老後にもらう年金にも税金がかかります。そんな税金を安くしてくれるのが公的年金控除です。
公的年金控除は老後の年金をもらうひと(年金受給者)全員に適用されます。
これから年金をもらう方は、年金にかかる税金や公的年金控除についてしっかりチェックしておきましょう。
では最初に、年金にかかる税金について下記で説明していきます。もらった年金すべてに税金がかかるわけではないので安心してください。
65歳になると年金が毎年もらえるようになります。そして、その年金にも税金がかかる場合があります。
どんなときに税金がかかるのかというと、毎年の年金収入(雑所得)から所得控除を差し引いたときに0円を上回ると税金(所得税)がかかります。
※住民税については所得が一定以上になるとかかります。くわしくは下記で説明しています。
計算式は以下の通りです。
※年金以外に所得がない場合。
※参照:国税庁公的年金等の課税関係
※年金収入とは、1年間(1月~12月まで)の公的年金による収入(国民年金や厚生年金など)のことをいいます。iDeCoについては公的年金と同様に扱われるので年金収入に加算されて公的年金控除が適用されます。
※私的年金は含まれません(国民年金基金などは除く)。私的年金は年金以外の収入となります。
所得控除については所得控除とは?を参照。
雑所得については雑所得とは?を参照。
公的年金控除については下記で説明しています。
となります。収入が年金のみである場合、雑所得のほかに所得がないので70万円が総所得金額となります。したがって、所得税の計算式は以下のようになります。
所得控除が60万円、税率が5%だとすると、所得税は以下のようになります。
では次に、公的年金控除とは何かについて下記で説明していきます。老後の年金をもらう予定の方はチェックしておきましょう。
公的年金控除とは、年金にかかわる税金の負担を軽くしてくれるものです。公的年金控除額は下記の表のとおりです。
1年間(1月~12月まで)の年金収入が150万円なら控除額は110万円になるので、年金についての所得は40万円になります。
つまり、公的年金控除が所得を減らしてそのぶん税金も少なくするという仕組みです。
※2020年から金額等が改正されました。また、年金以外の合計所得金額が1,000万円を超えると控除額が減額されます。
※参照:国税庁公的年金等の課税関係
となります。
公的年金控除がなければ年金収入210万円がすべて雑所得になってしまいますが、公的年金控除のおかげで雑所得が減額されています(100万円になっている)。所得が減ることで税金も減ることになります。
では次に、年金収入がいくらまでなら税金が0円になるのかについて下記で説明していきます。年金すべてに税金がかかるわけではありません。
年金収入がそれほど多くなければ税金はかかりません(0円になる)。
計算例は以下のようになっています。
所得税と住民税にわけてそれぞれ説明しているので、年金をもらう予定の方はチェックしておきましょう。
65歳以上で収入が年金収入のみであり、収入が158万円以下なら所得税はかかりません。計算過程は以下のようになります。
※65歳未満の場合についてはこちらを参照。
計算過程
まず年金についての所得(雑所得)を計算します。年金収入が158万円とすると、
となります。年金についての所得(雑所得)のほかに所得がないので48万円が総所得金額となります。総所得金額がわかったので、所得税を計算します。所得控除を基礎控除48万円のみとすると、
65歳以上で年金収入が155万円以下(合計所得45万円以下)なら住民税はかかりません。住民税については合計所得が45万円を超えると住民税がかかることになります。
※住んでいる地域によっては148万円(合計所得38万円以下)または152万円(合計所得42万円以下)の場合があるので注意してください。
では次に、年金についての税金を下記で具体的に金額をあてはめてシミュレーションしていきます。
1年間の収入が年金以外に収入がないとき、税金がいくらになるかシミュレーションしてみましょう。条件は以下のとおりです。
①まず雑所得を計算
65歳以上で年金収入が200万円のとき、年金についての所得(雑所得)は、
となります。
雑所得のほかに所得がないので、これが総所得金額となります。
②次に課税所得を計算
総所得金額がわかったので、次に課税所得を計算します。課税所得は、
となります。課税所得が0円を上回ると所得税がかかることになります。所得控除を48万円とすると、課税所得は、
となります。
③次に所得税を計算
課税所得がわかったので、所得税を計算します。所得税をもとめる式は、
となります。課税所得が195万円以下のときは税率が5%なので、所得税は、
となります。ちなみに上記の場合、住民税は52,000円かかります。
下記は年金の税金が簡単にシミュレーションできる計算機です。
では次に、年金をもらっているひとで確定申告が必要になる場合について下記で説明していきます。年金をもらいながら働いている方などはチェックしておきましょう。
年金は源泉徴収されてから受けとるので、収入が年金のみである方は基本的に確定申告をする必要はありません。
※源泉徴収とは、金額に応じた税金をあらかじめ差し引き、その差し引いた税金を本人のかわりに国に納付する制度。
ただし、次のいずれかにあてはまる方は確定申告をする必要があります。
自分が確定申告が必要かどうかしっかりチェックしておきましょう。
※参照:国税庁確定申告が必要な方
※上記にあてはまらなくても、源泉徴収によって税金を納めすぎているときや医療費控除を利用したときには確定申告を行うと税金が戻ってくる場合があります。
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ここまで説明したように、老後の年金には税金がかかります。ですが、1年間の年金収入が155万円以下なら税金が0円になることを覚えておきましょう。
とくに、60歳以降も働こうと考えている方は「年金をもらいながら給料をもらう場合」に注意しましょう。給料の金額によって年金が減額されます。
※くわしくは在職老齢年金とは?給料をもらいながらだと年金が減る?で説明しています。