国民年金の納付猶予とは?支払いを先送りで0円になるが…?

2024.11.28 更新
お金が無い場合は国民年金の保険料を猶予ゆうよできます。この記事では所得要件や申請方法など、納付猶予とは何かわかりやすく説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶納付猶予と全額免除の違いは?
納付猶予は支払いを先送りにすること。全額免除は支払いが0円になること。意味が違うので間違えないように。
※納付猶予して払わないまま10年を過ぎたぶんは支払うことが出来ません。あとから請求されて徴収されることもありません。納付猶予をして払わないでいるとデメリットがあります(下記で解説)。


▶納付猶予は年収いくらまでできるの?
納付猶予してもらうには前年の所得が67万以下の条件をクリアしないといけない。
※独身で扶養親族等がいない場合。くわしくは下記で説明しています。


▶納付猶予をするとデメリットあるの?
年金の支払いを猶予すると老後の年金が減ってしまうデメリットがあるが、追納すれば減ることは無い。
※くわしくは下記で説明しています。


▶納付猶予もしないで滞納すると?

申請をしないで年金を滞納するとリスクがある。
※くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次
国民年金の納付猶予制度とは?支払いが0円?先送り?

国民年金の納付猶予(のうふゆうよ)とは、50歳未満の方の国民年金保険料を先送りしてその期間の保険料を0円にしてくれる制度です。


たとえば現在無職で収入がなく、保険料が支払えないという方は納付猶予を申請することができます。
※学生の場合は学生納付特例が申請できます。
※全額免除については全額免除制度で説明しています。
※ほかにも半額免除などもあります。くわしくは国民年金の免除制度を参照。


国民年金の保険料はいくら?

国民年金の保険料は1年間で約20万円(月額16,980円/2024年度)です。ですが、納付猶予の申請を行えばその期間の保険料は猶予(先送り)されて0円となります。
ただし、保険料を先送りしているのであり、全額免除されているわけではないことを覚えておきましょう。先送りしたぶんは10年以内ならあとで支払うことができます。

※10年を過ぎたぶんは支払うことが出来ません。あとから請求されて徴収されることもありません。

では次に、納付猶予を申請したときのデメリットについて下記で説明していきます。保険料が先送りされますがデメリットもあります。


デメリットは?老後の年金額が減る?

納付猶予の申請をすればその期間の保険料は先送りされますが、年金を受けとる資格は得られます。


ただし、猶予した期間は年金額には反映されないため、あなたが受けとる年金は減額されます。
全額免除の場合は1/2の減額で済みます。ですが、猶予を申請してあとから保険料を納付しなければ老後の年金は全額減額されます。つまり、納付猶予して払わないままだと老後の年金が減ります。

2年間猶予したらいくら減額される?
そこそこ減る

年金の納付猶予にはデメリットがあります。それは、老後の年金額が減ってしまうことです。
たとえば2年間(24ヶ月ぶん)国民年金保険料の支払いを猶予申請し、猶予したぶんをあとから支払う「追納」をしなかった場合、老後にもらう国民年金(老齢基礎年金)は年間約4万円減額されます。
ただし、追納を行えば老後にもらう国民年金は減額はされません。

※猶予した期間以外(20歳から60歳までのうち38年間)はすべて保険料を支払った場合。ちなみに、40年間すべて保険料を支払った場合には老後にもらえる国民年金(老齢基礎年金)は年間約81万円となります。厚生年金に加入していた期間があれば受けとる年金額はそのぶん増えます。
※年金額は現在の価値で計算したあくまで目安です。

あとから支払う「追納」ができる

納付猶予を受けた期間については10年以内であれば保険料をさかのぼって納める「追納」ができます。

将来受け取る年金額を減らしたくない人は経済的に余裕が出来てから追納をしましょう。

※たとえば2022年4月ぶんは2032年4月末まで。
※10年を過ぎたぶんは支払うことが出来ません。あとから請求されて徴収されることもありません。この場合、上記で説明するように老後の年金が減ってしまいます。
国民年金の未納はリスクがある?


納付猶予の申請をしないで、国民年金の保険料を滞納して「未納」にしておくと「老後の年金」も「障害年金」も「遺族年金」も受け取れません。
※老後の年金を受け取るには10年以上の受給資格期間が必要なため。
※障害年金と遺族年金については保険料納付済期間(免除期間を含む)が3分の2以上必要なため。

※出典:日本年金機構老齢年金

なので、もし保険料を支払うのが経済的にきびしいときは免除制度をかならず利用しましょう。未納にしているリスクについてくわしくは下記の記事で説明しています。

年金を払わないで未納にしているとデメリットがある?

では次に、納付猶予を受けるための条件について下記で説明していきます。所得が少ない人はチェックしておきましょう。

納付猶予制度を受けるには条件がある?

納付猶予を受けるには条件があります。かんたんに説明すると、あまりお金を稼いでいないことが条件です。


条件についてくわしくは以下のとおりです。

【納付猶予の条件】

▶50歳未満であること。
▶本人の前年1年間の所得が67万円以下(給与収入なら年間122万円)であること。
※独身で扶養親族等がいない場合。
※厳密には(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円以下。
※配偶者がいる場合には配偶者の所得も判定。
※参照:日本年金機構納付猶予制度

前年1年間の所得が67万以下とは?

たとえばアルバイトをしており、去年1年間(1月~12月まで)の給料が年間122万以下なら給与所得は67万円以下となるので、国民年金の納付猶予を受けることができます。
※独身で扶養親族等がいない場合。配偶者がいる場合には配偶者の所得も条件を満たす必要があります。くわしい内容はこちらの審査表を参照。

122万円給与収入55万円給与所得控除 = 67万円給与所得
※給与所得控除については給与所得控除とは?を参照。
こちらのシミュレーションで給与所得の計算ができます。
※ほかにも所得がある場合は合計した所得の金額で審査されます。

以上のように、前年1年間(1月~12月まで)の所得が67万円以下なら納付猶予の申請が認められます。
※ほかにも半額免除などもあります。くわしくは国民年金の免除制度を参照。

では次に、納付猶予を申請するときの書類の書き方について下記で説明していきます。内容は難しくありません。

申請書が必要?書き方は?申請が認められたら?

納付猶予を受けるには申請をしなければいけません。何もしないで年金の保険料が先送りされるわけではありません。

納付猶予の申請の手続きを行い、申請が認められれば国民年金保険料は0円になります。

申請はお住まいの市区町村役所や年金事務所にて受け付けています。
※下記で説明するようにネットで申請も可能です。

年金免除・納付猶予の申請書の様式

※免除申請をしたのに納付書が届く場合があります。申請の結果は、申請してから約2~3か月後に通知ハガキでお知らせがきます。したがって、行き違いになっているだけなので安心してください。
納付猶予が承認された場合は納付書を破棄してください。免除申請の結果が届くまでは保険料は納付せずに納付書を保管しておいてください。

※参照:日本年金機構国民年金保険料の免除を受けたいとき

納付猶予の申請書の書き方は?

本人や世帯主の氏名、希望する免除区分、扶養親族などを記入して提出することになります。
くわしい申請書の書き方は下記のページで説明しています。

国民年金の免除・納付猶予申請書の書き方

電子申請なら申請書を書く必要なし
マイナンバーカードがあれば役所に行かなくてもマイナポータルから納付猶予の電子申請ができます。その際にマイナンバーカードのパスワード等の入力が必要になります。申請書を提出しなくていいのでオススメです。スマホでかんたんにできます。
※日本年金機構電子申請(マイナポータル)


国保の保険料も安くなる?

国民健康保険に加入しているひとは前年1年間の所得が少なければ保険料が減額されます。

たとえば、1人暮らしの独身で所得が少ない場合、保険料は最大7割減額されます。
※7割減額された場合、1年間の保険料は約1.5~2.5万円になります(市区町村によって変わります)。

保険料の減額については下記の記事で説明しているので気になる方はチェックしておきましょう。

無職の場合の国民健康保険料はどれくらい?所得が少ないと安くなる?

納付猶予まとめ


▶国民年金の納付猶予ってなにをしてくれるの?
納付猶予制度は保険料を先送りしてその期間の保険料を0円にしてくれる。


▶どうすれば納付猶予が受けられるの?
納付猶予を受けるには50歳未満であり、去年1年間の所得が67万円以下である必要がある
※くわしくは上記で説明しています。


▶手続きは必要?
猶予を受けるには申請が必要
※くわしくは上記で説明しています。


▶納付猶予を受けるとデメリットはあるの?
納付猶予を受けた期間が長いほど老後の年金が減ってしまう。ただし、追納をすれば老後の年金は減らない
※くわしくは上記で説明しています。

現在お金が無くて保険料が支払えない方はかならず申請しましょう。申請しないでそのまま支払いを無視するのはデメリットしかないのでやめましょう。
※免除・猶予制度についてくわしくは国民年金の免除制度を参照。
※おすすめ記事:年収100万~600万の国民健康保険料はいくら?