有給休暇とは?わかりやすく説明。何日もらえる?2つの条件は?

2024.03.28 更新

「有給休暇は正社員じゃない人は関係ないでしょ?」という認識の方もいると思います。この記事では年次有給休暇(有休)の取得条件や日数などについて簡単に説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶有給休暇は1年で何日もらえるの?
勤続年数や労働日数などによって取得できる有給休暇の日数は変わる。たとえば勤務年数が5年で週に4日働いているパート主婦の場合、有給休暇の日数は年間12日もらえる。
※くわしくは下記で説明しています。


▶有給休暇は使わないとどうなる?
有給休暇をずっと使わないと消滅する。1年なら有休を繰り越すことはできるが、ずっと有休を使わないと2年で無くなるので注意。
※くわしくは下記で説明しています。


▶有給休暇が欲しいけど断られることあるの?
正社員もアルバイトの方も関係なく有給休暇は取得できるが、事業の運営に支障がでる場合は休む日を変更してもらう場合がある。
※くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次
有給休暇ってなに?
有給休暇とは仕事を休んでもその間の賃金がもらえる制度

有給休暇とは「有給」で仕事を休むことができる制度です。
※正式には年次有給休暇といいます。多くの人は「有休(ゆうきゅう)」と略して呼んでいます。

通常のお休みとは違い、有給休暇は仕事を休んでもお金がもらえます。
※有給休暇を取得するには一定の条件があります。
※有給休暇でもらえるお金は会社の規則で決められています。


ただし、有給休暇はひとによって取得できる日数が違ったり、場合によっては断られることもあります。

チェックポイント

▶有給が取れる条件
新入社員はすぐに有給休暇を取得できない。
※くわしくは下記で説明しています。


▶もらえる日数
有給休暇を取得できる日数は勤続年数などによって変わる
※くわしくは下記で説明しています。


▶有給休暇でもらえるお金
有給休暇でもらえるお金の計算方法は3つあり、会社の規則などによって計算方法が決められている。
※くわしくは下記で説明しています。


有給休暇を取得する2つの条件は?
雇われてすぐには有給休暇を取得できない

有休を取得するには以下の2つの条件を満たさなければいけません。


条件を満たした方は正社員やアルバイトなどの区分に関係なく有給休暇が与えられます。


パートやアルバイトだからといって有給休暇をもらえないってことはないので安心してください。
※有給休暇は労働者の権利です。労働基準法第39条によって定められています。

有休取得のための2つの条件

▶雇い入れの日から6か月経過していること
※つまり、雇われてからすぐに有休を取得することはできません。新卒入社1年目の従業員がすぐに有休が取れるわけではありません。いつから有給休暇が取れるか確認しておきましょう。

▶全労働日の8割以上出勤していること

※参照:厚生労働省年次有給休暇とはどのような制度ですか。

では次に、有給休暇が何日もらえるのかについて下記で説明していきます。有給休暇の日数は人によって違います。

有給休暇がもらえる日数はどれくらい?
勤続年数などによって有給休暇の日数が変わる

取得できる有給休暇の日数は全員同じではありません。

有給休暇の日数は勤務年数や普段働いている時間によって以下のように決められています。
※与えられる日数は1日~20日です。


会社に雇われて働いているひと(サラリーマンやアルバイトなど)は有休が何日もらえるのかチェックしておきましょう。
※1年でもらえる有給休暇が何日増えるかチェックしておきましょう。

通常の労働者が取得できる有給休暇の日数

有給休暇の付与日数
有給休暇の付与日数



週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者が取得できる有給休暇の日数

短時間労働の有給休暇の付与日数
短時間労働の有給休暇の付与日数

※参照:厚生労働省,働き方・休み方改善ポータルサイト年次有給休暇とは

例:有給休暇の日数は何日もらえる?
▶通常の労働者の場合
たとえば雇用されて1年目(6か月以上勤務)の場合、有給休暇は年間10日与えられます。

たとえば継続した勤務年数が5年の場合、有給休暇が年間16日与えられます。


▶働く時間が少ない方の場合
たとえば継続した勤務年数が5年で週に3日働いているパート主婦の場合、有給休暇が年間9日与えられます。

では次に、有給休暇でもらえるお金は何で決まるのかについて下記で説明していきます。計算方法が3つあります。

有給休暇でもらえるお金はどれくらい?
有給休暇でもらえるお金は会社の規則で決められている

有給休暇でもらえるお金の計算方法は3つあり、勤めている会社の規則などによって計算方法が決められています。


自分の勤務先の有給休暇がどの計算方法なのか知っておきましょう。
※勤務先の規約を確認すれば計算方法がわかります。


有給休暇でもらえるお金の3つの計算方法

1.通常の勤務で支払われる賃金と同じだけ
通常どおり勤務したとして支払われる給料と同じだけの金額が有休をとったときにもらえる方法です。たとえば、アルバイトなどで8時間シフトなら時給×8時間分の金額が支払われることになります。
2.平均賃金
平均賃金とは、次のうちどちらか高いほうの金額がもらえる方法です。たとえば、過去3ヶ月の賃金合計が90万円なら有給の金額は1日約10,000円となります。
※ボーナスや早退した日などは計算から除かれます。

  • 過去3ヶ月間の賃金合計÷過去3ヶ月間の日数
  • (過去3ヶ月間の賃金合計÷過去3ヶ月間の労働日数)×0.6
3.標準報酬日額

標準報酬日額のぶんだけもらえる方法です。ただし、この方法を用いるには会社と労働者で話し合って決める必要があります(労使協定)。
※標準報酬日額とは:標準報酬月額を日割りで算出した金額のこと。
有給休暇でもらうお金も年収に入る?
有給休暇でもらったお金は賃金と一緒なので税金もかかる

有給休暇とは、所定の休日以外で、賃金の支払いを受けて仕事を休める日のことです。つまり、有給休暇でもらえるお金は賃金と一緒であり、給与収入として年収(総支給額)に含まれます。
※つまり、有給休暇は給与所得になります。

したがって、有給休暇でもらったお金だとしても、税金(所得税と住民税)がかかります。有給休暇でもらえるお金は非課税所得ではないことを覚えておきましょう。

※給与収入は有給を含む金額になります。

※103万円の壁などに注意しているひとは気をつけましょう。
※1年間1月~12月までの給与収入(有休を含む)が103万円以下なら所得税はかかりません。
※給与収入(有休を含む)が103万円を超えれば所得税がかかるし、扶養親族の対象からも外れます。
住民税については合計所得が45万円以下なら0円になります(市区町村によっては42万円や38万円の場合があります)。

では次に、使わなかった有給休暇はいつまで繰り越せるのかについて下記で説明していきます。ずっと有給休暇が無くならないわけではありません。

使ってない有休は2年経つと消滅する?
有給休暇をずっと貯めておくことはできない

有休を使わないとどうなるかというと、与えられた有給休暇を使わなければ2年経つと無くなってしまいます。


したがって、有給休暇をずっと貯めておいて、まとめて有給休暇を取得して数か月のあいだ仕事を休むことはできません。
※有給休暇をとらないと下記の例のように消滅してしまいます。1年経つごとに何日も増えていくわけではありません。


有休を2年使わないとどうなる?
たとえば、2020年10月1日に有給休暇が10日与えれたとします。1日も使わなければ翌年に繰り越され、2021年10月1日に新たに有給休暇が11日与えられます。したがって、2021年10月1日時点で合計21日の有給休暇を持っていることになります。

さらに、そのまま1日も使わなければ翌年に繰り越され、2022年10月1日になると新たに有給休暇が12日与えられますが、2020年にもらった10日分の有給休暇は消滅してしまいます。

※このように、有休には時効があるので計画的に取得するように気をつけましょう。
※参照:厚生労働省年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています

では次に、有給休暇は5日取らないとダメなのかについて下記で説明していきます。全員が対象ではありません。

従業員に有給休暇を5日取得させなきゃダメ?
従業員に有給休暇を5日取得させなきゃダメ?

1年間に有休が10日以上与えられる従業員には最低でも年間5日の有給休暇を取得させることが義務づけられています。


正社員だけでなく、パートやアルバイトだとしても義務の対象になります。


「アルバイトだから有給休暇は与えられない」のようなことはないので安心してください。

有休を5日取得させなければいけない対象者
使用者は以下にあてはまる従業員に年間5日の有給休暇を取得させなければいけません。

▶1年間に有休が10日以上与えられる従業員。
※従業員にはパートやアルバイトも含まれる。
※有休が1年間に10日以上与えられているかわからない方は上記の表で自分に与えられる日数を確認しておきましょう。

※参照:厚生労働省,働き方・休み方改善ポータルサイト年次有給休暇とは

では次に、退職のときに余った有給休暇はどう処理されるのかについて下記で説明していきます。なるべく退職までに使い切るようにしましょう。

退職するときに余った有給休暇はどうなるの?
会社が買い上げるかそのまま退職するか

退職する前に有休を使おうとしたけど、使い切れないで余ってしまうケースもあると思います。

余った有給は「会社が買い上げる」もしくは「そのまま退職」することになります。

有休を使い切れなかったり、時効で有休が消滅してしまうときに会社側の判断で買い取ることは法律違反ではありません。ただし、従業員が会社側に有休を買い取ることを請求することはできません。
※会社が有休を買い取ることは義務ではないため。


また、「有休を使わないなら会社側であらかじめ買い取っておいて、有休を無くす」ような行為は法律違反になってしまうため、会社は有休を買い取ることができません。
※労働基準法第39条。


したがって、上記のような「結果的に有給が余ってしまった」場合は会社側がOKなら有休を買い取ってもらうことは問題ありません。

転職した次の会社では計画的に決められた日数の有休をしっかり取得するように気をつけましょう。


では次に、有給休暇を使いながら転職先で働いてもいいのかについて下記で説明していきます。あまりお勧めしません。

有給休暇を取りながら転職先で働いてもいいの?
問題点がいくつかある?

退職するまでに有休をすべて消化しようと思っているが、そうすると転職先に勤務する日と重なってしまうという方もいると思います。


退職前の勤務先に籍を残しながら有休を消化しつつ、転職先で勤務することは違反ではありません。ですが、下記の複数の問題をクリアしないといけません。

問題1.副業がOKか
まず1つめの問題はダブルワークが禁止されていないかです。退職前の勤務先に籍を残しながら有休を使うとなると、2つの勤務先で働いていることになります。転職先が副業を禁止している場合、それが発覚すると契約違反で転職先から怒られてしまうかもしれません。したがって、転職先が副業を禁止している場合は有休が消化しきれなくてもあきらめることをオススメします。
問題2.社会保険の手続き
2つめの問題は社会保険の手続きです。退職前の勤務先および転職先で社会保険(健康保険と厚生年金)に加入する場合、2つの勤務先に社会保険の保険料を按分してもらうことになるので「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」に必要事項を記入して提出しなければいけません。本人が手続きしなければいけないのでよくわからない人にとっては少し難しいかもしれません。
問題3.雇用保険
3つめの問題は雇用保険の2重加入はできないことです。退職前の勤務先および転職先の両方で雇用保険に加入することは出来ません。したがって、有休を消化しながら転職先で勤務する場合は、退職前の勤務先に雇用保険の資格喪失の手続きをしてもらう、もしくは転職先に雇用保険の加入手続きを待ってもらうことを伝えなければいけません。

上記の問題をクリアできれば有休を取りながら転職先で働くことが出来ますが、手続きが多くて転職先にも色々と伝えなければならないため、あまりオススメできません。

では最後に、有給休暇を断られる場合について下記で説明していきます。状況によっては断られることもあります。

有給休暇が断られて取得できないときもある

有給休暇は雇われて働くひとたちに与えられた権利であり、正社員やアルバイトなど関係なく取得することができます。

ただし、次のように注意しなければいけないこともあります。


有給休暇は請求すれば取得することができますが、場合によっては事業の運営に支障がでるようなときがあります。このとき会社は指定された日を変更する権利が認められています。
※時季変更権

たとえば社員全員が同時に同じ日に「有給休暇をもらいます」と急に申請したら会社の運営に支障がでてしまいます。

このような事態を避けるためにも有給休暇をもらうときは事前に会社に伝えておき、事業の運営に支障が出ないようにしましょう。
※また、使用者側(会社側)もこのような問題が起こらないように、有給休暇の日数の把握・管理をしておかないといけません。会社側が時季変更権を使えるかどうかは、事業の正常な運営を妨げるかどうかで判断されます。
※労働基準法第39条。


どれくらい前に伝えておけばいいかは状況によりますが、必ず有休が欲しい場合はなるべく事前に伝えておきましょう。