離婚して扶養を外れると妻と夫の税金はどうなる?3つに分けて解説

2024.12.07 更新
離婚後の所得税や住民税は高くなるのか、税金の申告などは必要なのか不安になる方もいると思います。この記事では離婚したときの税金や保険料、デメリットはあるのか等について説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶離婚して子供や配偶者を扶養しなくなったらデメリットは?
離婚して一人になり、家族を扶養しなくなると税金が増える場合が多い。保険料は社会保険に加入している場合は変わらない。社会保険料は月収によって変わるため下がることはない。
※勤務先によっては家族手当等が支給されなくなります。くわしくは下記で説明しています。


▶離婚して扶養から外れると税金はどうなる?
離婚して夫または妻の扶養から外れたとき、子供を扶養するなら税金が安くなるメリットを受けられる。
※くわしくは下記で説明しています。


▶離婚すると住民税が0円になるの?
収入がそれほど多くなければ、離婚後に住民税が0円になるときがある。
※くわしくは下記で説明しています。


▶離婚後の国民健康保険料はいくら?
専業主婦なら保険料は年間約6万~8万円(減額条件にあてはまれば約2万~3万円)。去年1年間の給与収入が150万円なら保険料は年間約12.5万円(40歳未満、加入者1人、世田谷区の場合)。加入者(子供など)がいれば保険料は増える。
※社会保険に加入するなら子供がいても保険料は増えない。くわしくは下記で説明しています。保険料をシミュレーションできるページも掲載しています。


▶ひとり親になると何かメリットあるの?

ひとり親になったときは税金が約5万~8万円安くなることが多い。


この記事の目次
離婚したら税金や保険料は増える?
税金が高くなったり安くなったり…

妻または夫と離婚すると、税金などが増える場合があります。
※離婚しても給料が下がることはありませんが、家族がいたことで受けられた控除が適用できなくなるため手取りが減ることがあります。

ただし、状況によっては今までよりも税金が安くなることもあります。
※離婚した妻(女性側)は寡婦控除の対象になるなど。

離婚した夫はどうなるのか、離婚した妻はどうなるのか、子供がいる場合はどうなるのか等についてザッと把握しておきましょう。

離婚後の税金や保険料を3つのパターンでシミュレーション
配偶者控除を利用していた場合は増える場合がある

離婚前に妻または夫を扶養していた場合、扶養されていた場合または共働きの場合でシミュレーションして下記にまとめました。


子供を扶養しなくなった場合、子供を扶養した場合についても計算しています。


離婚後の税金など気になる方はチェックしておきましょう。

①配偶者を扶養していた場合のシミュレーション


▶離婚すると税金はいくら増える?

離婚して妻または夫を扶養しなくなると、配偶者控除が使えなくなるので税金が増えてしまいます。
1年間に増える金額は約5万~11万円です。

※配偶者の給与収入が150万以下だった場合。
※妻が扶養を外れたときの税金の影響はこちら↓
妻が扶養から外れるといくらかかる?夫の税金はいくら増える?



▶子供を扶養しなくなったら税金はいくら増える?
離婚して16歳以上の子供を扶養しなくなった場合、年間約5万~17万円税金が増えてしまいます。
※子供が扶養を外れたときの税金の影響はこちらの記事←を参照。
ただし、離婚後に子供を扶養するなら「ひとり親控除」が使える場合があります。ひとり親控除によって安くなる金額は年間約5万~8万円です。
※くわしくは下記の項目で説明しています。



▶離婚すると保険料はいくら増える?


あなたが勤務先の社会保険に加入している場合は保険料は変わりません。
※社会保険料は月収によって変わるため下がることはありません。
あなたが国民健康保険に加入している場合、世帯内の加入者が減るので保険料は安くなります。

※加入者が1人減ると(40歳未満の収入0円の加入者とした場合)、保険料は年間約4万~8万円安くなります(ひと月当たり約3,300~7,000円)。
※国民健康保険料はこちらのシミュレーションで計算できます。


では次に、離婚前に配偶者に扶養されていた場合の税金について下記で説明していきます。
※勤務先によっては会社独自の福利厚生である家族手当等がもらえなくなるので、収入が減ることがあります(もともと家族手当が無い会社であれば関係ありません)。




②配偶者に扶養されていた場合のシミュレーション


▶離婚すると税金はいくら増える?

離婚して妻または夫の扶養から外れても税金は増えません。
離婚後に子供を扶養するなら「ひとり親控除」が使える場合があります。ひとり親控除によって年間約5万~8万円税金が安くなります。したがって、パートなどをして働いている方は手取りが増える場合があります。
※子供が16歳以上なら税金がさらに安くなります。くわしくは下記の項目で説明しています。



▶離婚すると保険料はいくら増える?


離婚前にあなたが配偶者の社会保険の扶養に入っていた場合、離婚すると自分で保険料を支払わなければいけません。

■保険料のパターン①
今後、勤務先の社会保険に加入する場合、年収200万(月収約17万)なら社会保険料(厚生年金と健康保険料)は1年間で約29万円(ひと月あたり約24,000円)になります。
※社会保険料は税金保険料シミュレーションで計算。
※社会保険料は子供がいても保険料は増えない(こどもを扶養に入れた場合)。


■保険料のパターン②
国民健康保険に加入する場合、去年1年間(1月~12月まで)の所得で保険料が決まります。

※専業主婦なら保険料は年間約6万~8万円くらい(減額条件にあてはまれば約2万~3万円)。去年1年間の給与収入が150万円なら保険料は年間約12.5万円になります(年齢40歳未満、加入者1人、世田谷区の場合)。子供がいれば保険料はさらに増えます。たとえば、7歳以上の子供が2人いれば、保険料は約12~16万追加されます(子供が未就学児なら約6万~8万)。ただし、去年の所得が少なくて減額条件にあてはまれば保険料は安くなります(たとえばあなたの去年の収入が100万で、未就学児の子が2人なら保険料は年間約6.8万円になります)。
※国民健康保険料はこちらのシミュレーションで計算できます。
※保険料の計算方法については国民健康保険とは?を参照。

注意ポイント
国保の保険料に加えて、さらに、国民年金が年間約20万円(月額約1.7万)かかります(去年の所得が少なければ免除することができます(要申請))。

では次に、離婚前に共働きだった場合の税金について下記で説明していきます。



③共働きの場合のシミュレーション


▶離婚すると税金はいくら増える?

夫婦どちらも勤務先の社会保険に加入して、年収約201万円を超えて稼いでいた場合、離婚しても税金は増えません。
※夫婦ともに配偶者特別控除の対象外のため。
収入が給料じゃない場合、合計所得が133万円を超える場合、離婚しても税金は増えません。



▶子供を扶養しなくなったら税金はいくら増える?
離婚して、今まで扶養していた16歳以上の子供を扶養しなくなった場合、年間約5万~17万円税金が増えてしまいます。
※子供が扶養を外れたときの税金はこちらの記事←を参照。
ただし、離婚後に子供を扶養するなら「ひとり親控除」が使える場合があります。ひとり親控除によって年間約5万~8万円税金が安くなります。
※くわしくは下記の項目で説明しています。



▶離婚すると保険料はいくら増える?


あなたが勤務先の社会保険に加入している場合は保険料は変わりません。
※社会保険料は月収によって変わるため下がることはありません。
あなたが国民健康保険に加入している場合、世帯内の加入者が減れば保険料は安くなります。

※加入者が1人減ると(40歳未満の収入0円の加入者とした場合)、保険料は年間約4万~8万円安くなります(ひと月当たり約3,300~7,000円)。
※国民健康保険料はこちらのシミュレーションで計算できます。


ひとり親になった場合は?
ひとり親になると税金が安くなる

離婚してひとり親(シングルマザーなど)になった場合、ひとり親控除が利用できる場合があります。
※下記のパターンでシミュレーションもしています。
①配偶者を扶養していた場合
②配偶者に扶養されていた場合
③共働きの場合
年収250万の妻が離婚した場合
年収400万の方が離婚して一人になった場合

ひとり親控除で安くなる?

ひとり親控除を利用すれば税金が約5万~8万円安くなります。

ただし、自分がひとり親に該当するには条件があるので、気になる方は下記の記事をチェックしておきましょう。

ひとり親控除とは?わかりやすく解説。ひとり親の条件は?

16歳以上の子供がいればさらに安くなる?

16歳以上の子供がいれば扶養控除も利用することができます。

条件に当てはまっていれば扶養控除とひとり親控除は併用(両方利用)できるので安心してください。
※参照:国税庁ひとり親控除


あなたの年収にもよりますが、扶養控除を利用すればさらに約5万円~17万円安くなります。ただし、子供が16歳未満なら扶養控除は利用できないので注意しましょう。

※くわしい条件は下記の記事で説明しています。

扶養控除とは?養う家族がいれば税金が安くなる?


寡婦になると税金が安くなる

離婚して寡婦かふになった場合、寡婦控除が利用できる場合があります。
※寡婦とは夫と離婚・死別した妻(子供無し)のこと。

寡婦控除を利用すれば税金が約4万~7万円安くなります。

ただし、自分が寡婦に該当するには条件があるので、気になる方は下記の記事をチェックしておきましょう。
寡婦控除とは?いくら税金が安くなる?

ひとり親と寡婦の違いは?

ひとり親と寡婦の違いはそれぞれ以下のとおりです。ごちゃごちゃにしないように気をつけましょう。

寡婦とは
寡婦とは、夫と離婚または死別し、扶養親族がおり、合計所得500万円以下の方。
※死別の場合は、扶養親族がいなくてもよい。



特別の寡婦とは
特別の寡婦とは、夫と離婚または死別し、生計を一にする子供をもつ、合計所得が500万円以下の方。
※2020年から「特別の寡婦」はひとり親として分類されました。



寡夫とは
寡夫とは、妻と離婚または死別し、生計を一にする子供をもつ、合計所得が500万円以下の方。
※2020年から「寡夫」はひとり親として分類されました。

くわしい条件などは下記の記事を参照。
寡婦控除とは?いくら税金が安くなる?

離婚後の住民税が安くなるときがある?

離婚してあなたが「ひとり親または寡婦かふ」になった場合、去年1年間の所得が少なければ住民税が0円になります。

くわしく説明すると、前年(1月~12月まで)の合計所得が135万以下の場合、住民税が非課税(0円)になります。

合計所得が135万以下ってなに?

合計所得135万円とは、あなたの収入が給料のみだとすると年収約204万円になります。ほかに所得がある場合は、それぞれの所得を合計した金額が合計所得金額になります。
※くわしくは合計所得金額とはを参照。


ただし、合計所得が135万円を超える場合には通常と同じように住民税が課税されます。

※たとえば、給料のみで年収250万円や300万円以上稼いでいる場合は、住民税が非課税にならないことを覚えておきましょう。ただし、子供が複数人いる場合は住民税が非課税になることがあります。

ひとり親や寡婦の住民税については下記の記事で解説。
母子家庭で住民税が0円になるには?子供2人~3人の場合

寡婦控除とは?いくら税金が安くなる?わかりやすく解説


年末調整(確定申告)のときに税金が増える?

年度の途中で離婚したとき、どのタイミングで税金が変わるのか気になると思います。

離婚後、税金がどのタイミングでいくら増えるのか下記で説明していきます。
※その年の12月31日の現況で判定されます。したがって、12月末までに離婚が成立していれば、その年は「配偶者無し」になります。

給与所得者(アルバイトや会社員)の場合と自営業の場合でわけて説明していきます。

自営業者などの方の場合

確定申告で「配偶者の有無」などを申請したときに税金が徴収または還付されます。

たとえば5月に離婚したら、翌年の確定申告時に税金の精算がおこなわれます(離婚してすぐに税金が変わるわけではありません)。



たとえばどれくらい変わる?
配偶者控除が使えなくなった場合、税金が約5万~11万円増えます。
扶養控除が使えなくなった場合、税金が約5万~17万円増えます(子供ひとりあたり)。
ひとり親控除が使えるようになった場合、税金が約5万円~8万円安くなります。

会社員やアルバイトをしている方の場合
年末調整のときに精算される

年末調整で「配偶者の有無」などを申請したときに税金が徴収または還付されます。

たとえば5月に離婚したら、12月の年末調整時に税金の精算がおこなわれます(離婚してすぐに給与から徴収される税金額が変わるわけではありません)。年末調整のときに提出する書類に記入すれば精算してくれます。
※年末調整の書き方についてはこちらの記事を参照。
※ひとり親の年末調整の書き方はこちらの記事を参照。

年末調整後の12月31日までに離婚が成立した場合は、年末調整をやり直す、もしくは確定申告で「配偶者の有無」などを申請することになります。今年1年間(1月~12月末まで)の税金について確定申告で申請する際は、翌年2月16日~3月15日のあいだに申告することになります。確定申告のやり方はこちらで説明しています。

たとえば離婚成立が2025年1月以降であれば、2024年の年末調整で配偶者控除が利用できます。
※2024年12月31日時点で16歳以上の子供がいるなら扶養控除も利用できます。

ただし、2025年の年末調整では配偶者控除は利用できません(2025年12月31日時点で配偶者がいない場合)。
たとえばどれくらい変わる?
配偶者控除が使えなくなった場合、税金が約5万~11万円増えます。
扶養控除が使えなくなった場合、税金が約5万~17万円増えます(16歳以上の子供ひとりあたり)。
ひとり親控除が使えるようになった場合、税金が約5万円~8万円安くなります。



年収250万円の妻が離婚した場合でシミュレーション

年収250万円で勤務先の社会保険に加入している妻が離婚したときの税金額などを具体的にシミュレーションしてみましょう。

たとえば離婚前にパートなどをして働いており、子供1人がいた場合として計算していきます。

離婚した妻の税金はどうなる?
【条件】
・年収250万円40歳以上の妻
・勤務先の社会保険に加入
・離婚後16歳の子供1人を扶養
・離婚前は夫が子供を扶養していた

▶保険料は増える?
上記の場合、1年間の社会保険料は変わりません。
※社会保険料は勤務先の月収(標準報酬月額)によって決まるため。

▶税金はいくら増える?減る?
16才の子供を扶養することになったので、1年間の税金は99,500円安くなります。

ひとり親控除が利用できて47,500円安くなる。
扶養控除が利用できて52,000円安くなる。

※金額は税金保険料シミュレーションで計算。
※ひとり親の年末調整の書き方はこちらの記事を参照。


年収400万円の方が離婚して一人になった場合でシミュレーション

年収400万円の会社員が離婚して一人になったときの税金額などを具体的にシミュレーションしてみましょう。

たとえば離婚前に子供1人がいた場合として計算していきます。

離婚したときの税金はどうなる?
【条件】
・年収400万円40歳以上の会社員
・離婚前の配偶者の年収は150万円
・離婚前は16歳の子供1人を扶養していた
・離婚後、ひとりになった

▶保険料は増える?
上記の場合、1年間の社会保険料は変わりません。
※社会保険料は標準報酬月額によって決まるため。
※国民健康保険の場合、加入者が減るので保険料は安くなります。


▶税金はいくら増える?減る?
子供や配偶者を扶養しなくなったので、1年間の税金は10.4万円増えます。

配偶者控除が利用できなくなって5.2万円増加。
扶養控除が利用できなくなって5.2万円増加。

※金額は税金保険料シミュレーションで計算。
家族手当などをもらっていた場合は、それも支給されなくなります。

離婚後に「ひとり」になったときや「ひとり親」になったときでどれくらい税金が変わるかザッと把握しておきましょう。配偶者を扶養していた場合、扶養されていた場合で税金額などは変わります。