年金155万~205万の壁や年金211万の壁などを解説

2025.07.01 更新
1年間にもらう年金額によっては税金が課税されたり、扶養の対象から外れたりします。この記事では年金受給者の148万~155万の壁、168万の壁、180万の壁、205万の壁、211万の壁、223万の壁についてわかりやすく説明していきます。

年金の壁まとめ


▶年金155万の壁とは?
年金155万の壁とは住民税がかかりはじめるボーダーラインのこと。
※くわしくは下記で説明しています。


▶年金168万の壁とは?
年金168万の壁とは扶養親族でいられるボーダーラインのこと。そして、同一生計配偶者でいられるボーダーラインのこと。
※くわしくは下記で説明しています。


▶年金180万の壁とは?
年金180万の壁とは、社会保険の扶養を外れるボーダーラインのこと。年収180万円以上になると社会保険の扶養から外れる。扶養を抜ければ自分で保険料を支払うことになる。
※くわしくは下記で説明しています。


▶年金205万の壁とは?
年金205万の壁とは、所得税がかかるボーダーラインのこと。そして配偶者の税金が増えはじめるボーダーラインのこと。
※くわしくは下記で説明しています。


▶年金211万の壁とは?
年金211万の壁とは、住民税がかかりはじめるボーダーラインのこと。ただし、配偶者や親族を扶養していることが条件。
※くわしくは下記で説明しています。


▶年金243万の壁とは?
年金243万の壁とは、配偶者特別控除の対象外になるボーダーラインのこと。年金収入が243万円を超えたら「配偶者特別控除」の対象外になるため、配偶者の税金が安くならない。
※くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次
年金155万の壁とは?
住民税がかかり始めるボーダーライン

年金155万の壁とは、住民税がかかるボーダーラインのことをいいます。


たとえば、東京23区にお住まいの方は年金収入が1年間(1月~12月まで)に155万円以下なら住民税が0円になります。
※65歳以上で収入が公的年金等のみである場合。65歳未満の場合は105万以下なら住民税が0円。
※オススメ記事:年金はいくらから税金がかかる?
年金と給与収入があるひとで住民税が非課税になるとき


町によっては155万じゃダメ?

お住まいの地域によっては148万円や152万円を超えると住民税がかかり始める場合があります。

これは市区町村によって住民税が0円になる条件が異なるからです。ややこしいですが、自分の市区町村HPで確認することをオススメします。

※くわしくは下記の記事で説明しています。
住民税が0円になる場合【年金収入のみ】


年金168万の壁とは?
168万円の壁は扶養から外れるライン

年金受給者の年収168万の壁とは、親族の税金が増えてしまうボーダーラインのことです。
※65歳以上で収入が公的年金等のみである場合。65歳未満の場合は105万以下なら住民税が0円。
※オススメ記事:年金はいくらから税金がかかる?
年金と給与収入があるひとで住民税が非課税になるとき



かんたんに説明すると、1年間(1月~12月まで)の年金収入が168万円を超えると扶養親族の対象から外れるため、あなたの親族(子供など)が支払う税金が高くなってしまいます。
※親族(たとえばあなたの子供など)に扶養されている場合。

年収168万円の壁
家族の税金が増える

▶親族の税金の負担が増すボーダーライン
あなたの1年間(1月~12月まで)の年金収入が168万円を超えると、扶養親族の対象から外れてしまいます。
すると、あなたのことを扶養している親族が扶養控除を利用できなくなります。
扶養控除とは「養う親族がいると税金が安くなる」という制度であり、この制度を利用できなくなることによって親族の税金の負担が増えてしまいます。

※あなたが親族に扶養されていない場合は関係ありません。

ちなみに、あなたの親族(たとえば子供)の年収が250万円~850万円だとすると、支払う税金が年間約5~16万円高くなります。
※くわしくは下記の記事で説明しています。

親を扶養に入れるといくら節税できる?

同一生計配偶者じゃなくなる

▶168万を超えると同一生計配偶者の対象外
あなたが配偶者に扶養されている場合、あなたの1年間(1月~12月まで)の年金収入が168万円を超えると、同一生計配偶者の対象から外れてしまいます。
同一生計配偶者は下記で説明する年金211万の壁と関係しているのでチェックしておくことをオススメします。

※同一生計配偶者じゃなくなると年金211万の壁が無くなります。
※くわしくは下記の「211万の壁」で説明しています。


年金180万の壁とは?
180万円の壁は社会保険の扶養から外れるライン

年金受給者の年収180万の壁とは社会保険(健康保険)の扶養から外れるボーダーラインのことです。


たとえば1年間(1月~12月まで)の収入が180万以上になる見込みがある場合、親族(たとえばあなたの子供)の健康保険の扶養に入っている方は強制的に扶養から外され、自分で保険料を支払うことになります。
※たとえば月収約15万円が数か月続くと年収180万円以上になると判定され、健康保険の扶養から外される場合があります。

年収180万の壁は大事なポイント?

年収180万円以上になる見込みがある場合、社会保険の扶養になることができなくなります※。
※あなたを扶養する親族が「勤務先の社会保険」に加入している場合に限ります。

社会保険(健康保険)の扶養に入っているときはあなた自身が支払う健康保険料は0円になります。ですが、健康保険の扶養から外れてしまえば、自分で保険料を支払わなければなりません。

たとえばあなたの年収が180万円だとすると、1年間に支払う国民健康保険料は約9.2万円になります。

※65才未満の場合は約16.2万円。保険料は市区町村によって変わります。


年金205万の壁とは?
205万円の壁は所得税がかかるボーダーライン

年金205万の壁とは、所得税が課税されるボーダーラインのことです。
※2025年の税制改正で、基礎控除額が最大95万円に引き上げされたことで新しく出現した壁です。
※2024年の税制では158万がボーダーラインでした。



かんたんに説明すると、1年間(1月~12月まで)の年金収入が205万円を超えると所得税がかかり始めることになります。

年金205万の壁

▶所得税がかかるボーダーライン
あなたの1年間(1月~12月まで)の年金収入が205万円を超えると所得税がかかることになります。つまり、205万円以下なら所得税は0円になります。

※65歳以上で収入が公的年金等のみで、社会保険料控除を0円とした場合。65歳未満の場合は約163万以下なら所得税が0円。
※なぜ205万円なのかについてはこちらの計算過程を参照。

配偶者の税金が増え始めるライン

205万の壁は、配偶者の税金の負担が増えるボーダーラインでもあります。


1年間の年金収入が205万円(合計所得95万円)を超えると徐々に配偶者の負担が増していきます。なぜかというと、配偶者特別控除の控除額が合計所得が増えることで減額していくためです(合計所得95万円を超えて以降減額していく)。
※65歳以上で収入が公的年金等のみとした場合。
※年金のほかに収入がある場合の合計所得は公的年金以外の所得とは?を参照。

合計所得でいくら変わる?
たとえば夫が妻を扶養している場合、妻の合計所得が95万以下であれば夫の税金は約5万円安くなります。
※夫の年金収入を250万とした場合。

妻の合計所得が95万円を超えれば、安くなる効果が少しずつ弱くなっていきます。年収によってどれくらい夫の税金が安くなるのかについては下記の記事でシミュレーションしています。

年金受給者の妻を扶養に入れるには?配偶者控除と社会保険


年金211万の壁は住民税0円の壁?
家族を扶養している場合住民税が0円になる収入のボーダーライン

年金211万の壁とは、住民税が0円になるボーダーラインのことをいいます。

あなたが65歳以上で配偶者がおり、あなたの去年1年間(1月~12月まで)の年金収入が211万以下なら、今年度の住民税が非課税(0円)になります。

ただし、配偶者が同一生計配偶者でないといけません。
※老齢年金が211万で単身であれば住民税は約6万円になります(支払った社会保険料を0円とした場合)。年金税金シミュレーションで計算。

同一生計配偶者じゃないとダメ?

年金収入211万以下で住民税を0円にしたければ、配偶者が同一生計配偶者でないといけません。

同一生計配偶者とは、合計所得が58万以下の配偶者のことです。
※同一生計配偶者についてくわしくは同一生計配偶者とはを参照。

なぜかというと、住民税が0円になる条件に同一生計配偶者が含まれるためです。条件は次のとおりです。

▶住民税が0円になる条件は↓のとおり

住民税が0円になるには、前年1月~12月までの合計所得金額が(本人+同一生計配偶者扶養親族数)× 35万円 + 31万円以下であること。
※参照:東京都主税局個人住民税

※ただし、市区町村によっては年金収入が211万だと住民税が0円にならない場合があります(住民税が0円になる条件が上記の金額より低いことがあるため)。くわしくは↓の記事で解説。

計算過程などについては↓の記事で解説しています。
同一生計配偶者211万で住民税が0円になる場合をシミュレーション
年金のほかにも所得がある場合は?

年金のほかに給与所得や公的年金以外の所得(個人年金などの雑所得)がある場合、上記で説明した「年収の壁」ではなくなり、話が変わってきます。

ほかに所得がある場合は、年収ではなくて2つの合計所得でボーダーラインを考えなければいけません。
※年収180万円の壁については収入の合計で考えてください。

くわしくは下記のリンク先記事で説明しているので気になる方はチェックしておきましょう。

合計所得について
※年金のほかに収入がある場合の合計所得は公的年金以外の所得とは?を参照。


年金243万の壁とは?
年金243万円の壁とは、配偶者特別控除が利用できなくなるライン

年金243万の壁とは、配偶者特別控除が無くなるボーダーラインのことです。


上記の205万円の壁でも説明しましたが、1年間の年金収入が205万円を超えると徐々に配偶者特別控除が減額していき、配偶者の税金の負担が増していきます(たとえば夫が妻を扶養しているなら、夫の税金が増えます)。
※年金収入とは公的年金等のこと。
※65歳以上の場合。



さらに、1年間の年金収入が243万円を超えると配偶者特別控除の対象外となるので、夫は控除の恩恵を受けられなくなります。


したがって、妻の年金収入が243万円を超えると夫は配偶者特別控除が受けられないため、夫が支払う税金は安くならないということです。

といっても、配偶者特別控除が受けられなくなったとしても損するわけではないので、あまり気にする必要はありません。
※夫の税金の増加よりも、妻の手取り金額のほうが上回るので損することはありません。

※たとえば妻の1年間の年金収入が205万円超え~210万円だとすると、夫の税金は年間1,000円増えることになります。したがって、「税金の増加額」よりも「受け取る年金額」のほうが上回るので損することはありません。
※夫の年金収入を250万とした場合。
※妻の年金収入が205万以下であれば夫の税金は増えません。

年収には税金や扶養が関係してくるボーダーラインがあるので、ギリギリ課税されそうな年収のひとは注目しておきましょう。

また、年金をもらいながら働く場合、中途半端に稼ぐと手取りが減って逆に損してしまう可能性があるので自分の収入をどれくらいにするかしっかり把握しておくことをオススメします。
年金受給者の夫婦で妻がパートをするなら収入いくらまでがいい?