老後の年金をもらっている妻(または夫)を扶養に入れる場合、収入に気をつけなければいけません。
妻の年金収入が多ければ扶養の対象から外れてしまいます。
また、扶養に入れるには申請が必要になります。ここでは税法上の扶養(配偶者控除)と社会保険の扶養で分けて説明していきます。
では最初に、妻を社会保険の扶養に入れる場合について下記で説明していきます。
あなたが勤務先の社会保険に入っており、その社会保険の扶養に配偶者を入れるつもりの方は1年間の収入に気をつけなければいけません。
条件を簡単に説明すると、たとえば妻が社会保険の扶養に入る場合、妻の1年間の収入が180万円未満でなければいけません。
※配偶者が60歳以上の場合(60歳未満は130万円未満)。
妻の1年間の収入が180万円を超える見込みがある場合は、社会保険の扶養に入ることはできません。
※75歳以上の方は対象外です。
そのほかくわしい条件は下記の記事を参照。
社会保険の扶養とは?保険料が0円になる?収入などの条件は?
国民健康保険には扶養のシステムがありません。したがって、あなたが国民健康保険に加入している場合は、配偶者(妻)も通常通り国民健康保険料を支払うことになります。
※国民健康保険については国民健康保険とは?を参照。
※国保の保険料はこちらのページでシミュレーションできます。
では次に、年金収入がいくらまでなら配偶者控除を受けられるかについて下記で説明していきます。
あなたの妻の収入が多くなければ、配偶者控除の対象になり、あなたの税金が安くなります。
具体的には、妻の1年間の合計所得金額が133万円以下ならあなたの税金が安くなります。
合計所得133万円ってなに?という方のために、下記でわかりやすくシミュレーションしているので見ていきましょう。
例えばあなたの妻が65歳以上であり、1年間(1月~12月まで)の収入が年金収入243万円でそれ以外に収入が無い場合、妻の年金についての所得は、
となります。ほかに所得が無いので、あなたの妻の合計所得金額は、
となります。この場合、あなたの妻の1年間(1月~12月まで)の合計所得は133万円以下なので、妻は配偶者特別控除の対象になります。
例えばあなたの妻が65歳以上であり、1年間(1月~12月まで)の収入が年金収入150万円、アルバイト収入が100万円のとき。
まず、あなたの妻の年金についての所得は、
となります。次に、アルバイトについての所得(給与所得)は、
となります。したがって、あなたの合計所得金額は、
となります。この場合、あなたの妻の1年間(1月~12月まで)の合計所得は95万円以下なので、妻は配偶者特別控除の対象になります。
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年金をもらいながら働いて給料も貰っている人は確定申告は必要?
では次に、妻の所得が95万円を超えると税金が安くなる効果が弱くなることについて下記で説明していきます。
妻を扶養したときに、どれくらい税金が安くなるのか年収別にシミュレーションした結果が以下のとおりです。
年収にもよりますが、配偶者(特別)控除を利用すると税金の負担は年間約5~11万円ほど軽くなる場合が多いでしょう。
※妻の方が収入が多ければ、妻が控除を利用することになります。
ただし、配偶者の1年間(1月~12月まで)の合計所得が95万円を超えると、税金が安くなる効果が少しずつ無くなっていきます。
※合計所得95万円とは、年金収入だけなら205万円(65歳未満の場合は、約156万円)。パート収入もある場合については上記で説明しています。
※年金についての所得はこちらで計算できます。
妻の合計所得 | 夫の年金収入250~350万円のとき | 夫の年金収入450~500万円のとき | 夫の年金収入600万円のとき |
---|---|---|---|
95万円以下 ※65歳以上で年金だけなら年収205万円以下 |
税金は約52,000円安くなります。 所得税19,000円 住民税33,000円 |
税金は約71,000円安くなります。 所得税38,000円 住民税33,000円 |
税金は約109,000円安くなります。 所得税76,000円 住民税33,000円 |
100万円以下 ※65歳以上で年金だけなら年収210万円以下 |
税金は約51,000円安くなります。 所得税18,000円 住民税33,000円 |
税金は約69,000円安くなります。 所得税36,000円 住民税33,000円 |
税金は約105,000円安くなります。 所得税72,000円 住民税33,000円 |
105万円以下 ※65歳以上で年金だけなら年収215万円以下 |
税金は約47,000円安くなります。 所得税15,500円 住民税31,000円 |
税金は約62,000円安くなります。 所得税31,000円 住民税31,000円 |
税金は約93,000円安くなります。 所得税62,000円 住民税31,000円 |
110万円以下 ※65歳以上で年金だけなら年収220万円以下 |
税金は約39,000円安くなります。 所得税13,000円 住民税26,000円 |
税金は約52,000円安くなります。 所得税26,000円 住民税26,000円 |
税金は約78,000円安くなります。 所得税52,000円 住民税26,000円 |
115万円以下 ※65歳以上で年金だけなら年収225万円以下 |
税金は約32,000円安くなります。 所得税10,500円 住民税21,000円 |
税金は約42,000円安くなります。 所得税21,000円 住民税21,000円 |
税金は約63,000円安くなります。 所得税42,000円 住民税21,000円 |
120万円以下 ※65歳以上で年金だけなら年収230万円以下 |
税金は約24,000円安くなります。 所得税8,000円 住民税16,000円 |
税金は約32,000円安くなります。 所得税16,000円 住民税16,000円 |
税金は約48,000円安くなります。 所得税32,000円 住民税16,000円 |
125万円以下 ※65歳以上で年金だけなら年収235万円以下 |
税金は約17,000円安くなります。 所得税5,500円 住民税11,000円 |
税金は約22,000円安くなります。 所得税11,000円 住民税11,000円 |
税金は約33,000円安くなります。 所得税22,000円 住民税11,000円 |
130万円以下 ※65歳以上で年金だけなら年収240万円以下 |
税金は約9,000円安くなります。 所得税3,000円 住民税6,000円 |
税金は約12,000円安くなります。 所得税6,000円 住民税6,000円 |
税金は約18,000円安くなります。 所得税12,000円 住民税6,000円 |
133万円以下 ※65歳以上で年金だけなら年収243万円以下 |
税金は約5,000円安くなります。 所得税1,500円 住民税3,000円 |
税金は約6,000円安くなります。 所得税3,000円 住民税3,000円 |
税金は約9,000円安くなります。 所得税6,000円 住民税3,000円 |
133万円超え ※65歳以上で年金だけなら年収243万円超え |
税金は0円安くなります。 所得税0円 住民税0円 |
税金は0円安くなります。 所得税0円 住民税0円 |
税金は0円安くなります。 所得税0円 住民税0円 |
※税金はこちらのシミュレーションで計算しています。
※1年間に支払った社会保険料は0円としています。
合計所得133万円を超えると控除の対象外
上記の表を見てわかるように、配偶者(ここでは妻)の合計所得が95万円(給料のみで年収150万円)を超えると、税金が安くなる効果が少しずつ無くなっていきます。そして、妻の合計所得が133万円を超えると配偶者特別控除の対象外になることを覚えておきましょう。
では次に、妻が70歳以上の場合について下記で説明していきます。控除額が増えることを覚えておきましょう。
あなたの妻が70歳以上なら、老人控除対象配偶者の対象になり、あなたの税金がさらに安くなります。
※配偶者控除の金額が10万円増えます。
※くわしい控除額はこちらで説明しています。
ただし、妻の1年間の合計所得金額が48万円を超えると対象外となります。
合計所得48万円ってなに?という方のために、下記でわかりやすくシミュレーションしているので見ていきましょう。
例えばあなたの妻が70歳以上であり、1年間(1月~12月まで)の収入が年金収入158万円でそれ以外に収入が無い場合、妻の年金についての所得は、
となります。ほかに所得が無いので、あなたの妻の合計所得金額は、
となります。この場合、あなたの妻の1年間(1月~12月まで)の合計所得は48万円以下であり、妻の年齢が70歳以上なので老人控除対象配偶者になります。
では次に、配偶者控除の申請方法について下記で説明していきます。申請しなければ控除を利用することは出来ません。
配偶者控除を利用するには、扶養親族等申告書または確定申告で申請する必要があります。
※扶養親族等申告書とは、9月~11月頃に日本年金機構から送られてくる申告書のこと。
申請をしないと税金が安くならないので気をつけましょう。
あなたが65歳以上で年金を158万円以上(65歳未満の方は108万円以上)受け取っている場合、日本年金機構から「扶養親族等申告書」が送られてきます。
送られてくる「扶養親族等申告書」に配偶者の氏名等を記入して、提出しましょう。申告書の記入例については下記のページで説明しています。
※配偶者の合計所得が95万円超え~133万円以下の場合または提出する方の合計所得が900万円超え~1,000万円以下の場合、確定申告で申請しなければ配偶者控除が適用されません。
あなたが年金以外の所得(給与所得など)をもらっている場合、確定申告をして申請することになります。
確定申告で申請する場合は、申告書の作成時に「配偶者控除・配偶者特別控除」の項目を選択して入力すればOKです。
確定申告書の手順や記入例については下記のページで説明しています。
収入が年金だけの方の確定申告
※下記は確定申告書の作成ページの一例です。
では次に、年金と給料をもらっている場合確定申告が必要になることについて下記で説明していきます。
年金は源泉徴収されてから受けとるので、収入が年金のみである方は基本的に確定申告をする必要はありません。
※源泉徴収とは、金額に応じた税金をあらかじめ差し引き、その差し引いた税金を本人のかわりに国に納付する制度。
ただし、下記のいずれかにあてはまる方は確定申告をする必要があります。
したがって、年金をもらいながら働いて給料をもらっているひとは自分が確定申告が必要かどうかしっかりチェックしておきましょう。
※下記にあてはまる場合は、確定申告で配偶者控除の申請を忘れずにしましょう。
※参照:国税庁確定申告が必要な方
※上記にあてはまらなくても、源泉徴収によって税金を納めすぎているときや医療費控除を利用したときには確定申告を行うと税金が戻ってくる場合があります。
では最後に、ここまでのまとめについて下記で説明していきます。年金受給者の妻を扶養するつもりの方はザッと把握しておきましょう。
ここまで説明したように、年金受給者の妻を扶養するには1年間の収入に気をつけなければいけません。
また、配偶者控除を利用して税金を安くしたい場合は申請が必要になることを覚えておきましょう。
以下はここまでのまとめです。
年金受給者の妻または夫を扶養しようと考えている方は上記のまとめをザッと把握しておきましょう。