社会保険の扶養とは?保険料が0円になる?収入などの条件は?

2024.03.20 更新

「社会保険の扶養に入ると保険料が安くなる」といわれても何を言っているのか意味がわからない方もいると思います。この記事では社会保険(健康保険等)の扶養に入る条件などについて説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶社会保険の扶養に入ると安くなるの?扶養がいると安い?
社会保険(健康保険等)の扶養に入ると家族が支払う保険料は安くなる(0円になる)。配偶者の場合は国民年金の支払いも0円になる。家族を扶養しても本人の社会保険料は安くならない。
※くわしくは下記で説明しています。


▶社会保険の扶養を外れてもまた戻れる?
収入が多くなり、社会保険の扶養(健康保険等)を外れたとしても、今後ふたたび扶養に入れる条件を満たせば扶養に戻れる。
※くわしくは下記で説明しています。


▶社会保険の扶養になるには条件がある?
扶養に入るには収入130万円未満などの条件がある。また、130万以上になる見込みがあれば扶養から外れる(3ヶ月連続で108,333円を超えた場合など)。
※条件についてくわしくは下記で説明しています。
※130万の見込みについては下記で説明しています。バイトで108,333円超えたらどうなるか等を説明しています。


この記事の目次
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社会保険の扶養ってなに?そもそも社会保険とは?

社会保険の扶養とは、勤務先の社会保険に加入しているひとが「自分の親族」を扶養にいれると「親族の保険料が0円になる」制度です。
※社会保険に加入している人の社会保険料が安くなるわけではありません。

社会保険とは、会社などに雇われている方が加入する健康保険と厚生年金保険のことをいいます。
※公務員の場合は健康保険ではなく共済組合。
※ここで説明する社会保険は広い意味での社会保険とは異なります。


社会保険の扶養に入った家族は保険料が0円になるメリットを受けられるのが特徴です。
※社会保険の扶養に入った影響は下記で説明。
※扶養に入るための条件も下記で解説しているのでチェックしておきましょう。

子供や両親以外の親族も扶養対象になる?

本人の家族は対象になる
下記にあてはまる被保険者(本人)の親族は社会保険の扶養対象になります。
※たとえばサラリーマンの夫が社会保険に加入しており、その夫の「妻」や「子供」「父母」などは扶養の対象になります。

  • 配偶者
  • 子供
  • 兄弟姉妹
  • 父母
  • 祖父母
  • 曽祖父母
▶上記の親族以外も扶養の対象になるが同一世帯でなければいけない?

上記の親族以外にも、3親等までの親族は扶養の対象になります。しかし、上記以外の親族を扶養する場合は同一世帯にいなければいけないので注意しましょう。たとえば、配偶者の父母兄弟姉妹、被保険者(本人)の子供の配偶者なども扶養にいれることができますが、同一世帯にいる必要があります。
※参照:協会けんぽ被扶養者とは?
※参照:日本年金機構従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き


社会保険の扶養に入ったときの保険料は0円?
社会保険の扶養に入る人と扶養するひと

社会保険に加入している人(被保険者)が親族におり、その親族の社会保険の扶養に入ると親族の保険料が安くなります。

具体的には「扶養に入ったひと」が支払う保険料は0円になります。
※社会保険に加入しているひと(被保険者)の保険料は安くなりません。扶養がいると安くなるわけではありません。


たとえば親が加入している社会保険に扶養として息子が入ると、息子が支払う保険料は0円になるということです。
※保険料が0円になっても保険証等が配布されるので安心してください(病院代が3割負担になる等の給付を受けることができます)。

扶養に入ったひとが配偶者(妻など)の場合

扶養に入った配偶者が支払う健康保険料および国民年金保険料は0円になります。ただし、扶養を外れれば自分で保険料を支払うことになります。
※健康保険については健康保険とは?を参照。
※国民年金については国民年金とは?を参照。

扶養に入ったひとが親族(子供など)の場合

扶養に入った親族が支払う健康保険料は0円になります。ただし、扶養を外れれば自分で保険料を支払うことになります。

※20歳~59歳なら国民年金の保険料を支払う必要があります。
※健康保険については健康保険とは?を参照。

親を扶養する場合親を社会保険の扶養に入れられる?を参照。


社会保険の扶養に入る条件は130万?
130万円以上になる見込みがあれば扶養の対象から外れる

社会保険の扶養に入るための条件は以下のとおりです。


一番のポイントは、1年間の収入が130万円未満でなければいけないことです。
※年間収入が130万円以上になる見込みがあれば扶養の対象から外れます。くわしくは下記で説明しています。


扶養に入ろうとしている人または扶養から外れるか不安な人はチェックしておきましょう。

社会保険の扶養に入る条件は以下のとおり

  • 社会保険に加入している人の親族であること

  • 75歳未満であること
    ※75歳以上になると自動的に後期高齢者医療制度に移行するため。

  • アルバイトなどで勤務先の社会保険に加入していないこと
    ※加入する条件については社会保険に加入する条件は?を参照。

  • 1年間の収入が130万円未満になる見込みであること(つまり、給与収入なら月収108,333円以下であること)。見込みについてくわしくは下記で説明。
    60歳以上または障害厚生年金がもらえる程度の障害をもつ場合は年間収入180万円未満
    ※収入には勤務先までの定期券代などの交通費等も含みます。
    ※1年間の収入とは見込み収入額のことをいいます(くわしくは下記で説明)。
    失業手当の受給者は日額3,611円以下(60歳以上の場合は日額4,999円以下)であること。
    ※一時的な理由で130万以上になっても扶養でいられる場合があります。くわしくはこちらのお知らせを参照。
  • 被保険者の収入によって生活をしている(生計を維持している)こと
    ※別居の場合は定期的な送金(仕送り)により生活していること(世帯分離をした場合も別居扱いになる場合があります)。
    ※被保険者の収入でなく、自分の収入で生計を立てている場合は扶養の対象になりません。

  • 収入が同居している扶養者(扶養している方)の収入の半分未満であること
    別居の場合は収入が扶養者からの仕送り額未満であること
被扶養者(扶養されている方)の収入には「雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金」も含まれます。
※参照:日本年金機構従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
社会保険の扶養チェックポイント

社会保険の扶養の判定をフローチャートにしてわかりやすく説明していきます。
※くわしい内容を知りたい場合は上記の条件をチェックしましょう。

社会保険の扶養加入条件フローチャート
社会保険の扶養加入条件フローチャート


130万円になる見込みなら扶養から外れる?
数か月連続でたくさん稼ぐと扶養を外れる場合がある

社会保険の扶養の条件は「1年間の収入が130万未満」となっていますが、130万以上になると予想されるときには、その時点で扶養から外れます。
※60歳以上または障害厚生年金がもらえる程度の障害をもつ場合は180万円。
※判定は加入している保険組合が行うことになります。
※ほかにも、自分が勤務先の社会保険に加入した場合は扶養から外れます。くわしくは上記の条件を参照。


たとえばアルバイトなどをしており、直近3ヶ月の平均月収が108,333円を超えるなら、年間収入が130万円以上になる見込みがあると判断され、社会保険の扶養から外れることになります。
※参照:厚生労働省被扶養者の収入の確認における留意点について
※たとえば60歳以上で直近3ヶ月の年金や給料などの収入が月額15万以上になると、年間収入が180万円以上になる見込みがあると判断されます。


ただし、保険組合によっては直近3ヶ月の平均月収が108,333円を超えても社会保険の扶養から外れない場合もあります。くわしくは加入している保険組合にてご確認ください。

※たとえば「時期的に収入が多かっただけ」等の様々な事情を考慮して、年間収入130万円未満になると判断されれば、社会保険の扶養から外れないこともあります。

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バイト先の社会保険に入りたくない。デメリットは?

※年収130万の壁を少し超えても、一時的な理由であれば社会保険の扶養でいられるようにする施策が始まりました。くわしくはこちらのお知らせを参照。


1年間の収入にはアルバイト収入のほかにも含まれる?

社会保険の扶養に入る条件のひとつに「1年間の見込み収入が130万円未満」とあります。
※60歳以上または障害厚生年金がもらえる程度の障害をもつ場合は180万未満。

この収入には、アルバイトなどの給与収入以外にも下記のような収入が含まれます。

注意しなければいけないのは、障害年金などの「非課税所得」も含まれることです。扶養に入る親族の収入をしっかり把握しておきましょう。

アルバイトのほかにも収入に含まれる?

社会保険の被扶養者(扶養されるひと)の収入には以下のようなものが含まれます。

など。
※加入している保険組合によって上記と異なる場合があります(一時所得や雑所得が含まれない、労災保険も含まれるなど)。くわしくは加入している保険組合で確認しておきましょう。
※社会保険の扶養に入る条件については上記で解説しています。


では次に、社会保険の扶養から外れるときについて下記で説明していきます。

扶養から外れるときは?外れたら戻れないの?

社会保険の扶養を外されるときは以下のようなときです。
※扶養から外れることがわかったときは加入している保険組合に届出を提出しなければいけません。
※条件を満たしていないことが判明したタイミングなどで扶養から外れることのお知らせが届く場合があります。



以下のどれかにあてはまるひとは、社会保険の扶養の条件を満たしていないので扶養から外れることになります。

こんなときは扶養から外れます
  • 被扶養者(扶養されるひと)が勤務先の社会保険に加入したとき
  • 被扶養者が75歳になって後期高齢者医療制度に加入したとき
  • 被扶養者の年間収入が130万円以上になる見込みがあるとき
    ※給与収入なら月収108,333円を超えたとき(くわしくは上記で説明しています)。
    ※60歳以上の場合は年間180万円以上になる見込みがあるとき(月の収入が15万以上になったとき。くわしくは上記で説明)
    ※おすすめ記事:親を社会保険の扶養に入れる5つの条件は?
  • 別居している親族を扶養しているのに仕送りしていないとき
    ※保険組合によっては毎月仕送りをしていないことが判明したときに扶養から外れる場合があります。
  • 被扶養者(扶養されるひと)の収入が仕送り額を超えたとき

など。
※加入している保険組合によっては他にも条件がある場合があります。自分が加入している保険組合HPで確認しておきましょう。

扶養から外れたら戻れないの?
収入が増え、扶養から外れたとしても「扶養でいられる条件」を満たせば、また扶養に戻ることはできます。

社会保険の扶養については「扶養に入ろうとする時点以降の年間の見込み収入額」で判定されます。したがって、今後1年間で年収130万円未満であると見込める場合は条件を満たすことになります。

上記の条件を満たしていれば社会保険の扶養の対象となります。
※扶養の判定は加入している保険組合が行うことになります。

では次に、社会保険の扶養から外れるのに手続きをしていない場合について下記で説明していきます。

扶養から外れているのに手続きをしていない場合

社会保険の扶養を外れていることがわかったときは、扶養を外れる届出を提出しなければいけません。
※届出書は保険組合に請求するまたはダウンロードして手に入れることも出来ます。

しかし、扶養から外れることに気づかなくてそのままにしている方も多くいると思います。
※発覚したときまたはお知らせが保険組合から送られてきたら届出を提出しましょう。


社会保険の扶養から外れていることがあとになって発覚した場合、その事実が発生した日までさかのぼって、その期間の医療費(保険を使って診療したときのお金など)を返還することになります。

配偶者の場合は年金に注意?
配偶者(夫または妻)の場合、社会保険の扶養から外れている期間の国民年金の保険料が未納になってしまいます(後日、国民年金の保険料を納付しましょう)。

ただし、2年以上未納のままにしておくと、あとから保険料を納めることが出来なくなってしまうので注意しましょう。

※年金を未納にしておくとデメリットがあります。

※参照:日本年金機構第3号被保険者(専業主婦・主夫)からの手続きが遅れた方へ


扶養の有り無しで保険料をシミュレーション(パート主婦の場合)

社会保険の扶養になった場合と扶養に入らなかった場合で保険料がどれくらいになるかシミュレーションしてみましょう。

パート主婦の場合で1年間の保険料を比較してみました。

社会保険の扶養に入ろうとしている方はチェックしておきましょう。

社会保険の扶養に入った場合(パート主婦の場合)

パート主婦の収入が1年間で129万円の場合、1年間の税金、保険料、手取りは以下のようになります。扶養に入っているので健康保険料と国民年金保険料が0円になります。
※130万円未満でも条件を満たせば勤務先の社会保険に加入することになります。条件については社会保険に加入する条件は?を参照。



シミュレーション結果

  • 所得税:約13,000円
  • 住民税:約33,000円
  • 健康保険料:0円
  • 年金保険料:0円
  • 雇用保険料:約8,000円
    ※学生の場合は0円。
  • 手取り:約1,237,000円
    ※計算はこちらのシミュレーションで行っています。
    ※40歳未満、扶養親族0人として計算。
社会保険の扶養に入っていない場合(パート主婦の場合)
社会保険の扶養に入っていないパート主婦の収入が1年間で129万円の場合、1年間の税金、保険料、手取りは以下のようになります。扶養に入っていないので国民健康保険料と国民年金を支払うことになります。
※勤務先の社会保険に加入した場合は社会保険料を支払うことになります。



シミュレーション結果

  • 所得税:0円
  • 住民税:約6,000円
  • 国民健康保険料:約90,000円
    ※世田谷区、加入者1人として計算。
  • 年金保険料:約200,000円
    ※未成年の場合は0円。
  • 雇用保険料:約8,000円
  • 手取り:約990,000円
    ※計算はこちらのシミュレーションで行っています。
    ※40歳未満、扶養親族0人として計算。

こんなページもみられています
パート主婦は年収いくらがお得なの?103~150万円


共働きの場合、どっちの扶養に入るの?

共働きで、夫婦ともに勤務先の社会保険に加入している場合、原則年収の多い側が扶養することになります。
※今後1年間の収入を見込んだ額。
※年収の多い側が主な生計維持者として判定されるため。


ただし、夫婦それぞれの年収の差が1割以内の場合、どちらが扶養するか選択することが出来ます(要届出)。
※参照:厚生労働省夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について

片方が国民健康保険の場合は?

夫婦のどちらかが国民健康保険に加入している場合、年収の多い側が主な生計維持者として判定されます。
※国民健康保険に加入している方の年収は、直近の年間所得で見込んだ額となります。

したがって、国民健康保険に加入している側の年収が多い場合、子供を社会保険の扶養に入れることはできません。

※参照:日本年金機構従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き

二人とも社会保険ならどっちが扶養しても変わらない?

夫婦ともに勤務先の社会保険に加入している場合、どちらが扶養したとしても被扶養者(扶養されるひと)の保険料が0円になるので、「どっちが扶養したほうがお得になる」等のことはないので安心してください。

※勤務先に会社独自の福利厚生扶養手当や家族手当)などがある場合は、そちらの勤務先のひとが扶養しましょう。


扶養に入るための手続きは?

社会保険の扶養に入る場合は被保険者(社会保険に加入している方)が勤務先に届け出る必要があります。

勤務先に伝えれば事業主が「被扶養者(異動)届」を提出することになっています。

その際に収入を確認するための書類等を添付する必要があるので、勤務先から指定された必要な書類を準備しておきましょう。

下記は添付書類の一例です。

たとえばこんな添付書類が必要になる

  • 続柄を証明できる書類
    ※戸籍謄(抄)本または世帯全員が確認できる住民票の写し

  • 収入が証明できる書類
    ※(非)課税証明書、給与証明書、確定申告書の写し、離職票の写しなど。

  • 仕送りしている場合は、預金通帳の写しなど。
    ※別居している場合。
夫婦どっちの扶養になるかについては上記で説明しています。

※くわしくは加入している健康保険・共済組合にてご確認ください。
※参照:全国健康保険協会申請に必要なもの
※参照:日本年金機構従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き

では次に、税金の扶養との違いについて下記で説明していきます。一緒くたにしないように気をつけましょう。

103万円の壁などの「税金の扶養」との違いは?
扶養の意味が違う

社会保険の扶養のほかにも税金を安くしてくれる扶養があります。それは「扶養控除」という制度です。

かんたんに説明すると、16歳以上の親族を扶養している方は税金が約5万~17万安くなります。
※あなたの年収を250万~850万円とした場合。

ただし、扶養親族の対象になるには親族の1年間の合計所得金額が48万円以下(つまり、給与収入なら103万円)である必要があります。

以上のように扶養にも違いがあるので、それぞれの違いを把握しておくことをオススメします。

くわしくは下記の記事で説明しています
社会保険の扶養と税金を安くしてくれる扶養の違いは?

とくに、パートをしている方やアルバイトをしている学生などは上記の記事で「社会保険の扶養」と「税金を安くしてくれる扶養」について知っておきましょう。