住民税非課税世帯の親を扶養したときの影響は?

2024.04.22 更新

住民税非課税世帯の親を扶養したとき、税金や保険料にどのような影響があるのか。この記事では住民税非課税世帯の親を扶養したとき損するのか得するのかについて説明していきます。保険料がいくら増えるのか等説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶親の介護保険料は増える?
親が65歳以上なら介護保険料が数万円ほど上がる場合がある。
※別居または世帯分離している場合を除く。
※くわしくは下記で説明しています。


▶親が国保の場合、保険料は増える?
あなたが世帯主であるとき、または、あなたが国民健康保険に加入している場合、親と同居して扶養すると親の保険料が上がる。
※くわしくは下記で説明しています。


▶社会保険の扶養に入れたら?
親が75未満なら、親の健康保険料は0円になる。
※くわしくは下記で説明しています。

親を扶養したときの税金についてはこちら↓
親を扶養に入れるといくら節税できる?扶養控除で5万安くなる?


この記事の目次
住民税非課税世帯の親を扶養したときの影響は?
住民税非課税世帯の親を扶養するときは注意

親を扶養すれば税金が安くなるメリットを受けられます。また、社会保険の扶養にすれば保険料も安くなります。

しかし、親が住民税非課税世帯だったときはどのような影響があるのか。

あなたが住民税非課税世帯の親を扶養したとき、または、今まで住民税非課税世帯だったが自分が稼ぐようになり、親を扶養するようになった場合の影響についてチェックしておきましょう。

親を扶養すれば税金が安くなる?

親の収入が少なく、扶養親族にあてはまれば「扶養控除」が利用できるので税金が安くなるメリットを受けられます。

ただし、デメリットを受ける場合もあるので、扶養する際はライフスタイルと照らし合わせて検討しましょう。

親を扶養したときの税金についてはこちら↓
親を扶養に入れるといくら節税できる?扶養控除で5万安くなる?

チェックポイント


▶親の扶養とデメリット
介護保険や国保の保険料が増えることがある。


▶社会保険の扶養
親が75歳未満なら、親の健康保険料が0円になる


▶ほかにデメリットがある?
親を扶養することで、住民税非課税世帯じゃなくなれば介護サービスの負担が増えたりする。
※介護サービスを利用している場合は注意
※別居または世帯分離している場合を除く。

それでは下記でデメリット等について説明していきます。


現在、物価高騰の影響等で住民税非課税世帯などには現金(3万~10万円)が支給されています。
しかし、親の世帯が非課税世帯だとしても、別世帯の親族に扶養されている場合は給付金の対象外になることがあります。くわしくはお住まいの市区町村HPで確認することをおすすめします。

※住民税が課税されている者の扶養親族等のみからなる世帯(たとえば会社員の息子に扶養されている「別居の両親の世帯」など)には、給付金は支給されないことがあります。


親の介護保険料が上がる?
65歳以上の介護保険料が高くなる場合がある

親が65歳以上の場合、親が支払う介護保険料は世帯収入によって増減する場合があります。


たとえば住民税非課税世帯だった場合、親の介護保険料は月額約3,000円(年間約36,000円)になります。
※介護保険料は住んでいる市区町村によって異なります。

ですが、親と同居して扶養したことで、住民税非課税世帯でなくなった場合には親の介護保険料は月額約6,000円(年間約72,000円)になります。
※ただし、別居または世帯分離をしている親と生計を一にして扶養したとしても、同世帯でなければ介護保険料は安いままになります。


ちなみに、親が65歳未満の場合、介護保険料は医療保険料に含まれるので、下記の項目の「国民健康保険料が上がる?」と「社会保険の扶養に入ればセーフ?」をチェックしておきましょう。

親が支払う介護保険料のシミュレーション

あなたの親の年金収入が80万円以下の場合
あなたの親が支払う介護保険料は月額約1,800円(年間約22,000円)になります。
あなたの親の年金収入が80万円超120万円以下の場合
あなたの親が支払う介護保険料は月額約3,000円(年間約36,000円)になります。
親と同世帯であり、あなたの親の年金収入が80万円超えの場合
あなたの親が支払う介護保険料は月額約6,000円(年間約72,000円)になります。
※あなた(親を扶養するひと)が住民税を課税されている場合。

※介護保険料は市区町村によって異なります。保険料の計算方法については65歳以上の介護保険料はどれくらい?世帯の収入によって変わる?で説明しています。

では次に、親が国保に加入している場合は親の保険料が増えてしまうのかについて下記で説明していきます。国保のひとはチェックしておきましょう。

国民健康保険料が上がる?
国保の減額対象から外れることがある

あなたが国民健康保険に加入している場合、親と同居して扶養すると親の保険料が上がる可能性があります。
※親も国民健康保険に加入している場合。
※別居または世帯分離している場合は保険料は上がりません。



なぜかというと、住民税非課税世帯じゃなくなることによって、減額の割合が下がるまたは減額の対象から外れてしまうからです。
※国民健康保険は世帯主と被保険者の所得が少なければ保険料が減額されます。


具体的には、親の保険料は1人あたり3万円~4万円くらい増える場合が多いでしょう。

どれくらい増えるかの計算例
たとえば同居する前の母親が住民税非課税世帯であり、1年間の国民健康保険料が約2万円とすると、住民税非課税世帯じゃなくなることで親の保険料は約6万円になります。

なぜかというと、同居する前は保険料が7割減額されていたところ、あなた(国保加入者)と同居することで減額対象から外れてしまうので、減額適用無しの保険料になってしまうからです。

※親が65歳未満の場合は4万~6万くらい増える場合が多いです。
※あなたの所得も少なく、住民税非課税である場合は親の保険料は増えません。
※金額は市区町村によって変わります。
世帯分離している場合は保険料は上がりません。
※国保の減額割合についてはこちら↓

国保の保険料の減額条件について解説

では次に、親を社会保険の扶養にした場合について下記で説明していきます。会社員などの方はチェックしておきましょう。

社会保険の扶養に入れば保険料は増えない?
親が75歳未満なら社会保険の扶養に入れたほうがいい

あなたが勤務先の社会保険に加入しているなら、社会保険の扶養を利用することができます
※ここでいう社会保険とは、健康保険または共済組合のこと。

あなたの親を社会保険の扶養に入れれば親の健康保険料は0円になります。

▶注意ポイント:介護保険料が上乗せされる?
親が40歳~64歳の場合、注意するポイントがあります。

それは、加入している保険組合によってはあなたが40歳未満でも社会保険料に親の介護保険料が上乗せされる場合があります。
※これを特定被保険者制度といいます。
親を扶養に入れようと考えている方は自分が加入している保険組合についてしっかり調べておきましょう。

※参照:日本年金機構

また、社会保険の扶養に入れることができるのは親が75歳になるまでです。75歳になれば後期高齢者医療制度に移行するので、社会保険の扶養から抜けないといけません。

では次に、親が75歳以上の場合は保険料が増えるのかについて下記で説明していきます。親が高齢の方はチェックしておきましょう。

親が75歳以上だと後期高齢者医療制度が上がる?
あなたが世帯主になると保険料が増える

あなたが親と同居して扶養すると親の保険料(後期高齢者医療制度の金額)が上がる可能性があります。
※親が75歳以上の場合。
※別居または世帯分離している場合は保険料は上がりません。


具体的には、親の保険料は1人あたり3万円~4万円くらい増える場合が多いでしょう。
※たとえば同居する前の母親の後期高齢者医療制度の保険料が1年間で約1.5万円とすると、住民税非課税世帯じゃなくなることで親の保険料は約5万円になります。
※金額は都道府県によって変わります。



なぜかというと、減額の割合が下がるまたは減額の対象から外れてしまうからです。

※※ただし、あなたがこれから親と同居して同世帯になっても、あなたが世帯主でなければ親の保険料(後期高齢者医療制度の金額)は増えません(下記の計算例で解説)。
※後期高齢者医療制度は世帯主と被保険者の所得が少なければ保険料が減額されます。
年収400万で親を扶養する場合

【あなたの条件↓】
40歳以上,独身,子供は0人,勤務先の社会保険に加入
父親または母親1人を扶養。
親と同居(同世帯)。

【親の条件↓】
世帯主は親,収入が年金のみで120万以下。
75歳以上としてシミュレーション。

▶税金はいくら安くなる?
親を扶養することであなたの税金は約7.4万円安くなります。
※親が70歳以上なので同居老親等に該当する。
※親が障害を持っている場合はさらに約4万円安くなります。
区分が特別障害の場合はもっと安くなります。



▶保険料はいくら増える?
親が世帯主なので、後期高齢者医療制度の保険料は増えない。
後期高齢者医療制度は世帯主と被保険者の所得が少なければ保険料が減額されます。親が世帯主なので、被保険者も親1人だけなので、保険料は減額されます。

介護保険料は約3.6万増えてしまいます(理由は上記)。

※介護保険料は市区町村によって変わります。
※別居または世帯分離している場合は増えません。

※金額は税金保険料シミュレーションで計算。

では次に、親を扶養したときの税金や保険料がどれくらい変わるかについて下記で説明していきます。親を扶養しようとしている方はチェックしておきましょう。

扶養しても損しない?シミュレーション

親を扶養すると税金が安くなるメリットがありますが、場合によっては保険料が増えるほうが上回ってしまいます。

下記でシミュレーションしているので参考にしてみてください。

年収250万で親を扶養する場合

【あなたの条件↓】
40歳以上,独身,子供は0人,勤務先の社会保険に加入
父親または母親1人を扶養。
親と同居(同世帯)。

【親の条件↓】
収入が年金のみで120万以下。
65歳以上~70歳未満としてシミュレーションしています。

▶税金はいくら安くなる?
親を扶養することであなたの税金は約5.2万円安くなります。
※親が障害を持っている場合はさらに約4万円安くなります。
区分が特別障害の場合はもっと安くなります。



▶保険料はいくら増える?
親はあなたの社会保険の扶養に入ることができるので、親の健康保険料は0円になります(理由は上記)。
住民税非課税世帯じゃなくなるので、介護保険料は約3.6万増えてしまいます(理由は上記)。

※介護保険料は市区町村によって変わります。

※金額は税金保険料シミュレーションで計算。




年収300万~400万で親を扶養する場合①

【あなたの条件↓】
40歳以上,独身,子供は0人,勤務先の社会保険に加入
父親または母親1人を扶養。
親と同居。

【親の条件↓】
収入が年金のみで120万以下。
70歳~74歳としてシミュレーションしています。

▶税金はいくら安くなる?
親を扶養することであなたの税金は約7.4万円安くなります。
※親が70歳以上なので同居老親等に該当する。
※親が障害を持っている場合はさらに約4万円安くなります。
区分が特別障害の場合はもっと安くなります。



▶保険料はいくら増える?
親はあなたの社会保険の扶養に入ることができるので、親の健康保険料は0円になります(理由は上記)。
住民税非課税世帯じゃなくなるので、介護保険料は約3.6万増えてしまいます(理由は上記)。

※介護保険料は市区町村によって変わります。

※金額は税金保険料シミュレーションで計算。




年収300万~400万で親を扶養する場合②

【あなたの条件↓】
40歳未満,独身,子供は0人,勤務先の社会保険に加入
父親または母親1人を扶養。
親と同居(同世帯)。

【親の条件↓】
収入が年金のみで120万以下。
65歳未満としてシミュレーションしています。

▶税金はいくら安くなる?
親を扶養することであなたの税金は約5.2万円安くなります。
※親が障害を持っている場合はさらに約4万円安くなります。
区分が特別障害の場合はもっと安くなります。



▶保険料はいくら増える?
親はあなたの社会保険の扶養に入ることができるので、親の健康保険料は0円になります(理由は上記)。
また、親の介護保険料も0円になります。ただし、下記のように上乗せされることもあります。

▼注意ポイント:介護保険料が上乗せされる?


加入している保険組合によっては、あなたが40歳未満でも社会保険料に親の介護保険料が上乗せされる場合があります。
※40歳~64歳の親を扶養している場合(特定被保険者制度)。
親を扶養に入れようと考えている方は自分が加入している保険組合についてしっかり調べておきましょう。

※参照:日本年金機構

※金額は税金保険料シミュレーションで計算。

では次に、親が介護サービスを受けている場合のポイントについて下記で説明していきます。デメリットに注意しないといけません。

デメリットは?(介護サービスを受けている方)
介護サービスの費用が増えてしまう

親が介護サービスを利用している場合、親と同居して住民税非課税世帯じゃなくなると、介護サービスの費用が増えてしまいます。

たとえば、養護老人ホームなどの福祉施設に入居したときには食費や居住費が増えてしまいます。


くわしくは下記の記事で説明していますが、多くの場合は4万円以上増えてしまうでしょう。
※ただし、別居または世帯分離をしている親と生計を一にして扶養したとしても、同世帯でなければ負担額は安いままになります。

親を扶養したときのデメリットはこちら↓
親を扶養に入れるとデメリットが3つある?介護保険料が上がる?

ここまで説明したように、住民税非課税世帯だった親を扶養するときは保険料が増えたりすることがあります。

親を扶養することであなたの税金は安くなりますが、ひとによっては保険料の増額のほうが上回ってしまう場合があることを覚えておきましょう。

とはいえ、親と同居しないといけない状況にあるなら、メリットやデメリットについては深く考える必要はありません。親を扶養したときに「扶養控除」の申請を忘れないようにすればOKです。