勤労学生控除とは?103~130万の学生向けにわかりやすく解説

2024.03.22 更新
アルバイトをしている学生などは勤労学生控除の対象になりますが、いくつか条件があります。この記事では勤労学生控除について簡単に説明していきます。

この記事のポイント(要点まとめ)


▶勤労学生に該当する人は103万以下のひと?
収入が給料のみなら130万までは勤労学生の対象(かつ、給与所得以外の所得が10万円以下)。ただし、扶養親族になるには給与収入が103万以下である必要があるので注意。
※くわしくは下記で説明しています。
※103万のルールについては下記で説明しています。


▶勤労学生になるときの注意点は?
勤労学生控除を利用するひとは年収130万以下なら所得税が0円になるが、1年間の収入が103万円を超えたら親の税金が増えるので注意する。
※勤労学生控除のシミュレーションは下記で説明しています。
※親の税金がいくら増えるかは下記で説明しています。


▶アルバイトをしてる学生はみんな勤労学生?
1年間の収入が130万を超えたら勤労学生じゃなくなり、社会保険の扶養の対象じゃなくなる。
※いわゆる130万の壁。くわしくは下記で説明しています。


この記事の目次
勤労学生控除とは?
はたらく学生は勤労学生になれるが条件がある

勤労学生控除とは、所得控除のうちのひとつであり、アルバイトなどをしている働く学生の税金の負担を軽くしてくれるものです。
※勤労学生になるには下記の条件があります。
※勤労学生控除の申請方法は下記の項目で説明しています。


アルバイトをしている学生は「年収103万」や「親の扶養」などについてチェックしておきましょう。


では次に、勤労学生控除の金額について下記で説明していきます。控除額について把握しておきましょう。

控除される金額は?

勤労学生控除による控除額は270,000円です。
住民税については26万円となります。

税金が27万安くなるわけではない?

勤労学生控除を利用すると税金が27万円安くなるわけではありません。所得から27万円が控除されて所得金額が減るので、あなたにかかる税金が安くなるというしくみです。

くわしい計算過程はページ下記で説明しているので気になる方はチェックしておきましょう。具体的に金額をあてはめてシミュレーションしています。

では次に、勤労学生になる条件について下記で説明していきます。勤労学生とは何か把握しておきましょう。

控除の条件がある?勤労学生になるには?
合計所得が75万円以下でなければ勤労学生控除は利用できない

勤労学生控除を受けるには「勤労学生」にあてはまらなければなりません。


勤労学生になるには、次の3つの条件のすべてにあてはまる必要があります。


自分が3つの条件すべてにあてはまるなら勤労学生控除が利用できるようになります。
※その年の12月31日時点で以下の3つの条件すべてにあてはまること。
※勤労学生控除の申請方法は下記の項目で説明しています。


勤労学生とは?3つの条件

  1. 自身の勤労(アルバイトなど)に基づく所得があること
    ※たとえば給与所得があてはまります。

  2. 1年間(1月~12月まで)の合計所得金額75万円以下であり、給与所得以外の所得が10万円以下であること
    ※合計所得75万円は給料のみで130万円のこと。合計所得75万円については下記で説明しています。

  3. 特定の学校の学生、生徒であること
    ※特定の学校とは、次のいずれかの学校です。

    • 学校教育法第1条に規定する学校(小中高・大学・専門学校など)
    • 国、地方公共団体、学校法人等により設置された専修学校又は各種学校のうち一定の課程を履修させるもの
    • 職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるもの

※出典:国税庁勤労学生控除

合計所得金額75万円以下とは?

たとえば収入がアルバイトの給料のみであり、1年間(1月~12月まで)の給料が130万円のとき、給与所得は75万円となります。そのほかに所得は無いので、75万円が合計所得金額となります。

130万円1年間の給料55万円給与所得控除 = 75万円給与所得(合計所得金額)
※給与所得控除については給与所得控除とはを参照。

上記の場合、1年間の合計所得が75万円以下であり、給与所得以外の所得が10万円以下なのであなたは勤労学生控除を利用することができます。

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学生で収入100~150万円のときの税金や親の負担を計算

では次に、130万円を超えたらどうなるのかについて下記で説明していきます。
※130万を超える学生は勤労学生じゃなくなります。くわしくは下記で説明していきます。

130万円を超えたら勤労学生じゃなくなる?

1年間(1月~12月まで)の給料が130万円を超えたら勤労学生の対象外となります。したがって、勤労学生控除を利用することができないので、税金が安くなるメリットを受けられません。
※勤労学生の条件については上記を参照。


また、130万円を超えれば社会保険の扶養に入れなくなります。
※親に扶養されている場合。

したがって、自分で社会保険に加入して保険料を毎月支払うことになります。
※保険料は安い金額ではないので、130万円を超えて稼ぐつもりの方は心の準備をしておきましょう。

保険料はいくら払うの?

年収130万円の場合、1年間の社会保険料は約19万円(月額約15,000円)になります。
※130万円を超えて稼ぐつもりなら、手取りが減らないように150万円以上稼ぐことをオススメします。くわしくは下記の記事を参照。
子供が103万超えたら親はいくら払う?学生は年収いくらがおすすめ?

さらに気をつけるポイントは103万円を超えたときの親の税金です。くわしくは下記で説明していきます。

103万円を超えたら親の扶養から外れる?親の税金はいくら増える?

あなたの収入が103万円を超えてしまうとあなたの親の税金が約5万円~17万円高くなってしまいます。


なぜかというと、親の扶養親族でいられる条件が1年間の給与収入103万円以下でなければいけないからです。
※いわゆる103万円の壁といわれているルールです。

子どもの1年間(1月~12月まで)の給与収入が103万を超えて扶養親族の対象から外れると、扶養控除が利用できなくなるので親の税金が増えてしまいます。
※親の税金がいくら増えるか下記表で説明しています。

103万円を超えると親の税金はいくら上がる?



16歳~18歳の学生が扶養から外れた場合
 

親族の年収 親族が支払う税金
年収250~400万円のとき 親族が支払う税金は約52,000円高くなります。
※所得税は19,000円、住民税は33,000円

※所得税と住民税は税金保険料シミュレーションで計算
年収500~600万円のとき 親族が支払う税金は約71,000円高くなります。
※所得税は38,000円、住民税は33,000円

※所得税と住民税は税金保険料シミュレーションで計算
年収700~850万円のとき 親族が支払う税金は約110,000円高くなります。
※所得税は76,000円、住民税は33,000円

※所得税と住民税は税金保険料シミュレーションで計算

※扶養控除の対象となる家族1人あたりの年間額。
※上記の表は親族(40歳以下・社会保険加入のサラリーマン)が扶養控除を利用できなくなった場合のシミュレーション。


19歳以上22歳以下の学生が扶養から外れた場合

 

親族の年収 親族が支払う税金
年収250~430万円のとき 親族が支払う税金は約77,000円高くなります。
※所得税は31,500円、住民税は45,000円

※所得税と住民税は税金保険料シミュレーションで計算
年収540~640万円のとき 親族が支払う税金は約110,000円高くなります。
※所得税は63,000円、住民税は45,000円

※所得税と住民税は税金保険料シミュレーションで計算
年収740~850万円のとき 親族が支払う税金は約170,000円高くなります。
※所得税は126,000円、住民税は45,000円

※所得税と住民税は税金保険料シミュレーションで計算

※扶養控除の対象となる家族1人あたりの年間額。
※上記の表は親族(40歳以下・社会保険加入のサラリーマン)が扶養控除を利用できなくなった場合のシミュレーション。

勤労学生控除を受けてもダメ?
たとえばあなたの収入が120万ならば勤労学生控除を利用して税金が0円になりますが、あなたの収入は103万(合計所得48万)を超えているので親の税金は増えてしまいます。ややこしいですが、ルールなので注意しましょう。

※子供の扶養については下記の記事で説明しています。
フリーターや16才以上の学生が扶養から外れるといくらかかる?

では次に、勤労学生控除の申請のやり方について下記で説明していきます。申請といっても難しいことは何もありません。

勤労学生控除の申請のやり方は?
勤労学生控除は申請が必要

勤労学生控除を受けるには年末調整または確定申告にて控除の申請をしなければなりません。
※年末ごろになると勤務先から年末調整の書類が配布されるので提出しましょう。

以下のページで年末調整の書き方と勤労学生控除の申請方法を説明しています。利用する方はぜひ参考にしてみてください。

もしも年末調整で申請するのを忘れてしまっても、確定申告で申請すれば適用されるので安心してください。
※給与収入と給与所得を間違えないように記入しましょう。くわしい申請の書き方は下記の記事で説明しています。

▶年末調整で申請をする場合
勤労学生控除の申請については、勤労学生控除の申請(年末調整の記入例)を参照。
確定申告で申請する場合は?

確定申告で申請するときは申告書作成の際に「勤労学生控除の項目」に記入すれば申請することができます。確定申告のやりかたは下記の記事で説明しています。
※今はネットでかんたんに確定申告書を作成することができます。作成した申告書を税務署に郵送すると申告完了となります。


確定申告のながれ
STEP➊源泉徴収票など必要なものを用意する
STEP➋確定申告書を作成する
STEP➌確定申告書を郵送する(税金を支払うまたは払い戻される)

※ネットで作成する場合は勤労学生控除の入力画面で選択することになります。

勤務先が1ヶ所で給料をもらっている方(サラリーマンやアルバイトなど)の確定申告のやり方
※年末調整をしていない場合はこちらで説明しています。
※アルバイト以外の場合はこちらでまとめています。

もしも確定申告をするのが不安な場合は、ためしにテキトーに金額を入力して申告書のつくりかたを練習してみてもいいかもしれません。
※作成した申告書を税務署に郵送しなければ問題ないので、上記のページを参考に申告書をためしに作成してみましょう。


では次に、勤労学生控除を使ったときの税金シミュレーションについて下記で説明していきます。130万まで所得税が0円になります。

1年間に103万以上の学生向け?勤労学生控除込みで税金をシミュレーション
勤労学生控除で130万円までは所得税が0円になる

勤労学生控除を利用することで給与収入130万まで所得税が0円となります。
※130万円を超えたら勤労学生控除は利用できなくなります。くわしくは上記の条件を参照。


何を言っているのかよくわからない…という方のために、下記でわかりやすく所得税を計算していきます。

130万までは所得税が課税されない?
たとえば収入がアルバイトの給料のみであり、1年間(1月~12月まで)の給料が130万円のとき、給与所得は75万円となります。

130万円1年間の給料55万円給与所得控除 = 75万円給与所得(合計所得金額)
※給与所得控除についてはこちらを参照。
※今年1月~12月の給与が対象です。たとえばその月の勤務分の給与が翌月10日に支給されるなら、前年12月~今年11月に勤務したぶんの給与が1年間の給与収入となります。

そのほかに所得は無いので、75万円が合計所得金額となります。ここで勤労学生控除を適用すると、課税所得は、

75万円合計所得金額27万円勤労学生控除48万円基礎控除 = 0円課税所得
基礎控除とはすべての方が一律に適用される控除です。
課税所得とは税金がかけられる所得のこと。

となります。課税所得が0円なので、課税所得に税率をかけても所得税は0円になります。

0円課税所得 × 所得税率 = 0円所得税

以上のように、1年間のアルバイト収入が130万以下なら勤労学生控除によって所得税が0円になるんです。
※ただし、103万を超えれば親の税金が増えてしまいます。上記で解説しています。

住民税はかかる?
住民税については年収100万円(合計所得45万円)を超えるとかかることになります(地域によっては42万円や38万円の場合があります)。ただし未成年の場合は給与収入約204万円まで住民税は0円となります。くわしくは子供がアルバイトしてても非課税世帯になれる?を参照。
勤労学生控除のまとめ


▶勤労学生になる条件はなに?
勤労学生になるには1年間の合計所得が75万円以下(給料のみなら130万円以下)でなければいけない
※くわしくは上記で説明しています。


▶103万円を超えたけど何かデメリットある?
1年間の給与収入が103万円を超えてしまうと親の税金が約5万円~17万円高くなってしまうので気をつけなければいけない
※くわしくは上記で説明しています。


▶130万を超えるとどんなことがある?
130万円を超えてしまうと勤労学生の対象から外れる。また、社会保険の扶養から外れるので保険料を自分で支払うことになる。
※くわしくは上記で説明しています。

ここまで説明したように、親に扶養されており、103万円か130万円にしようか悩んでいるなら、103万円以下にしておくことをオススメします。
※103万円以下なら控除の手続きをしなくていいですし、親の扶養からも外れません。やむをえず103万円を超えてしまったときには勤労学生控除を利用しましょう。