休を取得したときじゃないと給付金は支給されません。

また、育児休業給付金には税金がかからないこと、そして育休中は社会保険料が免除されることは知っておきましょう。