在職老齢年金とは?わかりやすく説明。減額ラインは50万?

2024.10.06 更新

年金をもらいながら働いてお金を稼いでいる場合、年金の支給額が減額される場合があります。この記事では在職老齢年金についてわかりやすくシミュレーションして説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶どんなときに年金が減るの?
老後の年金をもらいながら給料をもらっている場合、年金が減額される場合がある。
※これを在職老齢年金といいます。


▶全部の年金が減ってしまうの?
在職老齢年金で減額される年金は老齢厚生年金のみ。
※国民年金(老齢基礎年金)については全額支給されます。


▶どれくらい働く年金が減るの?
簡単に説明すると、月給と老齢厚生年金の受給額の合計額が50万円を超えると減額される。
※月給は標準報酬月額 +(直近1年間のボーナスの合計 ÷ 12)
※くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次
働くと年金が減る?在職老齢年金ってなに?
年金を我慢してもらう制度

年金をもらいつつ会社で働きながら厚生年金保険に加入している場合、老後にもらえる厚生年金が減るときがあります。
※70歳以降は厚生年金に加入できませんが、70歳以降も働いて給料をもらう場合は同様に「在職による支給停止(年金が減ること)」がおこなわれます。


これを在職老齢年金といいます。在職老齢年金は、老後にもらう年金と給料の合計額によって年金の支給を一定程度我慢してもらう制度です。
※つまり、給料をもらっている人以外は関係ありません。
※参照:日本年金機構在職中の年金(在職老齢年金制度)



年金が減ってしまう条件についてくわしくは下記で説明しているので見ていきましょう。


では、年金をもらいながらどれくらい働くと金額が減るのかについて下記で説明していきます。厚生年金が関係していきます。


年金をもらいながらいくら稼ぐと減額される?
50万円を上回ると、在職老齢年金として減額される

老後の厚生年金を受けとっており、さらに会社で働いて厚生年金の被保険者となっている場合、年金が減額(または全額停止)されることになります。

具体的には下記の金額を超えると減額されてしまいます。

いくら稼ぐと年金の一部が支給停止する?


基本月額と総報酬月額相当額の合計額が50万円を上回ると老後の年金が減額されます(支給が一部停止される)。

▶基本月額とは?
1年間の老齢厚生年金 ÷ 12
※加給年金は除く。
※老齢基礎年金および経過的加算は除く。


▶総報酬月額相当額とは?
標準報酬月額 +(直近1年間のボーナスの合計 ÷ 12)
標準報酬月額とは、報酬(給料など)の月額を区切りのよい幅で分けた金額のこと。たとえば毎月の月収が40.4万円なら標準報酬月額は41万円になります。
※参照:日本年金機構在職中の年金

基本月額と総報酬月額相当額の合計額が50万円以下なら老後の年金は減りません。老後にもらう年金を減らされたくない人は合計額が50万円を超えないようにしましょう。
※くわしくは下記のシミュレーションで説明していきます。
※老後にもらえる国民年金(老齢基礎年金)および経過的加算額については減額されません。全額支給されます。
2023年4月から48万円に変更されました。
2024年4月から50万円に変更されました。
※参照:日本年金機構在職中の年金

では次に、具体的に金額をあてはめてどれくらい年金が減額されるかシミュレーションしていきます。


在職老齢年金の計算方法は?いくら減額するかシミュレーション

では、具体的に年金がいくら減額されるかシミュレーションしてみましょう。

60歳以上の会社員として計算していきます。あなたが60歳以上であり、老後の厚生年金をもらっている場合はチェックしておきましょう。

減額される年金額はどれくらい?

※2023年4月より、47万から48万円に変更されました。
2024年4月から50万円に変更されました。

▶基本月額とは?
1年間の老齢厚生年金 ÷ 12
※加給年金は除く。
※老齢基礎年金および経過的加算は除く。


▶総報酬月額相当額とは?
標準報酬月額 +(直近1年間のボーナスの合計 ÷ 12)
標準報酬月額とは、報酬(給料など)の月額を区切りのよい幅で分けた金額のこと。たとえば毎月の月収が40.4万円なら標準報酬月額は41万円になります。
※参照:日本年金機構在職中の年金


年収360万円、基本月額15万円のときの在職老齢年金をシミュレーション
年金が減るかどうか計算してチェックしましょう

【条件】
あなたが60歳以上で年収360万円(月収30万円)、直近1年間にボーナス無し、基本月額が15万円の場合。
※基本月額 = 1年間の老齢厚生年金 ÷ 12


【ここからシミュレーション】
上記の条件の場合、標準報酬月額は30万円になります。したがって、基本月額と総報酬月額相当額の合計は45万円になります。この場合上記のフローチャートと照らし合わせると、あなたの老後の年金は減額されません。
※総報酬月額相当額 = 標準報酬月額 +(直近1年間のボーナスの合計 ÷ 12)

では次に、年収420万で年金が減額されるパターンについて説明していきます。


年収420万円、基本月額18万円のときの在職老齢年金をシミュレーション

【条件】
あなたが60歳以上で年収420万円(月収35万円)、直近1年間にボーナス無し、基本月額が18万円の場合。
※基本月額 = 1年間の老齢厚生年金 ÷ 12


【ここからシミュレーション】
上記の条件の場合、標準報酬月額は34万円になります。したがって、基本月額と総報酬月額相当額の合計は52万円になります。この場合、あなたの老後の年金は減額(一部支給停止)されます。
※総報酬月額相当額 = 標準報酬月額 +(直近1年間のボーナスの合計 ÷ 12)

上記の年金の減額式にあてはめて計算すると減額される年金は以下のようになります。

180,000円基本月額 + 340,000円総報酬月額相当額 – 50万円)÷ 2 = 10,000円(減額される年金額)

したがって、あなたの老齢厚生年金の月額は18万円から10,000円を差し引いた17万円になります。


手続きはいらない?

在職老齢年金は、老齢厚生年金と給料等の額に応じて、減額または停止される制度です。

したがって、あなた本人が何かしらの手続きをする必要はありません。


もし、給料等が上がって、年金が減額される場合は日本年金機構からお知らせがきます。
※勝手に減額されますが、何のお知らせも無く減額されるわけではないので安心してください。

では次に、在職老齢年金の注意点について下記で説明していきます。年金が支給停止されたくない方はチェックしておきましょう。

在職老齢年金の注意点は?

在職老齢年金についての注意点は以下のとおりです。

会社員やアルバイトとして働きながら年金も受け取るつもりの方はチェックしておきましょう

在職老齢年金についての注意点
  • 在職老齢年金で支給停止される年金は老齢厚生年金のみ
    ※老後にもらえる国民年金(老齢基礎年金)および経過的加算額については支給停止されません。

  • 支給される年金がマイナスになるとき、全額支給停止となり、加給年金も支給停止となります。

  • 退職して1か月を経過すると年金額の一部または全部支給停止がなくなり、全額支給されます。
    ※退職した翌月分の年金額から見直されます。

  • 年金の繰下げ受給をする方は要注意。在職老齢年金で年金が減額される方が繰下げ受給をする場合は、減額後の年金が繰下げ受給による増額の対象となります。したがって、在職老齢年金によって減額される年金については繰下げ受給の対象外となります。

※参照:日本年金機構在職中の年金
※参照:日本年金機構年金の繰下げ受給

以上のように、会社員やアルバイトとして働きながら年金も受け取る場合には、年金が減額されるケースがあるので覚えておきましょう。

ですが、60歳を超えてもガンガン稼いでおり、現役世代の会社員と同等もしくはそれ以上に稼げる力があるなら、年金が減額することなんて気にしないで働くことをオススメします。
※高齢になってもたくさん稼ぐライフスタイルは貴重なので、年金なんて気にせずにガンガン働いてください。